今日は将棋界では藤井聡太棋士が史上最年少での七冠を達成したことが話題でしたが、私はというとチェスを題材にしたドラマを観ていました。
三年前に配信された Netflix オリジナルドラマです。存在は知りながらも今まで観たことがなかったのが、最近になって複数方面から立て続けに「めっちゃ面白い」という話を聞く機会があったので。配信で話題になる洋ドラは数あれど、ゲーム・オブ・スローンズのような長編シリーズだと手を出すにも気合いが必要です。でも本作は各回約 1 時間×7 本のドラマということで手を出しやすかったのも観てみた理由。
孤児院で育った少女がチェスの天才的な才能を見出され、世界の頂点に上り詰めるサクセスストーリーです。
舞台は冷戦下の 1950~60 年代。事故(無理心中)で母を失い、養護施設で育ったエリザベス・ハーモンは施設の用務員シャイベルと地下室でチェスに興じるのが日課となります。しかしあっという間にシャイベルよりも強くなったベスの才能を発見した人々に引き上げられ、州チャンピオンからやがては全米チャンピオンに。そして最終的にはチェス界に絶対王者として君臨していたソビエトのボルゴフに挑んでいく…という話。幼少期から向精神薬やアルコールに依存し、養父母との微妙な関係に翻弄され、チェスの仲間やライバルとの距離感も移り変わりながらものし上がっていくベスの成長が描かれます。ある種『3 月のライオン』で見たことがあるような部分がありながらも、精神的な危うさを感じさせるベスの姿にはハラハラさせられ、次にどんな展開になるのか(チェスだけでなく生活や人間関係面でも)気になってしまうドラマでした。
私は将棋はやったことがあるけどチェスは正確なルールを理解していない(駒の種類と、将棋とは違い駒を再利用できないということしか知らない)のですが、本作は将棋の基礎知識さえあれば雰囲気は理解できますね(笑)。ちなみにタイトルの「クイーンズ・ギャンビット」とは将棋でいう居飛車や振り飛車のような定跡の一つ。でもこれ題材が将棋でタイトルが『居飛車穴熊』だったらこんなにカッコ良くなってないな(ぉ
チェスのルールを知らなくても、チェスを指すシーンのカメラワークやカット割りは格好良いし、特に早指しをするシーンは劇伴音楽も相まって緊迫感がある。ドラマ性と演出を重視してチェス未経験者でも楽しめるようにという配慮からか、脚本自体もチェスの中身にあまり触れてこないので前提知識がなくても楽しめます。ベスが精神安定剤やアルコールで意識が朦朧としてくると天井にチェス盤が見え、それでシミュレーションをする演出が本作の象徴的な見せ方ですが、そういえば私も幼い頃はなかなか寝付けないと天井を見つめながらあれこれ考えてたなあ…というのを思い出しました。あの映像からそういう経験を連想する人は少なくないんじゃないでしょうか。
かつてのライバルが後に仲間になり、さまざまな出会いが最終的に主人公に力をくれる、という演出はなんかジャンプマンガを見ているような気分でしたが(笑)、囲碁将棋や各種スポーツでも言われるように、自分自身を晒してぶつかり合った相手とは不思議な相互理解が生まれるということでしょう。精神戦であるチェスのようなゲームならなおさらだと思います。個人的には、冷戦のさなかにあってもアメリカ人のベスとソビエトのチェスプレイヤーたちとの間にさえ互いに深い敬意が生まれる描写が印象深かったですね。
ゼルダも進めたいしガンプラも組み立てたいのにほんの二日ほどでイッキ見してしまいました。面白かったです。
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