「名古屋生まれの台湾ラーメン。この腹のざわめきは…何だ?」
昨年の『孤独のグルメ 大晦日スペシャル』の聖地巡礼は京都の聖地、名古屋のホテルと鰻屋から最後の台湾ラーメンの聖地へとやって来ました。
「台湾ラーメン」とはいうものの、実際には台湾にそんなラーメンがあるわけではなく、ここ名古屋発祥のご当地グルメだというのが真相。台湾料理(といっても私は台北しか知りませんが)はむしろ魯肉飯や乾麺(ガンミェン)、小籠包といった辛味よりも旨味系の料理がメインなはずです。名古屋流の台湾ラーメンは近年では関東にも進出している「味仙」が起源で、ここの店主が台南の担仔麺をもとに賄い飯として作ったのが最初だと言われています(出典:Wikipedia)。
しかしここで有名な味仙とは違う台湾ラーメンの店をわざわざ取り上げるのが『孤独のグルメ』らしいところ。名古屋市の北の外れにある比良というところに、その店はありました。
大晦日の放送以来混雑しているのか、店先には最長 100 分制限の貼り紙が。
この店は予約を取っていないようで、17 時開店のところ 16:50 頃に到着してみたら既に 5 人の行列が。その後、あれよという間に行列が長くなってしまったので、早めに来て正解でした。
店内、ドラマそのまんま。
中日ドラゴンズと力士らしきサイン色紙が大量に貼られていて、そもそもドラマ以前からこの界隈では有名だったことが分かります。
今回は混んでいたのでゴロー席には座れず、カウンターに着席しました。
さあて、何を入れていこうか。
劇中でちらっとメニューを見たときから、いかにも町中華な料理名がいろいろ並んでいたのが気になっていたんだよなあ。
こういう店で食べるなら、定番メニューこそうまいに違いない。
ともあれ、何はなくとも生ビール。
ここのところ少しずつ暑くなってきたこともあって、一杯目の生ビールがうまい。
ワンタンスープっぽい柔らかめの水餃子(スープがうまい)と、
イイ感じの焦げ目が香ばしい焼き餃子から始めようじゃないか。
そうそう、こういう気取らない町中華然とした雰囲気が嬉しいんですよ。
とにかく何でも多めの油と強火、中華鍋でジャジャッとやってすぐ出てくる感じ、今はなき中華シブヤにも通ずるものがあります。
しかし大量の油が霧状になって店内に舞っていて、こりゃあ帰ったらファブリーズ必須だなという感じ(笑
厨房の中華鍋さばきを眺めていたら、目についたのがカウンター上のこの腸詰め。
見るからにうまそうじゃないですか。これください。
凝縮感ある腸詰めに濃口のタレ、そこに白髪ネギとニンニクスライス。
期待を裏切らない、ややジャンクな感じのうまさ。こういうのでいいんだよこういうので。
俺、これとビールさえあればどこまでもいけそうな気がする。
でも、ここでビールで腹いっぱいにするわけにはいかないから、紹興酒にチェンジ。
こういう濃いめ、辛めの中華にはやっぱり紹興酒がよく合う。
からの、牛すじ。
プリプリした食感の牛すじにピリ辛タレがよくしみて、これまたうんまい!
日本の居酒屋のすじ煮とはまたベクトルの違ううまさ。この味と食感はクセになりそうだ。
さらにクキ炒め。
これはニンニクの茎だと思うけど、無愛想に「クキ炒め」と名付けてしまうセンスが町中華らしくてイイ(笑
ピリ辛でちょっととろみのあるタレが茎とそぼろにかかって、これも止まらないうまさ。
それにしてもこの店の料理、どれも辛くて旨味もあって、やっぱり台湾でも中国でもない独自の名古屋中華圏を形成している。
でも名古屋人がこいつにハマる気持ち、よく分かる。
では、ここらでそろそろ本命にお出ましいただこうじゃないか。
…と思ったら、メニューから探すまでもなく壁に「五郎さんセット」の貼り紙が(笑。
その上には当然、松重さんと女将役の坂井真紀さんのサインも添えられていました。
これは選ぶ手間が省けた。よし、その名古屋式ラーチャンセットにしよう。
台湾ラーメンは辛さが選択可能。
最も辛くないのが「アメリカン」って、台湾なのにアメリカン。ていうかそもそも本来は台湾ですらないし。この意味不明なアバウト感がジワジワくる。
今回選んだのはもちろんゴローちゃんと同じく中辛。
どうしても辛さの奥地に踏み込みたくなってしまう、辛いもの好きの好奇心、冒険心。
まずは酢鶏。
ゴローちゃんセットで頼んだら劇中どおりハーフサイズで出てきたけど、こっちは二人組なんだしレギュラーサイズで頼んでも良かったかも。
酢豚みたいなトロミ、なし。でもしっかり酸っぱうまい、いいじゃないか。
ここまでピリ辛の連打連打で来ていたから、このタイミングでの酸味が心地良い。
酸っぱい鶏唐、ものすごくいい。
そして真打ち、台湾ラーメン。
十年くらい前に名古屋出張のついでに味仙で食べて以来、そうとう久しぶり。
この真っ赤なスープ、中辛でこれなら激辛はどんなことになっちゃうんだ?
とにかく混ぜたほうが良さそうだな。調子に乗ってズルズルいくとむせるやつだ。
この麺、うまい。好きなタイプ。
スープのほうも、最初の口当たりは辛さよりも旨味が勝っている感じ。これ、やっぱりおいしい。
あっ、でもジワジワと辛さがきた。辛さの時間差攻撃だ。
けっこう来る辛さにも関わらず、箸とレンゲが止まらない。うまい、辛い、うまい、辛い、まるで永久機関のようだ。
唯一無二の旨辛、台湾ラーメン。
この辛さは紹興酒じゃちょっと追っつかない。さらには汗まで噴き出してきた。
真夏のごとく水が進む。水は当然、ジョッキで。
額や首筋から汗が流れてくる感じってあまり気持ち良いものじゃないはずなのに、この汗は何故か心地良い。
とどめにピリ辛ニンニクチャーハン。
一見なんの変哲もないチャーハンだけど、この強烈なニンニクの香り!
鼻と口からニンニクが容赦なく流れ込んでくる。
これは今までのチャーハンでは経験したことのないニンニク量だ。
でも、めちゃくちゃうまい。
名古屋にはこういう図抜けたメニューがあったのか。
一度食ったらやめれない、これは禁断のチャーハンだ。
〆は五目スープ。
町中華らしいやさしい旨味に溢れた中華スープに野菜がゴロゴロ。
辛さにやられかけた舌に、これは嬉しい。落ち着きます。
ああ、食った食った。帰りの比良駅までの歩きがちょっと苦しかったくらい、腹一杯。
おいしかった~。
台湾ラーメンはもちろんおいしかったけど、あのパワフルなニンニクチャーハンに、それぞれ個性のある一品料理たち。
名古屋独自の進化を遂げた強烈な中華料理が、しっかりと土地に根付いている。
俺はまだまだ名古屋を知らない。
あんトーストにありつけなかったのだけが心残りだけど、大満足の京都~名古屋巡礼ツアーだった。
尾張名古屋、終わりよければ全て良し、か。
ごちそうさまでした。
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