昨年はフェルスタッペンとハミルトンが異なるタイヤ戦略で激戦を繰り広げたフランス GP。ドライバー、マシン、チームの総合力でメルセデスに勝ったという意味では昨年のレッドブル・ホンダのベストレースだったと思っています。レッドブルとフェラーリのマシン性能が拮抗する今年も同じようなレースが見られるのではと期待していましたが、首位走行中のルクレールの単独クラッシュによってフェルスタッペンにとっては簡単なレースになってしまいました。
■フェラーリ
サインツは PU 交換ペナルティーによって最後列からのスタート。それを逆手にとって予選ではルクレールにサインツのトウを使わせ PP 獲得。それでも決勝では直線スピードに勝るレッドブル優位ではと思っていたらレッドブルの方がタイヤライフが短かった。フェルスタッペンが耐えかねて先にピットインした矢先、ルクレールがコースアウトしてタイヤバリヤに激突、そのままレースを終えてしまいました。マシントラブルではなくルクレール本人のミスとのことですが、今季のクルマは速度変化や風によるダウンフォースの変動が大きくコーナリング中に姿勢を乱す事例が少なくない(シルバーストンでの角田裕毅のクラッシュもそうでした)からそういうことなんですかね。
いずれにせよ、ルクレールは今回もやすやすとフェルスタッペンに 25pt を献上してしまいました。これでポイント差は 63、ルクレールが 2 勝してフェルスタッペンがノーポイントでもまだ追いつけないことになります。次のハンガリーはフェラーリ有利と予想していますが、もし次もフェルスタッペンが勝つようならチャンピオンシップは事実上決着となりそう。
■レッドブル
ルクレールの自滅によって棚ぼたを拾ったレースでしたが、こういうのこそがディフェンディングチャンピオンの強さ。今シーズンはこれで 12 レース中 7 勝、この勝率を見るだけでももうチャンピオン防衛の資格は十分にあると言えます。
心配なのはペレスですね。予選こそ P3 を獲得したものの決勝ではルクレールとフェルスタッペンについていけず、むしろメルセデスに捲られるレースでした。終盤にラッセルにポジションを奪われたのは VSC 解除にまつわる FIA 側の不具合が原因でそれはただの不運でしたが、レース全体を通してフェルスタッペンほどのペースがありませんでした。シーズン序盤にあった遜色ない速さが陰りを見せているのは、RB18 のマシン開発が進んでフェルスタッペンに最適化された結果ペレスにとっては乗りにくいクルマになりつつある、ということなんでしょうか。
いずれにしてもこのままいけばレッドブルのダブルタイトル獲得は確実とみて良いでしょうが、気になる点ではあります。
■メルセデス
ついにクルマの弱点を克服した印象のあるメルセデスがフェラーリの自滅と終盤のラッキーもあって 2-3 フィニッシュを果たしました。開幕からずっと 3~5 位のどこかにメルセデスが一台は入っている、という感じで三番手チームの位置にはあったけど、二台が揃って速いという印象はありませんでした。でも今回は二台とも力強い走りで「フェルスタッペンとルクレールには勝てないけどペレスやサインツとは戦える」状況になってきたように見えます。最近取りこぼしの多いフェラーリに対してメルセデスは安定して得点を重ねていて、もし今後もフェラーリの信頼性が変わらないようならシーズン終了時点でメルセデスが二番手につけている可能性だってある。見ていてドキドキ、ヒリヒリするのはやっぱりレッドブル vs. フェラーリよりもレッドブル vs. メルセデスなんですよね…。
■アルファタウリ
待望のアップデートがようやく導入されました。効果があったことは角田裕毅が予選 Q3 に進出して 8 番グリッド獲得したことからも分かります。ただガスリーはこのアップデートをまだ掴み切れていないようで Q1 敗退(これは黄旗のタイミングも関係したようですが)、全体的に今年の AT03 は角田の方が適性があるように思えます。
期待した決勝はスタート直後に角田がオコンに追突され、しばらく最後尾を走っていたけど結局ダメージが大きくてリタイヤ。ホームグランプリだったガスリーは 12 番手までポジションを上げたものの入賞には届きませんでした。ここ数戦噛み合わないレースが続いていますね…角田・ガスリーともにポイントが獲れないことに対する焦りみたいなものも見え隠れしますが、アップデートによって入賞が狙えるところには戻ってこれたはず。チーム・ドライバーともに落ち着いて週末を組み立てることに集中してほしいですね。
■岩佐歩夢(F2)
ダムスで F2 を戦っている岩佐がついにフィーチャーレース初優勝。おめでとう岩佐!!!
一発の速さもクレバーさも持っていて、優勝は単に経験と時間の問題だろうと思っていましたがなかなか全ての条件が揃わないレースが続いていました。しかし今回は予選 2 番手を獲得、1 周目にトップに立つと完全にレースを支配して独走状態で初優勝を飾りました。タイヤマネジメントも含め岩佐の強みがいかんなく発揮されたレースで、この経験をもとに勝ち方を覚えることができればシーズン後半(といってもあと 4 戦ですが)はさらにチャンスがあるのではないでしょうか。2024 年の F1 昇格を目指してこの調子で経験を積んでいってほしいところです。
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