F1イギリス決勝:ハミルトン、フェルスタッペンと接触も”執念”の逆転優勝。角田裕毅は10位入賞
イギリス GP では史上初のスプリント予選レースが実施されました。どんなものになるかと思ったら、FP1→予選→FP2(セッティング変更不可)→スプリント予選→決勝というスケジュールのため各チームはレースに向けた準備期間が FP1 しかなく、セットアップが煮詰めきれないチームや慣熟しきれないドライバー(特に新人勢)が多発。またスプリント予選自体も半ば決勝レースの展開を予想させるだけであまり面白みはなく、少なくとも抜きにくいシルバーストンにおいては成功とは言い難かったと思います。スタートで順位を上げたアロンソやスピンで沈んだペレスのような不確定要素が 1~2 台出たものの、それ以外はほぼチームやドライバーの序列がそのまま出ただけ。フリー走行の短縮でセットアップが半ばギャンブルになり、チーム感の勢力図をシャッフルすることが狙いなのかもしれませんが、それって F1 に必要なことなのか?という気も。
■マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
決勝の 1 周目でマックスのレースは終わってしまいました。スプリント予選の序盤からハミルトンと激しくやり合っていて、決勝でも同じような鍔迫り合い。過去にないくらい過激に争っていたからちょっとヤバいかも、と思っていたら接触。状況的にはレーシングインシデントの範疇だとは思いますが、ハミルトンは若い頃から追い詰められるとこういう荒っぽい走りをするんですよね。ロズベルグとチャンピオンを争っていた時代はもちろんのこと、一昨年~昨年と二度にわたって当時レッドブルのアルボンをコース外に押し出した前科あり。かつ、アルボンとの接触はいずれも今回同様コーナリング時にハミルトンがインサイドから相手のリヤに鼻先を当てて弾き飛ばす格好だったので、本当に単なる事故だったのか?と疑問に思ってしまうわけです。オーストリア GP からスチュワードは「接触して相手をコース外に押し出した場合は状況によらずタイムペナルティ」で良くも悪くも一貫していますが、これでライバルをリタイヤに追い込んでも自分は 10 秒ペナルティで済むのであればやったもん勝ちですよね。あまり考えたくないですが、今後のレースでレッドブル側からの報復もあり得る状況で、安全性にとってこれが正しい状況なのだろうか?という疑問を感じます。
フェルスタッペンに関して言えば、あそこは一旦引いておくべき局面だったようにも思います。今の RB16B ならば一度先行されても逆転のチャンスはいくらでもある。あるいは今回は 2 位で終わってもポイントランキング上のダメージはさほど大きくない。おそらく抜けないシルバーストンでメルセデスのほうが直線重視なセットアップだったから、後で抜き返すのは簡単じゃないという考えでポジションを死守しようとしたのでしょうが、シーズン全体を見据えた戦い方が今後のフェルスタッペンには求められていくのでしょう。こういう状況のハミルトンが接近戦で何をしてくるかは今回痛いほど解ったはずなので、次からはもっとクレバーに戦うことを期待します。
■セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
スプリント予選でミスを犯し、コースアウトして決勝最後尾スタートになってしまったことが全てでした。決勝は序盤こそいい追い上げを見せましたが、入賞圏に入るとなかなかポジションを上げていけず。ペレスというドライバーは他とは異なるピット戦略でタイムレースを走らせると「気がついたら上位にいる」というキャラクターですが、コース上でオーバーテイクしてポジションを上げていくのはそれほど得意なわけではないんですよね。
最終盤には自身の入賞を棄ててピットインし、ソフトタイヤに交換して懇親のファステストラップを記録。ここでチームとしての 7 位 6pt を捨ててまでハミルトンのファステストラップポイント 1pt を削りに行くあたり、レッドブルが今季コンストラクターズチャンピオンよりもフェルスタッペンによるドライバーズチャンピオン獲得を優先していること、そしてペレスはそのサポートを最優先ミッションとしていることがよく判りました。まあ仮にコンストラクターズが獲れてもドライバーズを逃したらフェルスタッペンは他チームに出て行く可能性があるし、そうなったらもうコンストラクターズどころじゃないわけで、最大のチャンスと言える今季フェルスタッペンの戴冠にこだわるのは当然と言えますが。
■ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
今回のアルファタウリはダメでしたね。持ち込んだセットアップが外れ、FP1 の時間でそれを修正できないまま予選に突入してしまった感があります。ガスリーは久々の Q2 落ちを喫しつつも決勝では何とか入賞圏を走っていましたが、終盤にデブリを踏んでパンク、タイヤ交換を余儀なくされて下位に沈んでしまいました。しかしクルマの出来を考えれば 9 位入賞目前まで行ったことは立派と言って良く、不運こそあったもののガスリーの安定感は今回も健在。めげずに次のハンガリーに目を向けてほしいところです。
■角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
なんとホンダ PU 勢で今回唯一の入賞が角田でした。こちらもクルマが決まらず予選は Q1 敗退、決勝も序盤はペースが上がらず苦しみながらも徐々にいいタイムを刻み始めて最終的に 10 位入賞。ペレスのファステストラップ狙いのピットインとガスリーのパンクに助けられての棚ぼたではありましたが、今の角田にはこういう「しぶとく走ってポイントをもぎ取る」というレースこそが求められているわけで、それをきっちり実行できたことは良かった。そういう走り方ってまさに昨年来のガスリーがやり続けていることですからね。マシンに速さがない中で入賞までこぎ着けたことは角田自身にもいい経験になったはずで、この結果が彼を一段高いステージに導いてくれることに期待。
チャンピオンシップはドライバーズが 8pt、コンストラクターズが 4pt 差ということで 10 レースを終えてほぼ振り出しに戻った格好となりました。とはいえ今回はスプリント予選を含むイレギュラーな状況であり、総合的に見てレッドブル・ホンダが優位であることに変わりはないと思っています。次は 2006 年にホンダ F1 が第三期初優勝を飾ったハンガリー、今回の溜飲が下がるようなレースになることを祈っています。
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