きっかけはサイカ先生の一昨日のエントリー。
キヤノンの EF/RF レンズのマウントシーリングの話です。近年のキヤノン製交換レンズには、主に L レンズでマウント部にゴム製のリングが搭載されていてマウント部分からの水滴や塵の侵入を防ぐ構造になっています。
α レンズでの実装はどうなってるんだっけ?と話題を振られた気がしたので、手持ちの主要レンズについて調べてみました。
ちなみに電子機器の防塵防水(防滴)性能は IP 規格で定義されていますが、基本的にはその機器の保護構造(筐体)に対するテスト規格なので、単体では機能として成立しないレンズ交換式カメラや交換レンズには適用されないんですよね。そのため、各社がそれぞれの基準に基づいて防塵防滴性能を表示しています。カメラ関連の業界標準規格といえば CIPA がありますが、バッテリーの撮影可能枚数や手ブレ補正性能、AF 合焦速度などは定義されているものの、防塵防滴に関する基準は現時点ではありません。
まずはおさらい的に EF レンズ。私はミラーレスへの移行に伴い EF の機材はさすがに減らしましたが、5D Mark III といくつかの EF レンズはまだ手元に残しています。
私が持っている EF レンズだと EF24-70/F4L とサイカ先生も言及していた EF16-35/F4L にはラバーシーリングあり。同じ L レンズでも手ブレ補正機構が搭載される前の初代 EF70-200/F4L(1999 年発売)にはさすがに搭載されていませんでした。私の記憶では、高級レンズにマウントシーリングが必須機能と見なされるようになったのはこの十年くらいのことだったように思います。
で、α(E マウント)。Vario-Tessar FE 16-35/F4 ZA にはシーリングなし。このレンズは 2014 年発売ですが、フルサイズ E マウントは出た当初は上位製品でもまだマウントシーリングはついていませんでした。E マウント機の性能が A マウント機を上回り始め、G MASTER レンズが登場した 2016 年頃から G MASTER/G/ツァイスレンズにラバーリングが搭載されるようになったと記憶しています。
そして今年発売されたばかりの FE 24mm F2.8 G にはラバーリングあり。キヤノンのラバーリングに比べると足が短くて一見ついていないように見えるくらいですが、実際にボディに装着して見てみるとこれでもボディとレンズの接合部はちゃんとカバーされています。
シグマの 100-400mm F5-6.3 DG DN Contemporary にもラバーリングがありました。マウントの金属リングの周囲をラバーリングがぐるっと取り囲むように装着されているのは、共通設計である L マウント版との 2mm のフランジバック長をこのマウントパーツで吸収しているからだと思われます。
ソニーやキヤノンでいうところの無印レンズに相当する Contemporary ラインながらラバーリングを搭載しているのは、互換レンズメーカーとしての差異化なのでしょうか。ラバーリングは望遠ではない I Series の Contemporary レンズ群にも搭載されているようです。
ちなみにシグマの EF マウントレンズ群では、85mm F1.4 DG HSM Art(2016 年発売)にもキヤノンの L レンズ同様の構造でラバーリングが搭載されています。同じ Art レンズでも 35mm F1.4 DG(2012 年)や 50mm F1.4 DG(2014 年)には搭載されていなかったので、ソニー同様に 2016 年頃からラバーリングを搭載するようになったと思われます。
なおシグマのマウントアダプター MC-11(EF-E)にはラバーリングはありませんでした。キヤノンの EF-RF マウントアダプターとは対照的ですが、同じシグマでも後発の L マウント用アダプター MC-21 にはラバーリングがついているようなので、MC-11 は単に発売タイミング(2016 年)的にラバーリングを標準搭載する前だったということでしょう。
E マウントレンズからもう一つ、ツァイスの Batis シリーズ。これが面白くて、デザイン上のアクセントだと思っていた青色リングがよく見たらシーリングラバーでした(笑。この部分で機能性とデザインアイデンティティを両立させるというのはユニークなアイデアです。
こうして見てくると、E マウントレンズのラバーリングはキヤノンの EF/RF レンズに比べて足が短い(幅が狭い)ものばかりなんですね。マウントの構造上幅広にできないのか、する必要がないのかは分かりませんが、こういう違いもまた面白い。
まあ私の経験上ではラバーシーリングのないレンズを雨中のサーキットや砂埃の舞うオフロードコースで散々使ってきましたが、レンズ交換さえしなければマウントないに水滴や砂塵が入り込んだことなんて一度もありません。例えば水かけ祭りだとか、砂漠みたいな極地で撮るようなプロフォトグラファーでもない限りそこまで気にしなくても良いのではと思っています。安心という意味ではあったほうが良いのは確かですけどね。
※追記:
Twitter で下記のご指摘をいただきました。
確かに防塵防滴だけでなくレンズの振動やガタツキ防止効果もありそうですね。であれば、以前から望遠レンズでのラバーリング採用率が高かったのも納得できる話です。コメントありがとうございました。
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