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F1 スペイン GP 2021

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スペイン GP、F1 チームが最も走り込みデータを蓄積しているカタロニアサーキットであるからにはここで今シーズンの正確な勢力図が見えてくるレース。ここまでハミルトンの底力にやられてきた感のあるレッドブル・ホンダも、ここなら真正面から戦って勝てるに違いない。そう予想して臨みましたが、結果は「完敗」。リザルトだけ見るとフェルスタッペンがボッタスに先行して 2 位だったから惜敗に見えますが、メルセデスの戦略とハミルトンのドライビングに為す術なくやられたという意味では「完敗」が正しい評価でしょう。

■マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

予選は惜しくもトップに届かず、ハミルトンにキャリア通算 100PP を献上。しかし 2 番グリッドにつけたことで、今季のローンチコントロールの良いレッドブル・ホンダならばスタートで出し抜ける可能性はある、と思っていました。そして実際にその通りのスタートになったわけですが、その後のハミルトンがほぼずっとフェルスタッペンの 1 秒後をキープし、継続的にプレッシャーをかけてきます。嫌な感じだな…と思っていたら、案の定。1 ストップ作戦をベースにしていたフェルスタッペンに対してハミルトンは 2 ストップ、しかも初回ピットインを引っ張ってレッドブルにタイヤ戦略を読ませない作戦。さらには初回ピットストップ後に新品がソフトタイヤしか残っていないレッドブルに対してメルセデスは新品ミディアムを残し、レース後半の作戦の幅はハミルトン圧倒的有利。2 回目のピットイン後のハミルトンはフェルスタッペンを猛追し、終盤にあっさりオーバーテイク。フェルスタッペンは最後にソフトタイヤに履き替えてファステストラップポイント 1 点を積み上げるのがやっとでした。

この流れ、フェルスタッペンが初 PP を獲りながら勝てなかった二年前のハンガリー GP と全く同じ展開じゃないですか。レッドブルがメルセデスに対して互角以上のクルマを持っていても、メルセデスの戦略とハミルトンのドライビングを含む総合力に負ける。レッドブルは先頭を走っていながらメルセデスの戦略に対して為す術なく抜かれるだけ。
レッドブル的にはフェルスタッペンに速いクルマと PU さえ与えればメルセデスに勝てると考えていたのかもしれませんが、結局のところ週末の三日間をどう戦うかという戦略立案の時点で既に負けていたということになります。おそらくメルセデスは常に多数のオプションをシミュレートして最善策を選ぶ力があるのに対して、レッドブルは明らかにその幅が少ない、

ファン目線ではこういう負け方には悔しさはなく、ただ虚しい。考えてみれば開幕戦もメルセデスの戦略を含む総合力に負けたと言え、現時点でハミルトンにリードを許しているのはレッドブルというチームに原因があると言って良いでしょう(メルセデスのストラテジーとハミルトンのドライビングも最大限に賞賛されるべきではありますが)。ペレスがもう少し上位を走っていればという側面はあるにせよ、本質的にはそういう次元の話ではありません。
これで 4 レースを終えてレッドブルは 1 勝 3 敗。これで第 6 戦アゼルバイジャンまでにイーブンに持ち込めればフェルスタッペンに戴冠の可能性は十分ありますが、万が一モナコを落とすようなことがあれば黄信号が点ると思っています。

■セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

予選では肩に不調があったとのことで 8 番グリッドに沈んだペレス。スタートでポジションを上げたものの、リカルドにかなり長い間引っかかってしまいレースの大半を 6 番手で過ごします。何とかリカルドをパスして 5 番手に上がったもののハミルトンとフェルスタッペンのバトルに絡むことはほとんどできないままレース終了。終盤のファステストラップ争いへの参戦が唯一の見せ場だった程度で、昨年のアルボン同様に存在感がありませんでした。

レースに限らず、ベテランの仕事に対する感覚(新しい仕事や環境に慣れるまでにかかる時間の見積もり)ってけっこう正確だと思うので、本人の「マシンに慣れるのに 5 レースは必要」という発言は個人的には尊重しています。つまりペレスの実力を判断するのは次のモナコが終わった後。イモラでの予選 2 位など実力の片鱗は見せてくれているので、アゼルバイジャン以降でコンスタントにトップ 3 付近にいられるようになってくれることに期待。

■ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

開幕三戦は予選 Q3 の常連になっていたガスリーもついに Q2 落ち。各チームのアップデートやクルマへの理解が進んでアルファタウリ AT02 の優位性は薄れ、メルセデス/レッドブル/ハースを除く 7 チームがほぼ僅差の中にある状況になりました。こうなるとアルファタウリ的には予選・決勝ともに 9~10 位を狙うのがやっとという感じ。
決勝ではスタート時にグリッドをはみ出すという信じられないミスを喫し、5 秒ペナルティを食らって入賞争いから脱落したように見えたガスリー。しかしアストンマーチンやアルピーヌとバチバチやり合った挙げ句 10 位入賞はポルトガル GP に続く殊勲と言えます。こういう力強いレースを見せてくれるのが今のガスリーですよね。それだけにつまらないミスでペナルティを受けたのはもったいなかった。アレがなければ 9 位は確実でしたからね…。

■角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

イモラ以降あまり良いところがない角田。主にはアンダーステア傾向な AT02 にドライビングを適応させられていないのが課題のようですが、予選では本当に僅差で Q1 脱落。しかしその際にチームラジオでクルマを批判したのは良くなかった。発言についてはその後撤回しチームに謝罪したようですが、決勝レースの序盤にマシントラブルでリタイヤしたこととの因果を考えずにはいられないのが日本人というものです。
角田はプレシーズンテスト~開幕戦がセンセーショナルだっただけに期待値が上がりすぎているきらいがありますが、あくまでまだ 4 レース走っただけのルーキーですからね。ペレス同様に本人の発言を尊重するならば前半戦は失敗から学ぶための時間になるはずなので、私も 10 レース(7 月のオーストリアくらいまで)は様子を見ようと思っています。フェルスタッペンだってデビューイヤーは前半戦 9 レースをリタイヤ 4 回・入賞 2 回で後半戦に覚醒して 4 位 2 回ですからね。角田もそれくらいのポテンシャルはあると思います。

が、まず今やるべきことはとにかくチームと話し合って今のマシンを速く走らせるドライビングスタイルを身につけることと、昨年の F2 後半戦のようなレース中の落ち着きを再び身につけること。ステアリングを握ると熱くなりすぎるのが角田の悪い癖だと思うので、走りながらでも自分を客観視できるくらい冷静な視点が必要です。
ドライビングスタイル的には角田とペレスを入れ替えた方がうまくいくのかもしれないと思っていたりはしますが、今それをやると二人とも潰れてしまいそうだからなあ。見切りの早いヘルムート・マルコではなくドライバーの育て方を熟知しているフランツ・トストの下で走れることは角田にとってまたとない経験になるはず。アンダーのマシンを速く走らせる技術を身につけたとき、角田は一段上の強さを身につけるはずです。

とにかくレッドブル・アルファタウリともに良いところの少ないレースだったのでガックリ来ていますが、次は F1 の一大イベントであるモナコ。ドライバーの実力が試されるサーキットでもあるので、四人の熱い走りに改めて期待します。

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