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F1 ブラジル GP 2007

ブラジルGP決勝:ライコネンが優勝、大逆転で初タイトルを獲得! (GPUpdate.net)
ライコネン、悲願の初タイトル獲得! (F1-Live.com)
ライコネン、ワールドチャンピオン獲得に歓喜 (F1-Live.com)

筋書きのないドラマ――というよりは誰か超越した存在が筋書きを用意したのではないか、とすら感じさせる内容だった最終戦ブラジルは逆転でライコネンが劇的な勝利を飾り、ドライバーズタイトルまでも手にしました。「失うものはない」と自ら言っていたレースでスタートから攻め続け、現在の F1 ドライバー 22 人の中で最速はまぎれもなく自分であることを証明しましたね。2 回目のピットストップを首位のマッサが先行して行う中、スーパーラップを連発して逆転するさまは、往年の M. シューマッハーの走りを見るようでしたが、夏のマニクールでの逆転劇といい、このスタイルがライコネンの持ち味にすらなってきた感があります。


マクラーレン勢はハミルトンがスタートでマッサ・ライコネンに抑え込まれ、チームメイトであり最大のライバルでもあるアロンソに先行を許します。改めてアロンソに並びかかった 3 コーナー、サイドバイサイドのまま弾き出されるようにハミルトンがコースアウトし、8 位に転落。数周後、ギヤボックストラブルでスローダウンし、あわやリタイア・・・というところでギヤボックスが復活、何とかストップは免れたものの 18 位までドロップ。急遽 3 ストップ作戦に切り換え、スーパーソフトタイヤ中心の戦略で逆転を狙うも、万事休す。ただ、去年の最終戦ブラジルでのミハエルの走りすら彷彿とさせる追い上げには、改めてこの新人が今年一年で F1 に与えた影響の大きさを見せつけられた気がします。
アロンソはトップ 4 の中で唯一の 2 レース目エンジン。これが祟ってか週末を通じてスピードが伸びず、スタート以降は最後までフェラーリの 2 台を脅かすことはありませんでした。いかに富士でのリタイア(による中国 GP でのフレッシュエンジン投入)が響いたか、ということでもありますが、スタート後にマッサ-ライコネン-アロンソというオーダーになった時点で、アロンソのチャンピオン獲得はほぼ絶望的になったとも言えます。
結果、ライコネン 110pts・ハミルトン 109pts・アロンソ 109pts という F1 史上初ともいえる僅差で三つ巴の選手権を制したのは、なんとライコネン。開幕戦メルボルン以降ほとんど誰も口にしなくなっていたライコネンのチャンピオン獲得ですが、終わってみれば(下馬評どおりの圧勝ではなかったものの)「大本命」と言われていたライコネンが勝った 1 年になりました。もちろん、例えばハンガリーでのアロンソへのペナルティがなければこの状況は全く違っていたわけで、マクラーレンの「お家騒動」によって漁夫の利を得た、という側面もあるとは思いますが、いろいろ騒がしい中で一人黙々と自分のレースを続けてきたライコネンに勝利の女神が微笑んだ結果と言えるでしょう。

ただ、「ライコネンがチャンピオン」と言われてもまだちょっと実感がないのも事実。癖のある長髪を振り乱し、不遜な態度で絶対王者っぷりを見せつけたアロンソとは対照的であり、また他のドライバーの誰よりも速いのに、ひとつひとつのレースに対する勝利への執念のあまり計画的なポイント獲得ができなかったマンセルのような「無冠の帝王」が誰よりも似合うキャラでもあるが故に、まだちょっと違和感はありますね。
あと、個人的に(逆の意味で)すごく嬉しかったのは中国 GP でのハミルトンのリタイアだったりします。あのレース、ハミルトンは確実に獲れるポイントさえ獲っていれば間違いなくチャンピオンになれていたはず。それがあそこまで無理なピット戦略を採り、タイヤを壊してしまったのはアロンソのプレッシャーでも何でもなく、純粋に「勝ってチャンピオンになりたかった」だけなのではないかと思います。2005~2006 年のアロンソのように、あるいは今年前半のハミルトン自身のように、チャンピオン獲得が最終目的であり個々のレースで勝つことは二の次、という戦い方がまかり通っている中、それぞれの「グランプリ」を勝とうとする姿勢には、いちレースファンとして嬉しく思います。1980 年代の F1 は、そうやってそれぞれのレースを勝つことにこだわるセナやマンセルのようなドライバーが群雄割拠していたから面白かったわけで。そういえば、ミハエルもどちらかというと全てのレースで勝ちにこだわるタイプのドライバーでしたし、現役のトップドライバーの中ではライコネンが最も顕著だと思います。ドライバーが F1 マシンを形作る「部品」にほぼなってしまった今、やはりそういうドライバーこそ応援したいのがファン心理というもの。

閑話休題。

日本勢はこの最終戦でも思ったほどのパフォーマンスは出せず、ホンダに至ってはダブルリタイアで「最悪のシーズン」を締める形になりました。SAF1 はコンペティティブなレースができなかったとはいえ、マシンの競争力が相対的には最低ランクまで落ち込んできたここブラジルでは、堅実なリザルトと言えるでしょう。
光ったのは何と言ってもデビュー戦となった中島一貴でしたね。国際映像でピットイン時にクルーを撥ねてしまったシーンが放送されてしまい、「やっちまった」という印象を与えてしまいましたが、レース自体はポイント圏に手が届こうかという 10 位の力強い結果で、ファステストラップは堂々たる 5 位。ハミルトンやヴェッテルに比べれば華々しいデビュー、とはいかなかったものの、来年に向けて良いアピールになったと思います。逆に、あまり派手すぎずちゃんと印象に残るレースができたことは、今後のステップアップには好材料と言えるのではないでしょうか。日本人としては、佐藤琢磨とのポジション争いを見せてくれただけでも拍手に値すると思います。

いやあ、可能性があった中で最も低いほうの結果(ライコネンの逆転チャンピオン)とレースのあちこちで展開されたオーバーテイクのせいで興奮したのか、いつにも増して長いエントリーになってしまいましたが(笑)、今年の F1 もこれで終わり。オフシーズンに入ってしまうことは寂しいですが、アロンソが動くと言われている今年のストーブリーグはますますヒートアップ。この冬も目が離せそうにありません。

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