今日なかなかインパクトが大きかったニュース。LG が携帯電話事業からの撤退を発表しました。
しばらく前から事業売却先を探しているが見つかっていないという噂が流れてきていたので少なくとも LG 自体が携帯電話事業を手放すのは既定路線、あとは事業売却や譲渡になるのか撤退になるのかと思っていましたが、最終的に撤退という判断になりました。売却しない理由は機密保護とのことで、確かに同社内では引き続きスマートテレビやスマートホーム商品群は残っているし事業や人材とともに技術情報が流出するのを防ぎたい側面はあるのでしょう。が、一度は売却交渉をしていたらしい経緯を考えると、買い手が見つからなかったことに対する方便なのだと思われます。
2020 年の LG のスマホ世界シェアは 2% で第 9 位だったようで、トップの SAMSUNG(19%)とは 10 倍近い差があります。SAMSUNG・Apple・Huawei のトップ 3 とその後に続く Xiaomi・Oppo・Vivo くらいまでが大手でそれ以外はシェア 3% 以下の有象無象。私もここ数年行った外国の店頭で見かけたスマホといえば Apple を除けばアメリカが SAMSUNG と Motorola、アジア圏(といっても台湾とシンガポールくらいですが)は Huawei・Oppo・Vivo という感じで LG は正直存在感がありませんでした。日本ではフィーチャーフォンからスマホ時代になって国内メーカーが弱体化し、その隙を突いて一定のポジションを確保しかけた時期はありましたが、SAMSUNG ほどは定着しませんでした。
それでも近年はサブディスプレイを使って二画面化できる V50 ThinQ、画面を回転させて二画面化できる WING、極めつけは巻き取り式 OLED を採用した Rollable(開発発表止まり)など OLED パネルメーカーらしい特徴的なスマホを提案していましたが、あくまでマニア受けに留まっていました。
今にして思えばローラブルスマホの発表で OPPO に先を越されたのも、LG のディスプレイ部隊が自社製品よりも外販を優先するビジネス判断を下した結果だったように思えます。
これでスマホの世界シェアトップ 10 は SAMSUNG・Apple 以外全て中国メーカーになってしまうことになります。日本市場ではとうの昔に NEC とパナソニックが撤退、シャープは今や台湾の鴻海傘下、富士通は投資ファンド傘下に入って社名を「FCNT」に変更済み。企業として体制を大きく変えずにスマホ事業を継続している国内メーカーはソニーと京セラのみになっています。Xperia・arrows・AQUOS といったブランドのスマホはまだかろうじて MNO の商品ラインアップに存在しているものの、日本でも MVNO を中心に Oppo や Xiaomi の存在感が高まりつつあります。まあ、そもそも MVNO が一部の高リテラシー層にしか利用されていないので、「スマホの過半数が MNO 契約の iPhone」である状況には変わりないわけですが、日本発のスマホブランドの淘汰がもう少し進んでもおかしくないとは思います。LG の規模でも潰れるんですから…。
ただ、LG の撤退という判断は技術者を別の事業に転換したり転職市場に放出する効果があるわけで、結果的にそれが別のイノベーションに繋がる可能性を考えれば必ずしも悪い話でもないとも思うわけです(自分が当事者だったらたまったものではないでしょうが)。日本メーカーの場合はこういう状況で他社と合併して(過去にも NEC・カシオ・日立や富士通・東芝の携帯電話事業が合併した)雇用維持のもと貴重なエンジニアを先細る事業にしがみつかせがちですが、近年のルネサスやジャパンディスプレイの状況を見る限り、日本的な事業延命ってあまり良い結末に結びつかない事例の方が目立つので…。
最近はカメラ業界でも景気の悪い話ばかりだし、半導体業界もあちこちの工場で火災とか、ネガティブなニュースが多くて暗い気持ちになりがち。でも一発逆転の秘策なんてないし、とりあえず一人一人が目の前のやるべきことをやるしかないのかなあ。
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