今日はたぶん、今年で一番落ち込んでいます。
ホンダが 2021 年シーズン限りでの F1 参戦終了を発表しました。
2008 年に第三期 F1 活動を終了し、2015 年にマクラーレンとのジョイントで第四期の参戦を再開して、今年で 6 年。最悪の三年間を経て 2018 年にトロロッソ(現アルファタウリ)と提携し、昨年からはレッドブルとのタッグでようやく勝てる体制ができてきて、まさにこれからというところで。悪夢の三年間もずっと信じ続け、今はレッドブルおよびマックス・フェルスタッペンとのチャンピオン獲得を夢に見ていた私としては、本当にショックです。
撤退の理由は「2050 年のカーボンニュートラル実現に向けたリソースの集中」とのことですが、現実的には COVID-19 に伴う世界経済の停滞によるところが大きいはず。自動車メーカーとしては環境負荷低減は宿命のひとつであり、環境を最優先に考えるなら 2015 年の時点で F1 活動なんて考えずにそっち方面に投資を集中していたに違いありません。第三期末期のマシンに掲げていた「myearthdream」といい、ホンダの環境を言い訳に使う姿勢はハッキリ言って嫌い。まだ経営状態の悪化によって継続が困難になったと言ってくれた方が諦めもつくというものです。
第二期はバブル経済の崩壊、第三期はリーマンショックに端を発する世界経済危機、そして今回は COVID-19 に伴う経済危機。ホンダの F1 活動は常に経済状況と背中合わせというか、会社の業績が悪くない時期にだけ許される文化事業のようなものということなのでしょう。インディ等のレース活動は継続できても F1 はかかるコストが違いすぎるから、こういう状況になると止めざるを得ない。「レースはホンダの DNA」だとか、個々の社員は思っているかもしれませんが会社としてそんなことを言ってほしくないとさえ思います。そういえば第一期撤退も表向きには市販車用低公害型エンジンの開発を理由にしていたので、こういうときに環境を理由にするのがホンダという会社なのかもしれません。
一方で F1 の置かれた状況を考えると、COVID-19 の影響により今季~来季までの PU/マシンの開発が大幅に制限され、また 2022 年以降の新レギュレーションでもパワーユニット関連の開発は制限される一方。自動車メーカーとして技術開発を目的に F1 に参戦する意義が薄いことは、今回の撤退発表で将来のパワーユニット・エネルギー領域の開発へのリソース集中を理由にしている(つまり現代 F1 の高効率エンジンやエネルギー回生技術はそれに繋がらないと言っている)ことからも明らか。現代最強のメルセデスでさえワークス撤退の噂が絶えないこともそれを裏付けていると言えます。加えて F1 によるプロモーション効果がほぼ欧州に限定され、さらに世界経済の縮小とくればホンダが F1 から撤退すること自体は経済的には理解できます。だけど、それ以上にやりきれない思いが強い。今のレッドブル・ホンダのポジションを考えると、2008 年の第三期撤退よりも悔しさが募ります。
今シーズンのメルセデスはおそらくパワーユニット時代に入って以来最も強い状態にあると言って良いでしょう。対するレッドブルは今季のマシン開発に失敗し、セットアップの幅が狭くフェルスタッペン以外には扱いきれないクルマになっているようです。来季も今年のマシンをベースに戦わなくてはならない以上、2021 年にレッドブル・ホンダがチャンピオンを獲得できる可能性はさして高くないのが現実です。止めるならせめて勝ち逃げしてほしいところですが、おそらくドライバーズもコンストラクターズも 2 位が精いっぱいじゃないでしょうか。
また F2 ではホンダとレッドブル共同の育成ドライバーである角田裕毅がスーパーライセンス獲得に近いポジションにいて、このまま行けば来季アルファタウリのレースドライバーに抜擢される可能性もあります。ホンダ的にはその先のキャリアを用意してやれないことになりますが、せめてアルファタウリで結果を出し、ホンダ撤退後も実力で F1 に定着していってほしいところ。
ホンダを失うことになるレッドブルとアルファタウリはどうするのでしょうか。少なくとも現行の PU レギュレーション化ではサプライヤーの新規参入は期待できず、現行のメルセデス/フェラーリ/ルノーの三社から選ばざるを得ません。現在の供給数から考えてメルセデスとフェラーリはあり得ず、そうなると酷い喧嘩別れをしたルノーとヨリを戻す以外の選択肢はないのかもしれません。しかしルノーはワークスとカスタマーの扱いのさが大きく、カスタマー体制のままでレッドブルがチャンピオンを狙えるとは考えにくい。そうするとフェルスタッペンがチームを離脱する可能性が高くなり、求心力を失ったチームは弱体化→レッドブル本社自体が F1 チーム運営の意義を見失って撤退またはチーム売却、まであり得るのではないでしょうか。コンコルド協定では 2025 年までの参戦を確約済みのようですが、撤退に関する例外条項はあるようですし。そう考えると、今の F1 はホンダが撤退確定、それ以外にもメルセデス/レッドブル/アルファタウリ/ルノー/ハースあたりに撤退もしくはチーム売却の可能性がある、非常に危うい状態にあると言えます。
とりあえず私は、娘の運動会や海外出張と重ならない限り来年の鈴鹿には絶対行こうと心に決めました。タイミング的に海外出張とかぶる可能性が高いですが、場合によっては帰路は関空に降りて鈴鹿に直行してもいいし。第四期ホンダの鈴鹿ラストランをこの目に焼き付けてこようと思います。
はぁ、悲しい。今までは F1 からホンダがいなくなっても日本人ドライバーがいなくてもカテゴリー自体のファンだと思って見てきましたが、2022 年以降もメルセデス+ハミルトンの時代が続き角田も残留できないようなことがあれば、私はもう F1 を見ないかもしれない。それくらいに落ち込んでいます。
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