今月末に発売の迫った EOS 5D Mark III を触りに、品川のキヤノン S タワーで開催中のイベントに行ってきました。
特別体験会「EOS 5D Mark III SPECIAL EXPERIENCE」、全国5都市で開催 – デジカメWatch
3 年半前に開催された 5D Mark II のイベントを彷彿とさせる、というかほぼそのまんまに近い建て付けのイベントで、ちょっと懐かしくなりました。でも、当時はフルサイズ機は憧れではあるものの、ウデも未熟だし手の届かない存在・・・だったのが、今や周囲に 5D2 を持っている人もかなり増えてきて、フルサイズの画を目にする機会も増えてきたし、いろんな人から「5D3 買わないの?」と聞かれるようにもなり、具体的に視野に入れても良さそうかな、とまでは思えるようになりました。まあ、5D2 より初値が高くなっている分、より手が届かない存在になったとも言いますが(´д`)。
5D Mark III とご対面。ぱっと見では、確かに 5D Mark II の後継にも見えますが、超流体デザインに包まれたボディは 7D の流れを汲んでいるようにも見えます。聞くところによると、実際に 5D3 の開発には 7D の開発に携わったチームからも多くのメンバーが加わっているとのこと。後述しますが、5D3 は単にデザインテイストだけではなく、全体として 7D 的な要素が散りばめられた機体に仕上がっていました。
ペンタ部の形状はこんな感じ。直線と曲線の組み合わせが絶妙だった 5D2 に比べると、7D っぽい曲面主体のデザインになっていて、ここは好き嫌いが分かれるところかもしれません。でも私は 7D からそのまま内蔵ストロボを取り払ったようなこの形状には全く違和感がないどころか、7D から買い換えてもバレ・・・おっと、誰か来たようだ(ぉ
電源スイッチは 7D 同様、モードダイヤルの下に移動してきました。従来のようにロックスイッチを兼ねてサブ電子ダイヤルの下にあるよりは、こっちのほうが使いやすいと思います。
また、モードダイヤルも 5D2・7D で途中から有償オプション(サービス対応)として追加になったロックスイッチつきのタイプに変更されています。モードダイヤルが気づかないうちに回っていて、知らず知らずマニュアルモードで撮影してしまっていて後から愕然とする・・・という事故を私も何度か経験しているので、これは歓迎。
シャッターボタン周辺。デザインテーマや各種ボタンの形状、表面処理などは 7D と共通のものとなっています。またシャッターボタン脇に M-Fn ボタン(アサイン可能なボタンで、デフォルトでは電子水準器の表示に割り当て)が追加されているのも 7D 同様。
逆に 7D との違いとしては、ISO 感度変更ボタンに凸モールドが追加されて、手探りでも判別できるようになっています。これ 7D では咄嗟に ISO 感度を変更したいときに困っていたところなので、羨ましいですね・・・。
肩の部分にあるモノクロ表示パネル。EOS 二桁以上の機種ではほぼ共通になっているパネルですが、CF/SD のデュアルスロットになった 5D3 ではそのあたりの表示が増えています。また連写モードの表示に「S」という文字が出ているのは、静音撮影機能(シャッター音を抑えて撮影するモード)が有効になっていることを示しています。
このサイレントシャッターがけっこう面白くて、通常のシャッター音は「シャキン、シャキン!」という金属的な音(7D や二桁機の「パカン、パカン」という乾いた音とは根本的に異なる)でそれだけでも写欲をそそる音質なのですが、静音撮影オンにすると「トシュッ、トシュッ」というライフルにサイレンサーをつけたような音質(といっても、私も映画とかでしか聞いたことがないのですが(笑))で、これはこれで痺れる音。サイレントシャッターにすると 3 コマ/秒 まで連写性能が落ちてしまいますが、イベントなどでシャッター音を響かせたくないシチュエーションで重宝することは間違いないと思います。
レンズの絞り込みボタンは正面向かって左下に移りました。これは 7D とも違うところで、通常はマウントの向かって右下についているものですが、このマウント左下は実はαと同じ位置になるんですよね。レンズのズームリングやピントリングを操作しながら絞りをプレビューしたいときに、レンズを支えつつリングを回さなくてはならない左手親指よりも、空いている左手薬指で押せるこの位置のほうが合理的に感じます(αの場合は、マウント右下には AF モード切り替えダイヤルがついている、という事情もありますが)。
と思ったら、クマデジタルさんはむしろ「右手薬指で押すのがすごくしっくり来ます」とのこと。まあ、手の大きさや好みによって扱いやすい配置になったということで(笑
ちなみにグリップの感触は 5D2 よりも 7D のほうに近いような気がします。グリップに限らずボディ全体の形状やゴムの巻き方まで 7D によく似ているので、7D から 5D3 に持ち替えてみてもほとんど違和感がありません。これはやばい(^^;;
背面はこんな感じで、形状、ボタン配置、アイカップの形状(これは 1D 系と共通)なども含め、5D2 よりも 7D に似ているどころか、まるで双子のようにそっくりです。もう 7D ユーザーとしては全く違和感なく操作できてしまいます。
唯一異なるのはサブ電子ダイヤルの左上に Q(クイック設定)ボタンが移動し、液晶左側のボタン配置が整理されて画像再生時の拡大率変更とレーティングを行うためのボタンが追加されたこと。Q ボタンは確かにこの位置にあったほうが素早く操作ができるので歓迎ですが、RATE ボタンはともかく拡大ボタンがここに引っ越してきたのはちょっと使いにくそうだな、と思います。
サブ電子ダイヤル。7D にあったシルバーリングのアクセントがなくなってデザイン的に寂しくなった・・・のはそんなに重要ではありませんが、その代わりに 5D3 ではこのサブ電子ダイヤルに静電式タッチパネルが仕込まれています。何を言っているのかわからねーと思うが(ry)動画撮影時の設定(絞り値や露出・・・動画の場合はゲインといったほうが正確か)を変更するのに使います。上下で絞り値とゲインのどちらを変更するかを切り替えて、左右で設定のアップダウン、という使い方になります。動画だとダイヤルの操作音をマイクが拾ってしまう場合もあるはずなので、このあたりはキヤノンがどれだけ 5D3 の EOS MOVIE を重視しているかということの顕れでしょう。5D2 の出始めの頃の扱いからは考えられないことです(笑。
そのサブ電子ダイヤル内蔵タッチパネルの設定は、設定画面の中で「動画サイレント設定」を有効にすることで機能します。機能名からして「動画サイレント」なので、本当に動画撮影時にしか使えません。まあスチル撮影時に多用するサブ電子ダイヤルを触っただけで撮影設定が変わられちゃあたまったものではないので、それもそうか、というところなのですが、逆に言えば動画撮影だけのために 5D3 の全個体にこのタッチパネルを内蔵した、というのは実はすごいことなんじゃないでしょうか。61 点 AF センサなど 1DX 譲りの機能満載ということよりも、このことのほうが 5D3 の位置づけを象徴しているような気さえします。
ちなみにこれだけ多機能なカメラなので、設定画面は 7D よりもメニューが増えてかなり複雑になったと感じました。どの機能を使うかはユーザー次第なので全ての機能を知悉する必要はありませんが、使い切ろうとするととても大変なカメラであることは間違いありません。
5D3 の新機能でいえば、もうひとつ気になっていたのはレーティング機能。再生中に RATE ボタンを押すことで、トグル式に★1~5 まで(もしかしたら 0~5 までだったかも)をつけることができます。が、構図はともかくピントが厳密に合っているかどうかは本体液晶では判別しきれないので、この機能がどこまで実用性があるかはちょっと未知数だと感じました。
総括として、5D3 はフルサイズ機としては 5D2 の延長線上にありながら(7D ユーザーとしてはフルサイズの光学ファインダは何度覗いても感動しますね)、スチルカメラとしての機能性は 1DX の弟分的だし、カメラ全体としては 5D2 の進化形というよりもむしろ「フルサイズ化した 7D」と言ったほうがいいくらい、7D のデザインや操作系をブラッシュアップしたカメラという印象です。正直なところ、実機を見るまでは「どうせ高値の花だし・・・」と思っていたのが、今は資金繰りの算段をしようとしているという(笑)、それくらい高い完成度を持ったカメラだと思います。
なお、このイベントはいち早く実機のタッチ&トライができることがウリなのはもちろんですが、それ以外にも多くの写真家や映像作家、あるいは開発者の方々によるセミナーも見どころ。私はおなじみのサイカ先生、こと駿河台大学メディア情報学部の斎賀和彦教授のセミナーを今回も聞いてきました。
進行は、先日の CP+ の際のセミナーにはインフルエンザで出演できなかったという、玄光社ビデオ SALON の一柳編集長。
内容的には、CP+ 時のセミナーの 5D3 版といった感じで、EOS MOVIE における 5D3 と 5D2 の性能比較が中心でした。
5D2 の ISO12800 よりも 5D3 の ISO25600 のほうが圧倒的に明るくて低ノイズなのがプロジェクタ越しに一目見るだけでも判るというこの戦力差。ISO12800 でさえ通常はそう使うことのない感度ですが、超高感度の画質がいいこと自体が重要なわけではなくて、超高感度の画質が良ければ一般的な高感度帯の画質がさらに良くなるということなので、多くの人にとってメリットはあるはずです。ムービーだけでなくスチルにも同じことが言えるでしょうし。
CP+ のセミナーでも、5D2/1DX/C300 の判りやすい比較映像が印象的だった、動画のモアレの比較(顔が見切れちゃってますがモデルは紗々さん)。こうして見ると今まで十分きれいだと思っていた 5D2 の EOS MOVIE のアラが目立ちますね・・・。
今回のセミナーでは 5D3 と 1DX、C300 の比較はありませんでしたが、前回のセミナーの映像も含めて総合的に判断すると、5D3 の EOS MOVIE は画質だけで言えば 1DX のそれとほぼ同等のクオリティに仕上がっていると言って差し支えないのではないでしょうか。センサの高感度性能も拮抗するレベルのようですし、違うのはハードウェアに起因する成功率=歩留まりの高さ程度なんじゃないかと思います。まあ、プロにしてみればその歩留まりこそが生産性を左右する最重要項目ということなのでしょうが、趣味なら(本気で、というのはさておき)5D3 でも十分すぎる性能を持っていると言えます。
ということで、サイカ先生お疲れさまでした。例によってレベルの高い内容で、動画撮影・編集の知識とカメラの技術的な知識がある程度以上ないと難しいセミナーだったと思いますが、周囲を見渡すとプロと思われる人(ちらほら聞こえてきた会話の内容から間違いないと思われる)が多数聴き入っていたのが印象的でした。実際、それだけの価値はある内容だったと思います。
ということで、イベント終了後はサイカ先生の慰労会を兼ねて急遽 EOS ヒトケタ友の会発動。そのまま品川駅港南口のアウトバックで肉の会を開催してきました。相変わらずボリューミーで美味しかった。
来場記念品として、「EOS 5D Mark III スペシャル BOX」をいただいてきました。5D2 のイベントの際にも同様のものをいただいたんですが、今回もお金かかってます。写真家の野町和嘉氏、米美知子氏、前川貴行氏が 5D3 で撮影(+石橋睦美氏が PowerShot G1X で撮影)した写真集(PIXUS PRO-1 でプリントアウトしたもの)と 5D3 のカタログ、および EF レンズ/アクセサリーカタログ、1DX カタログ、PIXUS PRO-1 のカタログの詰め合わせ。箱からして豪華なのが、5D3 のイベントに来る客層のココロを解っていると思います。前回のように L レンズカタログが入っていなかったのがちょっと悔しかったですが(笑。
でも、その代わりと言っては何ですが、この 5D3 のカタログは明らかにコストがかかっていていいものです。紙質もいいし、A4 横を横開きならともかく縦開きにするカタログなんて初めて見た(笑。表紙には銀地に白で「5III」としか書いておらず、本体写真さえ載っていないという。これ量販店で配布するのはまた別バージョンになるんじゃないかというくらいお金がかかっているんですが、実際はどうなんですかね?確か 5D2 だか 7D のカタログも、イベント配布用と店頭配布用で微妙にバージョンが違っていましたが・・・。
あと、お土産がもうひとつ。EOS 5,000 万台、EF レンズ 7,000 万本出荷を記念した、EOS&EF レンズを全て掲載したシール(全て個別のシールとして使える)です。こんなの企画する人はどう考えても自社製品マニアだと思いますが(ぉ)、私もこういうのは好きなので、共感できます(笑。ただ、これを貼るべき場所が思いつかないので、コレクターズアイテムにしかなりませんが(ぉ。
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5D3 ボディ単品は最安値で 32 万円前後からのスタートになるようですね・・・。
コメント
CP+に引き続き、ありがとうございました。
>写真家の野町和嘉氏が 5D3 で撮影した写真集
ふふふ、開けてないでしょ(笑)
開けて見ると・・・・
今回もお疲れさまでした。
実は微妙にもったいなくてまだ開けてなかったんですが・・・あっ!
しかしこれだけ綺麗な写真&プリントだと、A3 以上で見たくなりますね。
多分、カノ方は7Dとの見分けが付きませんぜ、旦那(^^)黒くてデカいっていう印象だけですぜ。
いや、それが以前キスデジ買ったときには目ざとく気づかれてしまったので、以外と侮れないという(^^;;