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オンキヨーがホーム AV 事業をシャープに売却

オンキヨーのホームAV事業、シャープらに33億円で売却 – AV Watch

オンキヨーが主力事業であるホーム AV 事業をシャープおよびアメリカのオーディオ機器メーカー VOXX の合弁会社に売却することが発表されました。
3 月に債務超過のため上場廃止され、4 月には今回の売却話が具体的になっていたのでこのこと自体には驚きはありません。そもそも二年前に一度米 Sound United への売却話があったのに白紙撤回された経緯もあり、もうオンキヨーの AV 事業が単体で成り立たない状況にあることはずっと明らかでした。

そもそもホーム AV という市場自体、この 10 年の間に市場縮小で統廃合を繰り返してきた歴史があります。そもそも今のオンキヨーは 2015 年にパイオニアの AV 事業と合併してできた組織だし(パイオニア本体は車載機器専業化したものの 2019 年に香港の投資ファンドに買収されている)、デノン・マランツも 2017 年に上記の米 Sound United に買収済み、ケンウッドは 2008 年に JVC と合併したもののオーディオは大幅縮小して車載機器事業がメインになっている、という状況。ホームオーディオやホームシアター機器で企業形態を大きく変えずに事業継続できているのってヤマハとソニー(これもかなり商品点数を絞っているけど)くらいではないでしょうか。20 年ほど前からホームシアターを趣味の一つとしてきた私としてはオンキヨーのハイエンドブランド「Integra」は憧れでもあったので、現在のような状況はとても寂しい。

しかし音楽も映像も物理メディアではなく配信が流通の中心となり、再生機器も大型の据置コンポーネントではなくスマホやポータブルプレーヤーとヘッドホン/イヤホンが主流になって久しい。これはもう不可逆な変化だし、日本の PC やスマホ、カメラメーカーが経験してきた近年の変化に比べればむしろ緩やかだったのでは…とすら思います。

しかし売却先がシャープというのはちょっと意外でした。

SHARP

シャープももうかつてのシャープではなく、2016 年に鴻海に買収されて今は台湾資本。近年では東芝から dynabook ブランドを買い取って「シャープの dynabook」として PC 事業を展開していたりもします。
鴻海はもともと PC やスマートフォンの設計・製造を受託する EMS メーカーであり、iPhone の製造を手がけていることでも有名。だからシャープを買収し、dynabook の商標を取得して PC やスマホ、テレビを製造するところまでは理解できます。本業である EMS との相性が良く、調達力を活かして自社ブランドの製品を比較的低コストで作れますからね。しかしオンキヨーがやっているホーム AV 機器はそこまで台数が出る事業ではないし、シャープや鴻海の他事業とのシナジーがあまり強くないように思うのです。

ではなぜそんなシャープがオンキヨーの AV 事業を買収するのか…これはあくまで推測ですが、鴻海は単に EMS とのシナジーや自社ブランドの最終製品を販売するためではなく、日本の電機メーカーを再建したかったのではないかと考えています。自社の得意分野でシャープのテレビ事業やスマホ事業を立て直し、同様の手法で dynabook を復活させた後、オンキヨーの AV 事業を組み合わせることでシャープを改めて総合 AV/IT メーカーとして自立させようとしているのではないでしょうか。それくらい鴻海のシャープ再建手法は他の事業買収とはやり方が違うように見えます。同じ電機業界でも東芝は事業ごとにバラバラに中国企業に買収されましたが、それらは東芝ブランドを自社事業に利用している側面が強くてシャープと鴻海の関係とはちょっと違う。風の噂で聞くところによると、鴻海流の仕事のやり方は日本企業とは比べものにならないくらいハードワークと結果を求められて大変らしいですが…。

いろいろと複雑な思いはあるけれど、今のところは売却先がシャープで良かったのではないかと思っています。オンキヨーのホーム AV 事業とそれに携わる人々がシャープ傘下で将来「復活した」と言われる日を陰ながら願っています。

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