オーストリア・シュピールベルクで二週にわたって開催されたレースの二戦目、オーストラリア GP はフェルスタッペンの完勝。自身初の三連勝に加えレッドブル・ホンダとしては五連勝、さらに PP・優勝・全ラップリード・ファステストラップのグランドスラムの史上最年少記録というおまけつき。スペインやポルトガルでの拮抗状態から一気にレッドブル・ホンダに流れが傾いてきたように見えます。
しかしその一方で今回のレースはペナルティが多発。通常ならばレーシングインシデントで片付けられるような接触もガンガンタイムペナルティを受けていて、レースを見ている側としては白熱した戦いに水を差された感じで興醒め。マイケル・マシ(スチュワード)も今回は特に酷いなと思っていたら、今回のスチュワードチームの中には最低が厳しいことで有名なデレック・ワーウィックがいたんですね…。
■マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
予選から 2 番手以下に圧倒的な差をつけて、前戦シュタイアーマルク以上の完勝でした。特にハミルトンに対してすらセーフティマージンを確保できる状況で、そこからファステストラップチャレンジする余裕さえありました。対するハミルトンは中盤に縁石でダメージを負いペースが落ちたものの、それがなくてもマックスの勝利は確実だったと言えます。
相棒のペレスがグダグダなレースだったこともフェルスタッペンの安定感を際立たせましたね。今の RB16B+フェルスタッペンの組み合わせは昨年までのメルセデス+ハミルトンのパッケージに匹敵する強さと安定感を備えているように見えます。これでまだ 23 歳というのだから末恐ろしい。
ハミルトンが 4 位に沈んだこともありドライバーズポイントは 32pt 差と、仮にフェルスタッペンが 1 レース無得点に終わっても追いつかれないだけのギャップを築けました。ある程度のセーフティマージンと言っても良い差。この勢いを継続して、メルセデスの今季に対するモチベーションを削っていきたいところ。
■セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
完璧だったフェルスタッペンとは対照的にいろいろありすぎたレースでした。まずは序盤にノリスに仕掛けてコースアウト、中盤以降ではルクレールのオーバーテイクを二度防御した際に二度とも相手を弾き出してしまい、5 秒ペナルティ×2 を受けてしまいます。個人的にはどれも(ノリスとの絡みも含め)レーシングインシデントだと思っていますが、それにしても残念。序盤のノリスへのアタックは今回こそ 1-2 を獲りたい一心でのチャレンジだったのでしょうが、レースペースで勝てるんだから焦る必要はなかったような。結局あの接触以降歯車が狂ってしまったように思います。
しかし一回コースアウトしてさらに合計 10 秒分のペナルティを受けても 6 位でフィニッシュできるというのも、RB16B+ペレスの組み合わせがそれだけ速くなったことの証左であると言えます。コンストラクターズポイントではメルセデスとの差を少しだけ広げることにも成功したし、不幸中の幸いではないでしょうか。
■ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
アルファタウリは予選までは 6-7 番手と現在望み得る最良のポジションにいましたが、決勝で失速。それだけソフトスタートが不利だったということなのでしょう。今回は 11 番グリッド狙いでミディアムスタートが戦略的には正解だったのかもしれません。
ガスリー自体のロングランペースは悪くないように見えましたが、まあこういう日もあるさ。逆に言えばそういう巡り合わせの悪いレースでもきっちり 9 位 2pt をもぎ取ってくるあたりが今のガスリーの強さなのだと思います。
■角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
FP3 で一度だけコースアウトがあったものの、今回は予選まで無理せず堅実に走っていました。それでいて時にレッドブルに迫るタイムも出してみせたというのは評価に値するでしょう。決勝ではガスリー以上にタイヤに苦しみましたが、仮にノーポイントでもトラブルなくフィニッシュすれば今回は十分…と思っていたらピットイン時に白線を踏んでしまい 5 秒ペナルティ。さらに 2 回目のピットイン時にも同じミスを犯してもう一度 5 秒ペナルティ。一度目はまだしも、同じレースの中で二度同じミスというのはさすがにいただけません。
しかしフリー走行から予選までを大きなミスなくこなし、ジワジワとペースを上げて時折速さも見せたこと、そして決勝でもスタートでポジションを落とさなかったことはこれまでの宿題をきっちりクリアしてみせたと言って良い。今回のミスはこれまでの課題をクリアしたことに対する新しい宿題なのだと思うことにします。デビュー前の期待が高かったからもどかしいけど、少なくとも夏休みまでは学習期間、後半戦が真の勝負。もうしばらく見守っていきたいと思います。
ホンダ PU 勢としては一週間前のリザルトと比べると 1-6-9 位というのはいささか物足りませんが、それでもセナプロ時代以来の五連勝というのはレッドブル・ホンダの速さがいよいよ本物になってきた証拠と言えそうです。この調子で、10 月の鈴鹿にはチャンピオンに片手をかけた状態で凱旋してほしいところ。
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