「それでこそ火鍋、燃えよドラゴン」
緊急事態宣言もようやく明け、感染に気をつけながらであればある程度気兼ねなく外食できる状況になってきました。私もそろそろ『孤独のグルメ Season9』の残る聖地巡礼を加速させていこうと思います。残っているのは立地や営業時間的にこれまでは行きづらかったか、緊急事態宣言中は休業していたお店ばかりなんですよね。
今回は第 7 話の舞台である新小岩を訪れました。駅南のアーケード街を抜けて少し路地に入ったところにあるのが「貴州火鍋」。こどグルでは中華料理は定番、その中でも四川はよく出てくるけど、貴州は初めて。貴州は四川の南東に位置する省で、食文化的には辛味中心という点で共通点があるようですが、四川の辛さとはまたちょっと違うっぽい。実際どんなものなのか、いってみようじゃないの。
店に入った瞬間に今まであまり嗅いだことのない香りが漂っていて、いかにもここは日本ではない感覚。
ドラマで取り上げられたのに加えて緊急事態宣言に伴う休業明けということもあってけっこう混んでる。店員さんによると週末は予約だけで埋まってしまう状況とか。
店の中を見回すとドラマ観てきたっぽいお客さんが多いけど、隅っこの席に常連らしき中国語をしゃべるお客さん。やっぱり本場の人が愛する店なんだろうなあ。
メニューはとにかく読めない。日本語が添えてあるから想像はできるけど、この本場感なら原語で注文したくなるじゃないですか。
「この『りゃん…ばんしゃお…つぁいさん』をお願いします」
「はい、三種盛りですねー」
普通に日本語で返されるとこっちが恥ずかしいんですけど!!(;´Д`)ヾ
ふう…食べる前から別の汗が。
まずは何はなくとも生ビールでしょう!もう「とりあえず」とか言うのが恐れ多いくらい、この一年半は貴重な存在だった生ビール。
都内で、自宅以外でお酒を飲めることがこんなに嬉しいことだとは。
そしてビールのつまみはもちろんシェフお任せ、貴州のまかない前菜三種盛り。まかないって言葉に弱い俺。
五郎はハーフを頼んでたけど、今回はフルサイズ。
貴州流のおもてなし、ありがたくいただこう。
三種盛りの一品目は、発酵らっきょうと水納豆の和え物。
見た目的には箸休めとかメインの合間につまむタイプ。
あっ…らっきょうだ。
辛さ控えめ。…いや…あっ、辛い!でもうまい。
出で立ちからいって少し酸味があってシャキシャキした歯応え…とか想像してたらだいぶ違った。
こんな感じなのに意外としっかり辛い。これは貴州を侮ってたか。
二品目はコンニャクの和え物。
これは間違いない、日本人にも馴染みのあるほっこり味に違いない。
実際確かにどこか懐かしい、落ち着く味なんだけど…これも辛味が追いかけてくる。
辛くないと見せかけて、けっこうピリ辛。
三品目は…五郎はコールラビと燻製肉炒めを食べていたけど、これは見た目がちょっと違う。
何だろうこれ…謎。
これが三品の中で最もしっかり、ガッツリ辛い。
見た目を裏切らぬ辛さ。前菜にして、既に味覚がバカになり始めている自覚がある。でもなんか中毒性のある辛さ。
確かに辛さの質がいろいろ違うのは分かる。でも結局、辛い。
辛いの得意なはずの自分でも、この辛さの連撃はけっこう厳しい。
続いて厚揚げの回鍋肉 貴州家庭式。
回鍋肉っておいしいよね、これさえあれば無限にご飯が食べられる。
豚バラにキャベツ代わりのネギ、そして厚揚げ。
この組み合わせがうまくないはずがない。
ただ、一般的に想像される回鍋肉とは別物の味。甜麺醤を使ったコク甘口じゃなくて、こいつはピリ辛。
でもさっきの前菜の辛さのせいで、このピリ辛が大したことなく感じる(笑
辛さのチェーンリアクションにビールがノックアウトされ、たまらず援軍。
ドクダミハイボールというのに挑戦してみました。
ジョッキの上にドクダミの葉が浮いたチャレンジングなハイボール。
ハイボールっていうけどこれウイスキーじゃなくて酎ハイかな。そこに立ちこめるドクダミの青い香り。
自宅の庭でせっせと駆除しているドクダミをこういう形で飲もうとは、我ながらちょっと複雑な気持ち。
梅菜と皮付き豚バラ肉のとろとろ蒸し。
この店で唯一?の辛くない料理。角煮でもこうはならないだろうというほどトロトロに蒸された豚バラに、ほんのり梅の香り。
肉もおいしいけど、その下に積まれた大量の高菜がまたうまい!辛くない料理が逆に新鮮だったこともあって、これは大ヒット。
ここで本命、納豆火鍋のお出ましだ。
火鍋は大好きだけど、この鍋はちょっと普通じゃないことが一目見ただけで分かる。
こちらも気合いを入れて対峙しようじゃないか。
鍋に入れていく納豆と豚バラ。
豚は一度調理されたもので、鍋に入れずに食べても良いとのこと。
試しに食べてみると、そのままでも確かにうまい。豚バラのピリ辛発酵味。
これ普通に食べる用と追加で鍋に投入用も欲しいくらい。
そしてどどんと野菜。
これだけ見ると日本の鍋と大して変わらないけど、キクラゲと瓜が入っているのが珍しい。あとカボチャも日本だとあまり鍋には入れないような。
ここで納豆を皮切りに具材を鍋に投入していきます。
納豆といってもなんだか寺納豆みたいな感じで、水戸納豆とは全然違う。これはどんな味になるんだか想像もつかない。
へえ、タレにも納豆。でもさっきの投入用納豆と違って、こっちは見慣れた感じの大豆感。
さあ、どんな感じに仕上がりますやら。
煮立ってきたところで、一気に納豆臭が漂い始めた。
今まで食べたどんな鍋とも違う匂い。納豆っぽさと、いかにもな辛さと、そのなかに奥深い味がありそうに感じる。
では、いただきます。
熱っ、辛っ!
でもうまい、うまいぞ!
熱さが辛さを、辛さが厚さを互いに呼び起こすような感覚で、ハフハフしながらでないと食べられない。
でもひたすら唐辛子で辛いというよりも、予想したとおり深みのあるうまさ。
四川の辛さとはまた違う、発酵がポイント?
うーん、わからんけどうまい。
そーなると紹興酒。
辛い料理と紹興酒って、どうしてこんなに合うんだろうか。
逆に言うと、日本人的には辛くない料理と飲んでもそれほどおいしいと感じないのに。
銘柄が「三国演義」ってのがまた良い。
魏の赤が火鍋の辛さと重なって見えるけど、貴州って当時でいうと蜀のあたりじゃなかったっけ?
そういう意味では、劉備や孔明は毎日こんな辛発酵味を食べながら生きてたのか。
これは久住さんが食べていた発酵野菜入りポテトサラダの炒め。
ポテサラのイメージとは全然違う濃いめのマッシュポテト味で、その中に歯応えある漬物の爽やかな酸味がおいしい。
これ、けっこう気に入った。
火鍋のほうは具材追加。羊肉は凍った状態で出てきました。
こういう辛い鍋に羊肉って絶対うまいやつじゃん。
薄切り肉だからちょっとしゃぶしゃぶ風に軽く熱を通す感じでいただきます。
辛い!でももはやそれがいい。
そして羊の少しクセのある風味が、この辛い発酵スープとの相性抜群!
納豆をまとった貴州の羊、うまし。
最初からラム肉二人前くらいつけといても良かったくらい、間違いないおいしさ。
〆は干し肉チャーハン(ドクダミ入り)。
干し肉の深いうまみ、ドクダミの風味、そしてこれにも納豆(火鍋に投入したタイプ)が入っていて食感が面白い。
このチャーハン、けっこう気に入ったかも。今回のふらっと QUSUMI メニューはいずれも必食です。
食後にお店からのサービスでデザート。
女将さんの手作りとのことだけど、何種類かの果物を甘く煮詰めたような何か。
よくわからないけど、女将さんの人柄を感じる優しい甘さ。
唐辛子で麻痺した味覚が癒やされていくかのようだ。
店内には今までに見たことないサイズの久住さんのサイン。
色紙じゃなく画用紙に書いてもらったと思われます。
そして松重さんのサインも同サイズ。
この回のロケは本編よりもふらっと QUSUMI のほうが先に収録されていたようですね。
標高 1,000m の山岳地帯に生まれた貴州料理、なのに納豆大好きという謎。
中国四千年の知恵が、優しく発酵しているのかもしれない。
久しぶりに辛いのをたくさん食べたら胃がびっくりしているけど、おいしかった!
未知の味に出会えるのって、やっぱり楽しい。
ああ、いい汗かいた。大満足。
ごちそうさまでした。
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