Golden Week は Get Wild、ということでゴールデンウィークに向けて配信開始された Netflix オリジナル映画を鑑賞。
北条司の人気コミック『シティーハンター』の実写化です。実写版シティーハンターというと五年前のフランス版が完成度高かっただけに、あれを超える実写化はハードル高いぞ…と思っていたら完全に杞憂でした。
舞台は現代の東京・新宿。原作当時とは違って誰もがスマホを持っているし、西口の都庁は開業して二十年以上経ち、歌舞伎町もコマ劇がなくなって TOHO シネマズになって久しい。基本的にはそういう現実の世界観にアップデートしつつ、新宿駅の伝言板だけはまだ健在という設定。まあ「XYZ」から始まらないとシティーハンターとは言えませんからね。またシナリオ的にも歌舞伎町の「トー横キッズ」問題や SNS、コスプレイベントなど現代の社会現象をうまく織り込んで、現代の新宿に冴羽獠が本当に存在しそうな空気感を作り上げています。
物語は獠の相棒・槇村(兄)の死から香との出会い、そこに端を発する人間を狂戦士に変える麻薬「エンジェルダスト」を製造する組織「ユニオン・テオーペ」の末端との戦い、そして香が新たなパートナーとなるまでが描かれます。原作コミックだと 1 巻の 6・7 話くらいでごく序盤も序盤といったところ。でも原作そのままではなく 100 分の映画になるよううまく膨らませてあり、原作を知っていても共通点や差分を見つける楽しみがあります。個人的には槇村の死のシーンはやっぱりこういう演出だよね!!!と嬉しくなりました。
それにしても圧巻だったのが主演の鈴木亮平ですよ。別に顔が似ているわけでもないはずなのに、スクリーンの中には姿形から立ち居振る舞いに至るまで実写化された冴羽獠が存在していました。絞り込まれた逆三角形の肉体、リアリティーがありつつも惚れ惚れするような銃捌き、三枚目に振り切ったギャグパート、そして特にギャグパートの声や話し方がアニメ版の神谷明にかなり寄せてあるところまで含め完璧。以前からすごい俳優だとは思っていたけど、ここまでとは。同じ作品の中で二枚目と三枚目のキャラをここまで大きなギャップで表現できるのは神谷明か鈴木亮平しかいないのではないか、とさえ思います。それでいてギャグパートでも下品になりすぎないところがまた冴羽獠っぽい。
原作愛の強さという点ではフランス版に負けていないのではないでしょうか。それでいて、Netflix 版は現実の新宿を舞台に撮影できているのが強み。二度にわたる劇場版アニメはオリジナルスタッフ/キャストにこだわった結果現代的な感覚とのギャップが大きくなってしまった感が少し残念でしたが、この実写化は異なるスタッフ/キャスト(実写版だから当然ですが)にも関わらずアニメ映画版のクオリティーを超えていると感じました。
唯一残念だった点を挙げるとすれば、ED がアニメ版と同じシーケンスで Get Wild へ繋がるところまでは良いのですが、新録された『Get Wild Continual』の宇都宮隆の声がさすがに当時からみるとパワーが衰えて聞こえる点でしょうか。個人的には旧音源のリミックス or リマスター版でも良かったように思います。
ストーリー的にはまだまだ続編が作れそう、というより香がパートナーになってむしろこれからが本編という感じなので、世界的なヒットを受けて続編の企画も進むことでしょう。続きも楽しみにしています。
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