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東京都虎ノ門の海老フライ

「タルタルソースは、いつだって俺の中の少年を目覚めさせる」

今回も大晦日に放送された『孤独のグルメ 2020 大晦日スペシャル』。外出が憚られ、外食産業が大きな打撃を受ける中でどのような内容になるのかと思ったら、良い意味で奇をてらわずに東京近郊の飲食店を巡るストーリーでした。しかも中華・焼肉・洋食という王道を取り揃えた内容で、やはりこういうときこそ原点回帰。ストレートに飲食店を応援する話はこちらも元気をもらえる気がします。

というわけで、私も大晦日 SP の登場店に事前巡礼してきました。ゴローちゃんが食べたものを知った放送後に行くのも楽しいけど、こういうときだからこそ密を避け、またその店の普段の営業状況を感じながら食べるのもまた良い。

今回巡礼に訪れたのはドラマの冒頭に登場した虎ノ門。ゴローちゃんは「虎ノ門らしからぬ裏路地」と言っていたけど、個人的にはこの界隈は路地裏にこそいい店があり、昼時には行列ができる店も少なくありません。ちなみに近くには Season6 に登場した長崎飯店の支店もあります。

西洋料理 口福処 平五郎

私は以前この付近で働いていた時期があり、ランチタイムにこの界隈の飲食店はあちこち行ったつもりではありましたが、ドラマ登場店は未訪でした。この店に来たことがなかったのはさすがに悔しい。

お店のオープンは 11:00 のところ、放送前にもかかわらず 11:30 には既に店の外に行列ができ始めていました。放送後はもっとすごいことになるに違いない。

ランチメニューは定番のビフテキ/ジャーマンステーキ/カツレツの三種類と、日替わり一品。劇中でゴローちゃんが強引に頼んでいたオイスターチャウダーをはじめ夜メニューはランチタイムには食べることができません。が、この四種類だけでも選ばせるのが残酷なほど、全部うまそうだ。

全品お弁当にできるのは COVID-19 の前なのか後なのか分からないけど、オフィス街の虎ノ門らしいサービスだと思います。ゴローの定番セリフ「持ち帰り!そういうのもあるのか」も、社会情勢的にはもう驚くべきことではなくなってしまいましたね。

日替わりメニューは一ヶ月分が店内に貼り出されていて、毎週のように来るようなこのへんのサラリーマンにとってはありがたいに違いない。なんとなく給食の献立を思い出させて微笑ましい。
ゴローちゃんが食べていたエビフライは毎週金曜の定番らしい。カニクリームコロッケは月二回のみだし、オイスターチャウダーは夜のみだし、五郎’s セレクションをコンプリートするハードルはけっこう高い。

着席してまず驚いたのがこれ。洋食屋にあってレストランにないもの、お漬物。

この時点で放送前に行っているので、いきなりこの漬物にお出迎えされるとかなりインパクトあります。
でも、こういうミスマッチこそ『孤独のグルメ』らしくて実に良い。

漬物へのこだわりとか、オーナーシェフのいろんな想いやこだわりがあちこちに貼り出されている熱い店。
ドラマに登場したかにクリームコロッケなんて、レシピが惜しげもなく公開されている。単に手順を真似するだけでは同じ味にはできないという自信の現れでもあるんだろうけど、「味を見る。…だいたい出来上がりかな。」って何故そこだけゴロー風味のモノローグなのか(笑
とにかくいろんな意味で味のある良い店だ。

さておき、何を食う?俺の腹は何バラだ。

注文後にまず提供されるのがスープ。想像より随分大きなクルトンがゴロゴロ入っていて、料理が来るまでの小腹を少し支えてくれる。
素朴でしみじみするスープ、いいじゃないか。

そして海老フライランチのお出ましだ。
予告映像からエビフライを突き止めて、ちゃんと日替わりにエビフライが出る日にここに来た自分を誉めたい(笑

今年は外食自体が減ってしまったこともあって、こういうオーソドックスな洋食ランチをいただくのも相当久しぶり。これだけでテンション爆上げだ。

大ぶりの海老が惜しげもなく三尾出てくるのが嬉しい。二尾だけだとちょっと寂しい気持ちになっちゃうんだよなあ。
そしてそれぞれの海老がタルタル、ポテサラ、トマトと組になったような感じで盛られているのは、それぞれそういう食べ方をせよというシェフからのメッセージに違いない。一尾ずつ違う味付けで楽しむというのもまさに『孤独のグルメ』らしいところ。

まずはタルタルだけで。うん、音がいい…これは立派なひとかどの海老フライだ。

奇をてらわない王道海老フライの、えもいわれぬ味と香り。海老フライもタルタルも脂っこくなく軽い食感で、永久に食える。タルタリスト的には文句のつけようがない。こういう海老フライ、久しぶりにいただいた。

そしてライスにはこうでしょ。井之頭五郎なら絶対こうやると思ったんだ。
和を挟むことで胃袋がリセットされる。海老フライにお新香ライス、洋食レストランを超えて実家感すらある味わい。だがそれがいい。

いやぁ、全てがハイレベルにうまかった。リピート確定、何度でもお手合わせ願いたい。

…というわけで、日を改めてもう一度やって来ました(ぉ

この日私がいただいたのはジャーマンステーキランチ。いわゆるハンバーグです。

予告編の映像を見てジャーマンステーキと海老フライを食べるのだろうと思っていたら、正解は海老フライとカニクリームコロッケ。ジャーマンステーキの映像はまさかのフェイントだったとは。
でもこういう店のハンバーグとデミグラスは絶対うまいに違いないという確信があったから、このチョイスに後悔はありません。

一見なんの変哲もないハンバーグっぽいけど、このこんもりとした形状からして丁寧に作られた良いハンバーグだというのが伝わってくる。
それにデミグラスのいい香り!これは間違いのないハンバーグだ。

粗挽きの肉肉しさとほわっほわの食感が共存する不思議なハンバーグ。粗挽きなのに固くないし、ほわほわなのに緩くない。これはおいしい。

デミグラスソースも老舗の洋食屋らしい、実に深みのある味わいでジャーマンステーキによく合う。
このデミグラ、カニクリームコロッケやカツレツ、ロールキャベツにも使われているらしいけど、確かにそれらもうまいに違いないと思えてくる。これはもっとリピートしていろいろ試してみるしかなさそうだ。

この日の漬物は水曜日限定の高菜炒め。高菜炒めは水曜日、海老フライは金曜日だから五郎メニューは一日にして成らず、放送前にリピートして正解だった。
それにしても高菜炒めはお新香や柴漬け以上に洋食レストランには異質。しかもカレーポットに入ってくるし(笑。

しかしこの高菜炒めがまた…うまい。この店にあっては異質どころか、なくてはならない味とさえ思えるほど、おかずに合っている。この時点でもうお新香や高菜炒めのない洋食屋には入りたくないと思えるほどに(笑

高菜の辛みが俺を覚醒させてくれる。これ、ご飯何杯でもいける。

ああ…おいしかった。
俺もちょっと弱ってたのかな。なんだか、元気をもらえた気がする。

壁に掛かってる夜メニューがまたおいしそうなんだよなあ。カラフルでポップな字体が余計に食欲をかき立てる。
これは感染の状況がもう少し落ち着いたら、改めて夜に来てみるしかあるまい。

ごちそうさまでした。平五郎、いずれまた会おう。

『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート Season1~10&原作
ドラマ&漫画『孤独のグルメ』の聖地を実際に巡礼してきた本人によるまとめです。(※2017 年大晦日スペシャルの広島編、2019 年大晦日スペシャルの釜山編、2023 年大晦日スペシャルの台湾編、および原作の病院、パリのみ未巡礼)。 ドラマ...

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