F1開幕戦オーストリアGP決勝:レッドブル・ホンダはトラブルで全滅。チェッカーわずか11台の大サバイバルレースをボッタスが制す
4 ヶ月近く待たされた F1 2020 シーズンがついに開幕しました。開幕戦は無観客のオーストリア GP。レッドブル+フェルスタッペンが 2 年続けて勝っている、レッドブル・ホンダにとっては相性のいいサーキットです。
しかし予選はメルセデスが圧倒的な速さでレッドブル以下に 0.5 秒差をつけて 1-2。しかしハミルトンが Q3 でのイエローフラッグ無視で 3 グリッドダウンペナルティを受け、レッドブルは 2・4 番グリッドからのスタートになります。さらにフェルスタッペンは上位チームで唯一ミディアムタイヤで Q2 を突破し、決勝をミディアムでスタートできるという絶好の体勢。予選アタックに比べればレースペースはメルセデスとの差も縮まることが予想され、簡単ではないにせよ逆転の目は十分にある状況。
そして決勝スタートは大きな混乱もなくターン 1 を駆け抜けます。アルボンが 8 周にわたってハミルトンを抑えたこともあり、フェルスタッペンは 1 位ボッタスとの差を 2 秒に保ちながら後続との差を広げていきました。
が、その直後の 11 周目。突如としてそのフェルスタッペンがスローダウンし、いったんはピットインして再スタートを試みますが、シフトチェンジができないトラブルが解決できずそのまま 2020 年のリタイア第一号となってしまいました。原因は電気系トラブルの可能性とのことですが、後述するメルセデスに発生した縁石振動由来のトラブルなのかもしれません。あの時点で誰よりも攻めていましたからね…。
その後はメルセデスが盤石の 1-2 体勢を築きます。ボッタスは隙らしい隙を見せず、それをハミルトンが揺さぶりをかけるチームメイトバトル。両者のタイム差が 1 秒を切ったあたりで二人に「センサートラブルが発生しているから縁石を使うな」とのチームラジオが発せられます。この時点では一種のチームオーダーかとも思いましたが、本当にトラブルが起きていたようですね。
50 周目、二度目のセーフティカーが導入されたタイミングで、ステイアウトしたメルセデスの 2 台に対してアルボンがタイヤ交換を敢行。残りの 20 周をソフトタイヤでアタックすることでペースの上がらないメルセデスを交わそうという、いかにもレッドブルらしい作戦です。
55 周目に再度セーフティカーが導入され、それが明ける 60 周目から残り 11 周のスプリントレース。アルボンはメルセデスよりも明らかにペースが良く、再開後すぐにハミルトンに仕掛けますがここで両者接触。ハミルトンはポジションをキープした一方、アルボンはコース外に弾き出されて最後尾へ。その後もコース上には残ったものの残り 3 周でマシントラブルが発生して万事休す。
結果はボッタスがポールトゥウィンで今季初優勝。ハミルトンはアルボンとの接触で 5 秒加算ペナルティを受け、その後ろに続いていたルクレールとノリスが表彰台に立ちました。
レッドブルの二人には今回どちらにも勝つチャンスが十分にあったと言え、あまりにも悔しいレースでした。特に今季は全部で何レースになるか未確定であり、一戦の重みが例年とは全然違う。チャンピオンを狙っていく上では非常に痛い無得点です。フェルスタッペンは不可抗力とだとしても、アルボンは接触での脱落だけに余計悔しい。
ハミルトンにはペナルティが科せられましたが、個人的にはハミルトンとは良くも悪くもああいうドライバーだと思っています。今回はペナルティになってしまったけど、通常は接戦になると悪質とは言えない範囲内で厳しいライン取りをする。ハミルトンに限らず、シューマッハーやアロンソなど、マルチチャンピオンは多かれ少なかれそういう接戦を制してきた結果チャンピオンになっている(ヴェッテルはちょっと違うけど)。それと比べればアルボンがいかにオーバーテイクがうまくてもそれは「普通のドライバー相手なら」という条件がつくし、ハミルトンのようなドライバーと戦うにはまだまだ「イイ奴すぎる」のでしょう。ライバルが嫌がるような攻めや守りができるようになってこそ、フェルスタッペンと共にチャンピオンを目指せるドライバーになれるのだろうと思います。
2 位のルクレールには驚きました。実質的な完走 11 台という荒れたレースだったとはいえ、予選でメルセデスより 1 秒遅く(しかもレッドブルリンクは 1 周 1 分そこそこのショートコース)、決勝でも直線スピードが伸びないマシンをよく表彰台まで持ってきた。個人的にルクレールにはいろいろと思うところはありますが、この強かさはやっぱり本物だと思います。
そして 3 位のランド・ノリス。昨年から速さは見せていましたが、開幕戦で 3 位表彰台とは。しかも終盤にハミルトンがタイムペナルティを食らった時点から追い上げ、最終的にファステストラップを刻んでもぎ取った表彰台ですからね。チーム力を取り戻しつつあるマクラーレンと共に、フェルスタッペンやルクレールとチャンピオンを争うドライバーに成長していってほしいところです。
またチーム名変更後の初レースとなったアルファタウリ。クビアトは終盤にオコンとの接触に起因する(?)パンクのため DNF。ガスリーは国際映像にこそほとんど映らなかったものの、粘りの走りで 7 位入賞を勝ち取りました。アルファタウリ勢はフリー走行でセットアップを外してメタメタでしたが、よく予選~決勝で立て直したと思います。マシンの素性は良いはずなので今後に期待ですが、中団は昨年以上に競争が厳しいからなあ。
今季はいつもとちがってヨーロッパラウンドからの開幕ということで、初戦からある程度勢力図が見えたのではないでしょうか。メルセデスは今年も圧倒的に速いけど盤石ではなく、レッドブル・ホンダがそれに挑む形。その後ろにマクラーレン/レーシングポイント/フェラーリ/ルノー/アルファタウリが混戦模様でテールエンダーをアルファロメオ/ハース/ウィリアムズが争う序盤戦になりそうです。フェラーリ勢は PU が全然ダメなのか、カスタマー含めて例年になく厳しいですね…。
次のレースはもう今週末、サーキットは同じくレッドブルリンクでの連戦になります。今回の結果を受けてレッドブルがどこまで持ち直すのか。次の日曜日こそオランダ国歌を聴けることに期待しています。
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