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竜とそばかすの姫 [IMAX] @T・ジョイ PRINCE 品川

この夏の話題作を IMAX で観てきました。

竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫

前作『未来のミライ』が個人的には全然受け付けなかったので、本作も実は半分くらいは不安な気持ちで映画館に行きました。前作を観て以来、細田守監督の親子観とか「毎度シナリオや男の都合よく動く、意思の感じられないヒロイン」が気持ち悪く感じて『バケモノの子』や『おおかみこどもの雨と雪』くらいまで遡ってダメになってしまったんですよね。でも初期の『時かけ』や『サマーウォーズ』あたりは大好きだったので、そっち側の細田節が出てきてくれることに微かに期待していました。
本作に関してはサイカ先生の「え、なんでラストをそうもっていくかな、と言う気もするけど、久しぶりに素晴らしい方の細田守だった」に完全同意で、ところどころ「そうはならんやろ」と突っ込みたくなる展開はあれど、メッセージ性よりもエンタテインメントとしての面白さに重きを置いた作風は観ていて気持ち良く、夏らしい爽やかな映画に仕上がっていると思います。

本作の舞台となっているのは四国の田舎町とインターネット上の仮想世界「U」。『サマーウォーズ』に登場した仮想世界「OZ」とかなり近い世界観のためある意味サマーウォーズの続編あるいはリバイバル的な作品と言って良いかもしれません。ただ「U」が OZ と異なるのは、OZ が現実世界のインフラの大半と接続されていたのに対して「U」はあくまで現実とは切り離された仮想世界であり、人生をやり直せるもう一つの世界という位置づけである点。だから U の住人は原則匿名であり、アンヴェイル(素性がバレること)は U の世界での居場所を失うことを意味します。という点が今回のストーリーのキモになっています。
舞台という意味では終盤にちょっとだけ関東も出てきますが、そういうことなら品川じゃなくて川崎か二子玉川の IMAX あたりで観るのが正解だったかな?という気もしました。気分の問題ですけどね。

というわけで『サマーウォーズ』の世界観で『美女と野獣』オマージュの映画を作ってみたという作品ですが、個人的にはシナリオはあまり重要ではなく(家族絡みで変に引っかかりのある思想がねじ込まれていなかったのは良かったと思う)、音楽と映像でたたみかけるエンタテインメントとして面白かったです。主人公の仮想人格「ベル」のライヴシーンは、映像自体は近年の数多あるアイドルアニメのほうが技術的には上だと感じたけど、歌唱が圧倒的。謳っているのはシンガーソングライター中村佳穂氏で、二年くらい前に松重豊のラジオ「深夜の音楽食堂」で聴いたときにめちゃくちゃ歌うまいな…と思っていたのですが、こんな形で抜擢されるとは。さらには主人公すず/ベルの CV まで担当していて、本業の声優顔負けの演技をしているのだから驚きます。
CV で驚きと言えば、すずの親友でベルのプロデューサーでもあるヒロちゃんというキャラクターが良い味を出しているのですが、声の芝居があまりにもキャラクターに合っているから本業の声優さんがやっているものとばかり思っていたのにエンドロールを見たら YOASOBI のヴォーカル幾田りら(ikura)だったから主人公以上に驚きました。これは完全に二足のわらじでやっていけるレベルじゃないですかね…。

あと、サマーウォーズもそうでしたが細田作品は基本的にインターネット世界を肯定的に描いているのが私のインターネット観と通じるところがあって良いんですよね。個人的には細田監督には親子愛とかをテーマにするんじゃなくて、青春とか仮想世界とかエンタテインメント方面を中心に描いてほしい。細田監督の家族観は独りよがり感が強いし、単純な映像美なら新海誠にお株を奪われてしまった印象があるし(個人的には新海誠の映像美はちょっとくどいと思う)。ジブリの例を出すまでもなくテーマ性が強くなればなるほど押しつけがましく見えてしまうので、こういう大作アニメは後腐れのないエンタテインメントであってほしいと思っています。

期待値 50% くらいで観に行った結果それを大きく上回るものを見せてもらったので、満足度の高い映画でした。しかしサイカ先生が言うようにこの時点でサントラも主題歌も発売されていないのだけはイケてないなあ。とりあえずお盆休みの間にもう一度観て、その勢いでサントラを買うことにしようかと思案中です。

コメント

  1. edf_45 より:

    前作のことがあったので、やめようかなと思ったのですが、「予告2」を見たら面白そうだったので、期待値を下げて観に行きました。

    結果、悪くはないですが涙するようなシーンはなく。監督インタビューにもありますが、若い人に向けた作品なんですね。それでいてリアル路線で、本職の声優を起用しない(YOASOBI等)のもその流れかと思います。

    ちなみに主題歌は毎週1曲ずつ配信で、現在3曲がダウンロード購入できます。ヘビロテしてます。
    https://mora.jp/topics/news/ryu-to-sobakasu-no-hime/?fmid=TOPICSTAB

    感想はブログに書きましたが、今作も親子愛ものだということは理解できるものの、すごくおもしろかったか、おすすめできるかというと、中くらいですかね……。損はしない。ファンなら(とファミ通風になってしまう)。
    https://kimura-count-base.com/archives/421
    https://kimura-count-base.com/archives/448

    • B より:

      おお、観に行かれましたか。そして同じような感想(笑。
      脚本はとりあえず鑑賞の邪魔しなかったという点で「可」レベルかな、と思っています。本当に外部脚本家は真剣に検討してほしいですね。
      映像的に見せたい演出やギミックありきで、それを見せるために話を作っている、スクエニのゲームみたいなシナリオだと思います…。

      個人的にはこういう夏休みのエンタメにはシンプルで楽しめるものであれば良いと思っているので、その観点では楽しめました。
      ただ楽曲や歌唱が別の人だったらどうだったかは分からないですね。

      主題歌、CD のスケジュールしか見てませんでしたが配信は一部始まってるんですね!さっそく買います。

      • edf_45 より:

        そうそう、
        「「U」が OZ と異なるのは、OZ が現実世界のインフラの大半と接続されていたのに対して「U」はあくまで現実とは切り離された仮想世界であり、人生をやり直せるもう一つの世界という位置づけである点。」
        というのは目新しいご意見でした。

        他の人の感想を読んでいると、「モブのASは何しに「U」に来ているのか分からない」というのが多かったのですが、これで納得。「U」はエンタメのSNSなんですね。現代で言えばニコ動やYouTuberを見るために皆ログインしているのだと。たしかに、実況動画がメインでしたし、クラスでの話題のなり方もエンタメのそれでしたね。

        • B より:

          そうですね、私はこういう場合自分の知っている事例に当てはめながら想像するようにしているのですが、OZ はシングルサインオンで業務システムまで連携できるようになった Facebook(実名ベースで個人情報と紐付いている)、U は VR でフルダイブできるようになった Twitter(匿名ベースで他サービスも含めたクチコミが伝播しやすい)という感じなのだろうと思っています。あるいは、サマーウォーズと竜そばは実は同じ世界で、OZ でリアル連携が強まりすぎて事件が起きた反動から匿名ベースでエンタメ用途に限定した U が生まれた…みたいな裏設定があるのかもしれません。そう思って見ると OZ と U で仮想世界内の作りがけっこう似ているのも納得できてきますよね。

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