サンライズが 1/3~5 限定で『イデオン』劇場版二作品を YouTube で無料配信中とのことで視聴しました。
アニメ『伝説巨神イデオン』 接触篇/発動篇が本日20時よりYouTubeで無料配信 – 電撃オンライン
富野由悠季(喜幸)監督の傑作とも問題作とも言われる本作。ガンダムにおけるニュータイプ思想へのひとつの結論が示されていると言われつつも、私は今まで観たことがありませんでした。作品の内容以上に「全滅エンド」という結末の方が有名だから観るまでもないかなとも思っていたのですが、無料配信中なら良い機会かと。
地球人が自分たちとよく似た姿形の異星人と遭遇し、発掘された謎多きロボットを駆って戦う…という序盤のプロットは『ターンエーガンダム』とよく似ています。そのロボットには旧文明のテクノロジーが隠されていて、最終決戦でその力が明らかになる点も含めて酷似。でも作品全体に流れる空気感と結末は真逆で、そういう対比で見ると非常に興味深いものがありました。台詞回しは定番の富野節だし終盤の戦闘シーンは『逆シャア』の感じともよく似ている。確かにこれは富野作品の一つの到達点と言えます。
ニュータイプとは「誤解なく分かり合える人々」というのがファーストガンダム時代における定義でしたが、人間は個人単位では分かり合うことができても国家や民族といったレベルで分かり合えることはなく、戦争を繰り返して行き着くところは全滅しかない、しかし人が死んで肉体やさまざまなしがらみから解き放たれたときに初めて分かり合うことができる…というのが『イデオン』におけるニュータイプ論(本作では「ニュータイプ」というワードは登場しませんが)だと理解しました。このあたりの思想はゼータや逆シャアにも継承されていますよね。1970 年代末に人類の相互理解への理想を掲げ、1980 年代にはそれは幻想だったことに気づくあたり改めて富野監督は隻眼だなあと思います。
ちなみに『UC』の原作者福井晴敏氏は富野作品の最高傑作として本作を挙げているようですが、言われてみればユニコーンタイプやシナンジュに搭載されている「インテンション・オートマチック・システム」は本作からの引用だし、UC の終盤の展開なんて半分はイデオンへのオマージュのように見えました。もっと言えばターンエーのノベライズ『月に繭 地には果実』の終盤は UC 以上にイデオン的展開。そりゃあサンライズから富野由悠季の後継者と目されるわけだ…。
ともあれ、本作を経てのちのガンダムシリーズが作られたことを考えるとガンダムシリーズと相互に与えた影響は計り知れないものがあり、中でも特に『逆シャア』『UC』『ターンエー』あたりの作品とイデオンはお互いが補助線となって作品への理解を深めてくれます。
ちなみに本作の CV は多くがファーストガンダムと共通のキャストで、そっちのイメージが染みついている私は違うキャラから知っている声が聞こえることでちょっと脳がバグりそうになりました(笑。また当時のロボットアニメとしては珍しい(?)オーケストラによる大きな劇伴、スケールが大きいのにどこか耳馴染みがある…と思ったら作曲はすぎやまこういち氏なんですね。スタッフロールを見て妙に納得してしまいました。
私はどちらかというとガノタとして「履修」しておかなくてはという気持ちで視聴しましたが、それでもクライマックスで引き込まれてしまったのはさすがの富野作品ですね。後年のガンダム作品を知っている頭でイデオンを観て感じるものもあったけど、本作を観た後で他のガンダム作品を観たらまた新たな発見があるのかもしれません。
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