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カメラホリック レトロ Vol.3 「オールドレンズ・バトル」

すっかりこの季節の風物詩となったオールドレンズ本、今年も購入しました。

澤村徹 / カメラホリック レトロ Vol.3

『カメラホリック レトロ』の第三弾…のはずなんですが、もはやシリーズムックとしてのタイトルよりも「オールドレンズ・バトル」というサブタイトルの方が前面に(笑。それくらいオールドレンズ本としての新しい切り口を開拓していきたい顕れとみました。

そのサブタイトルのとおり、メイン特集はオールドレンズ・バトル。紙面の大半を使って標準焦点域(50mm 前後)のオールドレンズの多くを比較し、新旧のオールドレンズの銘玉の違いを知れるものになっています。これまでのオールドレンズ本は多くが各レンズの個性について語っていて、複数のレンズを横並びで比較した例はあまりなかったように思います。まあそういうのは各レンズが現行商品だったときに散々やられているだろうし、「みんな違ってみんないい」、数字上のスペックは同じでも描写の違いを楽しむために複数本使い分けてこそオールドレンズ趣味なんだという側面は確かにありました。でも似たようなスペックのオールドレンズの山の中から自分はどれを買うべきなのか…という指標がなく難しかったのも事実。そういう意味で、この特集は非常に参考になります。

特集は責任編集たる澤村徹氏と上野由日路氏の対談形式で進みます。個性の違う二人の変態(誉め言葉)の応酬は、むしろ「バトル」ってこの二人のトークバトルを指しているのでは?と感じるほど(笑。
まあレンズの評価って一元的に決まるものでもないので、好みの異なるオールドレンズのエキスパートお二人それぞれの観点から語ってもらえた方が「このレンズは自分の好みに合っているかどうか」が判断しやすいというものです。

それぞれのレンズに対する論評も表現がぶっ飛んでいて面白い(笑。
最近の澤村さんの著書、以前よりもキャラの濃さを前面に出してきていてコピーライティングがラノベ的だったりポエム的だったり、そういう視点でも楽しい。

サブ特集は「擬態するオールドレンズ」。カールツァイス・イエナに代表されるようにオールドレンズはメーカーの事情や都合によって同じ製品でも微妙な仕様違いが存在したり、販路によって名前が異なったりします。本特集はそういうのをまとめたもの。
↑はツァイス・イエナがかつて製造していた大口径標準レンズ「Flexon 50mm F2」ですが、マイナーチェンジ後は「Pancolar 50mm F2」にリネームされています。私は Pancolar は知っているけど Flexon は知らなかったなあ!両者の差分は鏡筒デザインとコーティングの違い程度で、他のツァイス・イエナ製レンズでもそのくらいのマイナーチェンジならば名前は変えないのが普通なのですが、このリネームにはどういう意図があったのでしょうか。こういうのを見るとあえてマイナーな Flexon の方を使ってみたくなります。

さらにオールドレンズを使った赤外線写真のコーナーも。近年の澤村さんはオールドレンズと同じくらい赤外線写真に熱中されていますが、ものすごく印象的な写真が撮れるけど普通の写真とは世界観が違いすぎて私は遠巻きに眺めていました(笑。でも独特な描写ゆえに、癖のあるオールドレンズとの相性がものすごく良いんですね。改めてこちらの世界も面白そう…いやいや、まだ行かないぞ(笑。

デジタルで楽しむオールドレンズ趣味もごく一部の好事家のものだった時代から数えてかれこれ十数年経ちましたが、まだまだこんな切り口があるのかと驚かされる一冊でした。いやはや、やはり底が知れない「沼」がありますね。ミラーレスの最新レンズを追いかけるので精一杯になっている最近の私がちょっと恥ずかしくなりました。

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