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F1 バーレーン GP 2021

F1バーレーンGP決勝:チェッカーまで手に汗握る攻防をハミルトン制す。角田裕毅は王者を次々攻略し殊勲の9位入賞
F1開幕戦バーレーンGPの決勝レースが行なわれた。マックス・フェルスタッペンとの最終ラップまで続く攻防を制したルイス・ハミルトンが優勝、角田裕毅はデビューレースを9位で終えた。

2021 年の F1 がついに開幕しました。今年はホンダ F1 第四期ラストイヤー、7 年ぶりの日本人 F1 ドライバー角田裕毅のデビュー、ミハエル・シューマッハーの息子ミックのデビュー、アロンソの F1 復帰、アストンマーチン(旧レーシングポイント)やアルピーヌ(旧ルノー)の F1 参戦など非常に注目度の高いシーズンでずっと楽しみにしていました。が…、

くーやーしーいーーー!!!!!

レース結果だけ見ると非常に悔しい開幕戦でした。個人的には、全てがうまく噛み合えばホンダ勢だけで 1-3-5-7 位くらいはあり得ると予想していました。が、最終的には 2-5-9-DNF。去年ならばこれくらいがまあ普通だったのが今年は満足できないというのがレッドブル/アルファタウリ/ホンダの戦闘力が向上した結果なわけですが、内容的には実際に 1-3-5-7 位くらい取っていてもおかしくないレースだったと思います。
というわけでレッドブル/アルファタウリの 4 人のドライバーについて順にコメントしていきます。

■マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

FP1~3 の全てでトップタイムをマーク、予選 Q3 もハミルトンに 0.4 秒という大差をつけて PP を獲得したマックス。決勝も十分に勝てるはずのレースでした。スタートを危なげなく決めてハミルトンとの差を 2 秒前後でキープしつつレースをリードしていたのが、ハミルトンが仕掛けたアンダーカット作戦にしてやられた感じ。マックスがステイアウトする間にハミルトンは新品ハードタイヤでガンガンタイムを上げ、最後のタイヤ交換が終わった時点でハミルトン先行。それでも新しめのタイヤを履くフェルスタッペンは終盤で追いついて仕掛けますが、一度追い抜いたところでコースからはみ出してしまいハミルトンにポジションを戻します。結局このときのアタックでフェルスタッペンはタイヤを使い切り、あとはハミルトンを抜ききれないまま 2 位フィニッシュ。レッドブルのレースプラン的にハミルトンのアンダーカットに対して即カバーする動きをかけるのは難しかったということなのかもしれませんが、あの時点での選択が勝敗を分けた印象です。
またレーススチュワードのトラックリミット判定にも疑問符がつきます。ハミルトンはレース前半のほとんどでターン 4 をはみ出しながら走っており、そこで累計数秒分のアドバンテージを稼いでいたはず。中盤にレッドブルが抗議したことで判定が急遽厳格化されましたが、あれがなければフェルスタッペンはもう少し早い段階でハミルトンに挑めていたはずです。

しかし今回は何よりもハミルトンの走りを誉めるべきでしょう。一発の速さではマックスに勝てないながらもロングランでは遜色ないペースを維持し、マックスより古いタイヤで守りきった走りはさすがディフェンディングチャンピオン。名実ともに歴代最強ドライバーらしい戦いだったと言えます。

■セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

レーシングポイントとは大きく異なるマシン特性をまだ完全には掴み切れていないのか、ミディアムタイヤでアタックした予選 Q2 で惜しくも敗退。11 番グリッドからスタートするはずが、フォーメーションラップ中に突然電装系がシャットダウンするというトラブルに見舞われてピットレーンスタート。どこまで上がってこれるか分からないけどとりあえず DNS でなくて良かった…と思っていたら、スタート直後からペレスのオーバーテイクショーが始まりました。
前を行くマシンをズバズバ抜いていき、タイヤ交換タイミングの違いもあって気がつけば一時はフェルスタッペンの後ろを走る場面もありました。ほぼ最後尾から優勝した昨年のサクヒール GP を思い出させる鬼神のごとき走りで 5 位フィニッシュ。もし 11 番手からスタートできていれば表彰台まで行けた可能性はあるし、Q3 進出できていればハミルトンと戦うチャンスもあったことでしょう。ドライバーオブザデイ(ファン投票による当日のベストドライバー)はせめてもの慰めになったでしょうか。

クルマへの慣熟と予選一発の速さにはまだ課題はあるものの、ペレスの加入によってレッドブルはようやく二台で戦える状況を手に入れたと言えます。レースでの勝負強さという意味ではペレスはボッタスより上かもしれません。次は悪くても三列目からスタートしてくれることを期待します。

■角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

プレシーズンテストに続き今回の予選 Q1 でもフェルスタッペンに続く二番手タイムを記録し、改めて世界の度肝を抜いた角田。Q2 では残念ながらミディアムタイヤを使い切れずに 13 位止まりでしたが、そもそも「アルファタウリが Q2 でミディアムタイヤを履いて一番最後にアタックする」というトップチームの戦い方をしてくるというところにチームとしての成長を感じます。通常ならそういうのが赦されるのはメルセデスとレッドブルくらいですよ…。それだけ今年のマシンに自信があり、かつ二人のドライバーに信頼を置いているということでしょう。ガスリーはまだしも角田はこれがデビューレースですよ(驚

自身が「慎重に行きすぎた」というスタートで出遅れ、一周目は 16 番手で戻ってきた角田でしたが、その後がすごかった。先行するヴェッテル/アロンソ/ライコネンを立て続けにオーバーテイクしていきます。しかも途中一度ピットインして後退し、再び順位を上げていっているので、三人のチャンピオン経験者(合計戴冠数 7)を延べ 5 回抜いているわけですからね。AT02+RA621E の素性がいいとはいえ、デビュー戦でこれはちょっと信じられません。しかも↓のインタビューによると「アロンソの走りを見て真似してみたら速くなった」とか言っています。三人のチャンピオン経験者の走りを間近で観察して多くを学んだのではないでしょうか。

角田裕毅、F1デビュー戦で入賞……日本人初の快挙「アロンソを抜いた時は感動した」

個人的には角田は予選次第では 6~7 位くらいは狙えると思っていただけに、9 位というのは少し物足りません。でもそれ以上に角田の走りは印象に残りました。日曜日はペレス+角田で合計何回オーバーテイクしたんでしょうね。
バーレーンでの角田の課題はミディアムタイヤでの予選アタックと決勝のスタートでした。F2 のときの成長ぶりを見る限り、角田にはこういう課題を早期に克服できる力があります。次のレースではさらに上を期待していいはずです。

■ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

合同テストからずっと角田ばかりが目立っていて内心焦っているのでは…と思っていましたが、予選 Q2 では角田が作動させられなかったミディアムタイヤでしっかりトップ 10 に入り、Q3 でも 5 番手につけるなどチームリーダーとしての面目を躍如しました。決勝では SC 明けの再スタート後にリカルドと接触、フロントウィングを失って最後尾まで落ちた上にマシンにダメージを負って追い上げることができず、最終的にはリタイヤという残念なレースに。しかし予選で 5 位までいけるポテンシャルを示したのはマシン/ドライバー双方にとって超ポジティブ。チーム自体の戦い方が昨年までとは変わってきたこともあり、今季は表彰台にチャレンジできる機会も何度かありそうに思います。

というわけで、結果はともかく内容的には四人とも「今シーズンは戦える」という確かな感触を得たレースだったことでしょう。欲を言えばもう少しポイントを稼いでおきたかったところですが、今はこれで良い。

しかしレッドブル/アルファタウリ勢に共通して言えるのは、ペレスとガスリーが決勝前にコントロールエレクトロニクス(CE)とエナジーストア(ES)をエレメント交換して早くも二基目を投入していること(シーズン中に使えるこれらのエレメントは二基まで)、ペレスが決勝スタート前に謎のシャットダウンに見舞われたこと、フェルスタッペンが決勝スタート直後に「スロットルの調子がおかしい」と言っていたことなど、プレシーズンテストでは表面化しなかったトラブルが相次いで出てきていることです。エレメント交換は予防的な対応ということで交換済みのものも修理して使えれば良いのですが、そうでない場合は後々のリスク要因になり得ます。
あとは次のレースまで三週間空いていることも気になります。昨年はグランプリ間のインターバルがほとんどなく、レッドブルもマシンをアップデートする余裕がないまま次のレースに臨まざるを得ませんでしたが、三週間もあればメルセデスは今のマシンの不安定さに何らかの解決策を見つけてくる可能性があります。今はまだレッドブル・ホンダのほうがマシン性能は上と言える状況ですが、三週間後もその差が変わらない保証はありません。

ともあれ、今シーズンの F1 は本当に面白くなりそう。次は角田もプライベートテストで走り込んでいるイモラ、引き続き期待ができそうです。

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