久しぶりに洋画を映画館で観てきました。ここしばらく配信でしか観てなかったからなあ。
マット・デイモンとベン・アフレックの盟友コンビによる新作。共同プロデュースのもとマット・デイモンが主演、ベン・アフレックが監督と出演を務めています。二人の共演は二年前の『最後の決闘裁判』以来ですね。
バスケットシューズの代名詞である「エアジョーダン」の誕生にまつわる実話をもとにした映画。日本なら『プロジェクト X』あたりで取り上げられそうな話です。1984 年当時のナイキでバスケットボール部門の担当者であったソニー・ヴァッカロをマット・デイモンが、同社 CEO のフィル・ナイトをベン・アフレックが演じています。マット・デイモン、この役のために見事な中年太り体型になっていて役作りにしたってすごい。
今でこそバッシュで圧倒的な認知度を誇るナイキですが、当時はランニングシューズブランドとして認知されており、バッシュではコンバース、アディダスに次ぐ三番手。それがマイケル・ジョーダンのプロデビューのタイミングを狙って新規契約選手をジョーダン一本に絞り、「エアジョーダン」のブランドまで立ち上げて資本を集中投下することで大逆転を果たした…というサクセスストーリーです。弱小ブランドが一点突破で競合ブランドをひっくり返すというのはマーケティングの王道で、ビジネス映画としてもお手本になるような話。でもタイミングや巡り合わせも含め全てが噛み合って伝説級の成功が収められることって短くても十年に一度レベルなのが現実です。
エアジョーダンの誕生後、ペニー・ハーダウェイ、シャキール・オニール、グラント・ヒルといった NBA の有名選手の名を冠したバッシュが相次いで発売されましたが、引退後にもシリーズが継続しているのはエアジョーダンのみ。最新モデルはエアジョーダン XXXVII（37）で、八村塁がエアジョーダン XXXVII の八村塁モデルを着用していたりもします。これが「ナイキの八村塁モデル」ではなく「エアジョーダンの八村塁モデル」というあたり、もはや「エアジョーダン」がナイキの中でも独立したバスケットシューズブランドとして確立している証拠です。
映画は「弱小だったナイキがどうやってジョーダンとの契約を獲得したか」がストーリーのキモ。大学時代にはアディダスを愛用し、当初はアディダスとの契約を希望していたというジョーダンの気をソニーがどうやって変えていったかが描かれます。とはいえジョーダン本人は映像にはほとんど登場せず、契約の主導権を握っていたのは主にマイケルの母デロリス。彼女との関係性構築と、あとは投資を渋るナイキ社内をどう説得していったかを中心に描かれます。ソニーとフィル CEO はナイキ創業時からの間柄ということでこの二人のやりとりが何度も登場するのですが、そこをマット・デイモンとベン・アフレックの阿吽の芝居で見せてくれるのが面白い。あとはジョーダンとの契約に至る場面でのソニーの演説めいた発言と、明晰なビジネスパーソンであり賢母でもあったデロリスの言葉が心に刺さりました。
物足りなかった点があるとすれば、肝心のシューズ開発の場面がやけにあっさりしていて「開発秘話」という感じではなかったところですが、本作の軸はそれよりもビジネスの駆け引きにあります。ナイキやコンバース（2003 年にナイキが買収）はともかく、アディダスがロゴも含め実名で登場したのには驚きました。だって劇中ではけっこう皮肉っぽい描かれ方をしているんですよ（笑。
私はエアジョーダン 1 はリアルタイムではありませんでしたが、スラムダンクとともにエアジョーダンシリーズのファンになった一人としてはとても楽しめました。派手なアクションはないけれど、映画の二時間という尺を使ってストーリーをじっくり見せてくれる良い作品だったと思います。それほど話題作というわけではありませんがシアターがほぼ満席だったことにも驚きました。ちょうど『THE FIRST SLAM DUNK』がヒットした直後というタイミングも良かったんですかね。
スポーツギアといえば、プロデビュー以来ずっとアシックス（グローブやシューズ）とデサント（ウェア）のサポートを受けてきた NBA の大谷翔平が先日の WBC からニューバランスにスイッチしたことに個人的には衝撃を受けていました。WBC での大活躍を分かっていたかのようにニューバランスが大量に広告を投下していて、もしかすると WBC で最も得をしたのはニューバランスなのでは？と思ったほど。ニューバランスといえば国内ではカジュアルシューズのイメージが強いですが、これを機にリアルスポーツ路線を強化していくのでしょう。この映画を観ながら、大谷翔平のブランドスイッチの裏にもこういうストーリーがあったに違いない…と考えてしまいました。
こないだエアジョーダン 1 と迷った挙げ句にエアマックス 90 を買ったところなんですが、またエアジョーダン 1 が欲しくなってきちゃったなあ。
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