秋からの流れで鑑賞したクリント・イーストウッド作品。こちらは出演作ではなく監督作ですが、劇場公開当時から非常に評価の高い映画だったので(アカデミー賞を受賞していれば当然か)、観てみたいと思っていたのでした。
ある殺人事件をきっかけに 25 年ぶりに再会した幼なじみの 3 人。事件の犯人は誰なのか?そして、真相究明に絡んでくる 25 年前の別の事件…そんなストーリー。そして、とても重たいストーリーです。
救いのなさで言えば同監督の『許されざる者』に並ぶくらい、登場人物の誰も浮かばれない話じゃないでしょうか。人間が背負った罪と、逃れられない生き方、結末、世の中の無情。ここまで数作を鑑賞してきて、それらこそがイーストウッド監督作品の真骨頂なんだろうな、と思います。正直言って、エンドロールの後にスッキリした気持ちになれる作品ではありません。子を持つ親として「登場人物の子が殺人事件の被害者になる」という物語を観るのが精神的につらい、というのもありますが。
「もしあのとき●●●たのが自分でなかったら」というような、偶然と選択の積み重ね。それが人生。
かつて同じ場所にいて同じことをやっていた幼馴染みと 25 年ぶりに再会してみたら、今の自分とはあまりにも生きている世界が違いすぎて愕然とした、という経験は、ある程度の年齢を重ねた人であれば一度は経験したことがあるんじゃないでしょうか。それぞれの偶然や選択を悔やんでもしょうがないけど、その積み重ねが結果としてこのギャップを生み出したわけで、その違う偶然や選択の先を空想してみたくなるのも、また人間です。この映画は、そうではない現実、最終的に誰も幸せにしないことで…強い者はそのまま強く、弱い者はさらに弱く、という結末を描くことで、現実の冷酷さを淡々と描いています。
もともとこの作品は小説の映画化ということですが、回収しきらない伏線だったり説明不足だったり、かなり余白の多い作品だと感じました。でも、その余白があることで、何とも言えない複雑な後味を残しています。正直言って、あのとってつけたラストシーンはある意味残酷だと思うし、見終わった後になんだか気持ちが沈み込んでしまいました。逆に言えば、静かだけどそれだけ強い力を持った作品、ということでしょうね。
でも、繰り返し観たいかと言われればしばらくいいや(笑)。次は、もっと優しくて暖かい気持ちになれる映画が何か観たくなりました。
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