「間違いなく、トウガラシが国王。全ての食材がトウガラシのために働いている」
ドラマ『孤独のグルメ Season5』聖地巡礼も順調に回ってきていますが、今回は先週放送されたばかりの代々木上原、ブータン料理の聖地に来てみました。
代々木上原自体にも久しぶりに来たんですが、劇中にもあったとおりここは坂と路地の街。比較的大きな駅のはずなのに、ロータリーとか広場的なものはなく、駅を出たところからいきなり上り坂が始まります。この坂がまた、実に走りたくなる坂である(ぉ
南口の坂を登り切ったあたりにちょこんと存在するのが、都内には一軒しかないというブータン料理の店「ガテモタブン」。
ブータン料理…俺の胃袋の辞書にはない国だ。
ブータン料理は世界一トウガラシを使う料理とのこと。激辛回としてはこれまでにも池袋の楊、京成小岩の珍々、神宮前のシャンウェイなどが登場しましたが、映像を見た限りでは今回が歴代最辛と言って良さそう。辛い物好きを自認する俺だけど、今回ばかりは食べきれるんだろうか。
一期一会、ブータンが俺を呼んでいる。
ゴローちゃんが翻弄されたメニューの実物はこんな感じ。
「ホゲ」「ギュン チャン パ」「ツェム」…雲をつかむような料理名だ。
ブータン料理、イメージが全く湧かない。写真がついてなければオーダーすることさえできなかったに違いない。
黒板メニューにも、気になるものがいろいろ。「ポークスペアリブ山椒風味」とかスッゴク食べてみたいけど、この日はあいにく売り切れでした(´д`)。
そして「エマオムレツ」ってこの店にしちゃあ優しそうな料理だな…と思ったら、これにも唐辛子入り!
ゾンカ語(ブータンの公用語)では「エマ」はトウガラシの意味らしい。
ワインも気になるけど、唐辛子まみれの舌でワインの味の違いなんて分かるんだろうか…。
メニューを読んてただけで喉が渇いてきた。
とりあえず、ビールで潤そう。
今日はこの後、きっとこのビールが湧水のように感じられるんだろうなあ(笑
まずはモモから。ブータン流餃子。
見るからにモチモチしておいしそうだけど、この複雑な包み方、どうやって作ってるんだろう?
添えられている赤い薬味は「エヅェ」で、モモ自体は辛くないけど、このエヅェが辛い、という。
あと「チーズモモ+チーズエヅェ」がおいしそうだったので、それも。
こっちは餃子というよりは、小籠包みたいな感じだ。
まずは、お手並み拝見。
おぉ…こうきたか。
皮、もっちり。
おっ、トウガラシがジャブを出してきた。
でもうまい。噛むほどに肉汁が。こういう餃子的おいしさがあったか。
メニューを見て、チーズ入りのほうがマイルドに違いないと思ったら、チーズ入りのほうが鋭い辛さ!逆に、ノーマルモモのほうが予想の範囲内の辛うまさ。これは完全に逆を突かれたな。
ホゲ、なんとも情けない名前からは想像できない鮮やかさ。
「ホゲ」って、1990 年代にプログラミングやってた人ならば絶対テストコードに「hogehoge」って入れた経験があるに違いない(笑
サラダ的な位置づけにもかかわらず、山椒がしっかり入っていて、味覚がおかしくなっちゃう感じだ。
ホゲ~ッ!これ、全然箸休めじゃないぞ。
でも、妙にくせになるうまさだ。
いいぞお、ホゲ。
なんだか楽しいぞ、ブータン。
エマダツィ、ブータンの真打ち登場。
赤と緑、まんまトウガラシ。それがびっしり。見た目だけで判断するなら、罰ゲーム的な何かにしか見えない(笑
合わせるのは赤米と白米の二色ライス。
ブータンでは、少量の味の濃いおかずで米をたっぷり食べるのが流儀らしい。
メシに合うトウガラシってことは、そんなに辛くないのか…?
よし、心の準備はできた。
ライスにエマダツィをかけるようにして、いただきます。
この白いスープみたいなの、実は溶けたチーズなのか。このチーズ、濃くてすごくおいしい。
全然、辛くない。もしかして…辛いのは見た目だけ?
ん…ん、なんだ?
おっ、おっ、来たぞ?本気がやってきたぞ…!!
日本では薬味のトウガラシが、まさかの主役。
これは辛い。今まで味わったことのない辛さ、いや辛(つら)さだ。
迂闊にたくさん食べたら、それこそ失神してしまいそうだ。
これを食べた後だと、山椒が強烈だと思っていたホゲが、まさかの爽やかさ。これは箸休めになるぞ。
ホゲ~、おまえがいて、助かった。
続いて久住’s セレクションから、ジャシャパ。
鶏肉とキャベツに、当然のようにトウガラシが入った炒め煮。
これも確かに辛いけど、エマダツィに比べたら全然普通。
鶏肉とキャベツの炒め物なら日本でも一般的だから、ようやく自分の得意な戦場に持ち込めたような感覚で、ちょっと安心(笑
あっという間におかわりしてしまったご飯がさらに進みます。
自家製のレモンチェッロ。ブータン関係ないけど(笑
自家製というだけあって、レモンの酸っぱさ全開。
でも、この辛さの中では、口の中をリセットするのにちょうどいい存在だ。
干し肉のパクシャパ。そのど真ん中に、真っ赤なトウガラシが鎮座。うわあ、いるいる。
干し肉、一見角煮的な柔らかさを想像するけど、食べてみると噛み応えあり。
そして、干し肉のうまみがしっかりしみた大根がうまい。これ、ブータンのブリ大根的な何かか。
あ~、これは…大根の甘みとトウガラシの辛さが、口の中で丁々発止の戦いをしている。
ん~、なんだか、だんだんカラダがトウガラシに慣れてきたような…。
ここで改めてエマダツィを食べてみると、実際さっきのめまいがするような辛さを感じない。むしろトウガラシのうまみを感じるとは…。
まるでロンダルキアについた瞬間にはモンスターに一撃で瀕死のダメージを受けていたのが、はぐれメタルを倒しまくっているうちにレベルが上がったかのようだ(何
タイのウィスキー「メコン」のソーダ割り。
スコッチやバーボンとは全然違うと思ったら、サトウキビと米を原料に、タイのスパイスで香りをつけたものなのか。
これ、合う。ブータン料理にものすごく合う。
「シャダフィン」。見てのとおり、鶏肉と春雨のスープ。そして言うまでもなく、トウガラシ。
中華料理の春雨スープの亜流みたいな感じで、なじみのある味。
とはいえ自分の辛さ耐性が高まった状態で食べているので、実際どれくらい辛いかは不明(笑
「ケワダツィ」。「エマ」ダツィはトウガラシのチーズ煮込みだったけど、「ケワ」ダツィはジャガイモのチーズ煮込み。
エマダツィのチーズがすごくおいしかったので、これの辛さマイルド版があったらいいと思ったけど、それがまさにこれ。
チーズの濃い味がむちゃくちゃうまい。これ、何のチーズを使ってるんだろう?
トウガラシも控えめだし、最初はこれから始めれば良かったかも。
〆は「チョーメン」。ブータン風焼きそば。
これ自体は辛くなくて、パクチー等でオリエンタルな香味をつけた普通のソース焼きそばという感じ。
でも、一緒に出てくる特製ケチャップをかけると、一瞬にしてトウガラシ味(笑
辛い、けど、止まらない!まるでブータンの魔法にかかったようだ。
ブータン料理、日本の味付けとは違う意味で、これ以上ご飯が進む料理を知らない。
今、俺の中で、トウガラシ・パラダイムシフトが起こっている。
胃袋からブラボーの拍手鳴り止まず。
ああ、辛うまかったぁ~っ。
ブータンのトウガラシ愛、食の世界をくまなく照らしている。
ああ、でも、こういう満足感、生まれて初めてだ。
ごちそうさまでした。
ドラマを観た直後は、ゴローちゃんが素の松重豊さんとして本気で辛がっているように見えたので(笑)、これはネタ回的な位置づけで、一回行けば十分かな…と思っていましたが、最後には想像以上にうまかった。ここは、再訪ありだな。
次回来ることがあったら、今度はもう少しスロースターターになるように、順番考えて頼もう(笑
コメント