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ペンギン・ハイウェイ @チネチッタ

この映画、実はちょっと注目していました。

ペンギン・ハイウェイ

台風のノルダ』以来三年ぶりとなるスタジオコロリドの新作です。この夏のアニメとしては『未来のミライ』と比べてプロモーションは地味だしあまり認知されていない感じもしますが、劇場で流れていた予告編を見てけっこう楽しみにしていました。『ノルダ』は脚本はちょっと物足りなかったけど映像は素晴らしかったし、今回は原作つきの長編ということで期待できるに違いない、と。

ストーリーは研究好きの小学四年生「アオヤマ君」が、街にある日突然現れたペンギンたちと超常現象の謎を解くため、仲の良い近所の「お姉さん」と一緒にその研究をしたり、旅に出たりする経験を通じて少しずつ成長していく…というもの。物語の大枠としてはファンタジーでありながらアプローチは SF 的な、いわゆるサイエンス・ファンタジーの体裁を取っています。
このお姉さんがまた、「近所に住む憧れのお姉さんという概念」に歯科助手属性を加えて具現化したような存在で、自分の子ども時代の淡い感情がやたらと刺激される(笑。でもあくまで小学生視点での憧れのお姉さんという描写が徹底されていて、下品な見せ方になっていないのがまたいい。私は完全にアオヤマ君目線で作品に入り込んでいました。自分もアオヤマ君みたいに理屈っぽい小学生だったけど、あんな少年時代を送れなかったのは何故なんだぜ(´д`)。


「お姉さん」役は蒼井優。ちょっとサバサバした感じのハスキーボイスでアニメっぽすぎず、かといって不自然さもなく、自然な「お姉さん」感。なお登場するキャラクターには一通り名前が与えられているのにお姉さんだけは「お姉さん」だし、お姉さんがアオヤマ君を呼ぶときも「少年」。ここだけ不自然に抽象化された表現には何か意味があるんだろうと思ったら…やはりそういうことでしたか。
アオヤマ君の CV は北香那ってどこかで聞いた名前だと思ったら、ドラマ『バイプレイヤーズ』で大杉漣の中国人マネージャー役をやってた人か!あのドラマでも途中まで本当の中国人だと思っていたくらい上手かったけど、アオヤマ君役も良かった。『未来のミライ』のくんちゃんの声に最後まで馴染めなかったのとは対照的な配役。彼女、まだ若いけどいい女優さんになるんじゃないでしょうか。
他、声の出演は実写系の俳優と声優を取り混ぜて起用していましたが、中でも某有名声優を起用したウチダ君(アオヤマ君の親友)のかわいさは異常(笑。

ストーリーは観てのお楽しみですが、謎解きあり、冒険あり、友情あり、恋心あり、コロリドの持ち味である疾走感ある映像あり、夏らしい爽やかさあり…夏に観るべきアニメ映画の定番になり得る名作と言えるのではないでしょうか。少なくとも『未来のミライ』に期待して得られなかった要素が『ペンギン・ハイウェイ』にはほぼ全部入っていたと言って良い。そう、こういうのが観たかったんだよ!
子ども向け映画としては、女の子視点で面白いかは分かりませんが(男の子なら刺さるんじゃないかと思う)、疑問や課題への取り組み方という点で重要なメッセージが込められていて、私は子どもに見せてやりたいと感じました。話の展開上投げっぱなしの謎もいくつか残っているけど、アオヤマ君ならばそれらもいずれは解明して、いつか「お姉さん」に再びたどり着くに違いない。

あまり派手に宣伝されている映画ではありませんが、これはクチコミでこそ広がっていくタイプの作品だと思います。いい余韻が残る映画でもあるし、私も上映期間中にもう一度くらい観に行きたいところ。

森見登美彦 / ペンギン・ハイウェイ

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