NTT、逆相の音波で音漏れを打ち消すオープンイヤー型イヤフォン – AV Watch
NTT がコンシューマー向けイヤホン市場に参入し、「耳を塞がない」タイプのイヤホンとして「nwm(ヌーム)」シリーズを発表しました。製品は有線タイプの「MWE001」、イヤーフック型完全ワイヤレスの「MBE001」の二機種。
NTT が自社ブランドでイヤホンをというのは正直驚きましたが、NTT ってグループ全体で情報通信や音響に関わる本当にさまざまな研究開発をしているんですよね。私も昔 NTT の技術フォーラムや武蔵野研究開発センタの見学に行ったことがありますが、えーそんなのまで!?という分野の研究成果を見て驚いた記憶があります。有名なところでいうと、ニコ超で始まって近年は単独イベントとして興行するようになった「超歌舞伎」は NTT の技術協力で成り立っている、というか NTT の技術アピールのイベントとしての側面を持っています。
なのでこの nwm シリーズもそんな NTT の音響技術開発の成果として生まれ、テレワークに活用するデバイスとして販売されるならば納得なわけです。
耳を塞がないイヤホンといえばトレンドを作ったのはソニーの LinkBuds ですが、最近はビクターからも類似コンセプトの製品が出ているし、Amazon に溢れる中華メーカーからは枚挙に暇がないほどです。以前ならばこの手の商品は骨伝導イヤホンが主流でしたが、音質に難があり音楽用というよりは通話用、あるいはジョギング用などの用途に限定されてきました。それが耳を塞がないタイプのイヤホンが登場して音質面でのデメリットが多少克服され、完全ワイヤレスの実用化、音楽を聴く以外にも動画など「スマホを使っている間は基本イヤホン」というスタイルの一般化、それにテレワークといった流れが重なることで「つけっぱなしの利便性」が注目されてきたのが今だと思っています。
「周囲の音を遮らないことでつけっぱなしにできる」という意味ではアクティブノイズキャンセリングイヤホンでも同じことができるし技術的にはそっちの道の方が正しいようにも思いますが、電子的に加工された音ではなく自然音がそのまま耳に入ってくること、それから周囲に対して「耳を塞いでいないアピール」ができるこの手のイヤホンのほうが過渡期のアプローチとしてはわかりやすい。LinkBuds に ANC タイプの「LinkBuds S」が後から発売されたのにイマイチ受け入れられていないように見えるのは、そのあたりが大きいと思っています。
この nwm は一般的なオープンイヤータイプのイヤホンに近い形状をしており、ハウジング/ドライバーが外耳道に対して少し上にオフセットすることで耳を塞がない構造を取っています。それだけなら数多ある同タイプのイヤホンと大差ないのですが、それらと違うのは「ドライバーユニットから出る音の逆位相の音波を発することで音漏れを抑える」という発想で作られていること。要は外部ノイズの逆位相の音波を出して静けさを作り出すアクティブノイズキャンセリングと逆のことをして、イヤホンの発音を外に向けては打ち消すということです。その発想はなかった。
ちなみに今世の中にあるアクティブノイズキャンセリングは基本的に密閉型イヤホン/ヘッドホンで最大の効果を出すように作られていますが、オープンエアーに対して ANC をかけるのって音が拡散、反響するだけに本当に難しいんですよね。この nwm の ANC も完璧ではないと思いますが、記事を読む限りは至近距離でなければほぼ聞こえないというレベルまでは抑えられている模様。電車の中で音楽を聴く用ではなく主にテレワーク用、と考えればこれくらいで十分という判断なのかと思われます。
狙っている市場から考えて高音質で音楽を楽しむというよりは BGM 的に音楽が楽しめて通話もできる、というクオリティーかと思われます。でも技術的興味は尽きないし、音漏れ防止用の ANC が音質に影響するのかしないのかも気になる。触ってみたいんですが、これ有線モデルだけでも一般的な家電量販店で売られるんですかね。
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