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カメラホリック レトロ Vol.1

毎年恒例、オールドレンズ本の季節がやって来ました。

澤村徹 / カメラホリック レトロ Vol.1

カメラホリック レトロ (ホビージャパンMOOK 1126)

いつもの澤村徹氏のオールドレンズムックですが、今年は例年とは違って『オールドレンズ・ライフ』シリーズではありません。ホビージャパン社の「カメラホリック」誌の新シリーズとしての創刊。『オールドレンズ・ライフ』の新刊は現時点ではまだアナウンスがありませんが、もう 10 年続いたムックでやれることはやり尽くした感もあるし、今後はこちらに軸足を置いていくということですかね。まあ玄光社はハウツー本のイメージが強いから、趣味性の高いオールドレンズという題材にはホビージャパンのほうが相応しいようにも思います。

カメラホリック レトロ Vol.1

冒頭の「オールドレンズ新章はじまる」というタイトルが本書に懸ける想いの全てを表しているように感じます。オールドレンズに「新製品」が出てくることはないから「新章」という言葉には違和感があるかもしれませんが、事実上 EOS で M42 か Y/C レンズを使って遊ぶくらいしか選択肢がなかった時代を振り返ると、現在のキヤノン/ソニー/ニコン/ライカ/パナソニック/シグマの最新ボディでそれぞれほぼ全てのオールドレンズをオリジナル画角で使える、さらに場合によっては AF でも使えてしまうという状況はボディ側の革新によってもたらされた「新章」以外の何物でもありません。主要カメラメーカーからフルサイズミラーレスボディが出揃った今こそオールドレンズの新時代が幕を開ける、と言っても過言ではないでしょう。

とはいえそこはオールドレンズなので紹介されるレンズの多くは今までの他のオールドレンズ本で見たことがあるものですが、COVID-19 の影響で我々の写真との向き合い方が変わったことも「新章」の背景の一つではないでしょうか。

カメラホリック レトロ Vol.1

オールドレンズを携えて旅に出るのも良いけど、日常の風景を非日常に変えてしまう独特の描写もまたオールドレンズの醍醐味。「新宿なのに緊急事態宣言中で人がいない」という状況の特殊性もあるけど、よく見知った場所(新宿三丁目の交差点ですよねここ)が見たこともないような光景として切り取られているのが面白い。
こういうのを見て真似したくなったり、自分のレンズで撮ったらどう撮れるかを想像してしまう感覚は現行レンズでもあるけど、オールドレンズだと尚更その傾向が強まると思うのです。

カメラホリック レトロ Vol.1

そしてそれぞれの写真作品に添えられているテキストがエモい(笑。
これは『オールドレンズ・ライフ』ではあまり前面に出てこなかった感覚で、むしろ今年 1 月に発売された『オールドレンズはバベルの塔』のテイストに近い。きっとあの本を出したことでもっと主観性の強いオールドレンズ本を作って良いんだ!という結論に至ったのだろうと思いますが(笑)、個人的にもオールドレンズについて客観的に書かれたものよりも「自分と似た好みを持つ写真家がどんなレンズを使い、どう感じているか」こそが機材の購買基準になり得るわけで、この路線変更は大賛成です。ちょっとポエムっぽいくらいがちょうど良いんですよ(笑

カメラホリック レトロ Vol.1

本書で重点的に扱われているテーマの一つが「F1.2」の明るさを持つオールドレンズ群。
私は自分で買って使ったレンズは F1.4 までのものしかないので、F0.95 とか F1.2 といった超大口径レンズには憧れがあるんですよね。現行の F1.2 レンズはそうそう買える値段じゃないけど、オールドレンズなら手が出るものもあるし、クセ玉が多いのも却って面白い。
この Hexanon 57mm F1.2 なんてレンズにアンバーがかかってるのが良い味出してるじゃないですか…と思ったらこれ硝材に放射性物質(酸化トリウム)が含まれることで黄変しているんですね(笑。コニカのレンズをコニカミノルタのなれの果てである α で使うというのもロマンがあって良いし、ちょっと試してみたいレンズ。

カメラホリック レトロ Vol.1

続いては最近注目の AF マウントアダプター特集。私も先日購入した SHOTEN GTE は当然として、オールドレンズ用として現存する AF マウントアダプターがおそらくほぼ全て網羅されています。残念ながらキヤノン RF 用はないけどニコン Z や富士フイルム X マウント向けの AF アダプターまで今はあるんですね。ただ、どのアダプターを見ても構造や部品が似通っていることが多く、実際はどこかの中国メーカー(Photodiox あたり?)が各社に OEM しているだけなのかもしれません。
SHOTEN GTE を使ってみた限りでは現行の AF アダプターはある程度実用域にあるといえ、MF 専用になることがネックでオールドレンズに手を出せていないならばこれが福音となるでしょう。

カメラホリック レトロ Vol.1

「先輩と語り合うためのオールドレンズ 10 選」という特集もまた面白い。単なるオールドレンズの紹介じゃなくて「このレンズを持っていたらオールドレンズ仲間とどう盛り上がれるか」「どんなレンズを持っていればオールドレンズ仲間に対してマウントを取れるか」という観点でレンズが選ばれています。オールドレンズは良くも悪くもクセのあるものが多いので、レンズ選びにその人のキャラクターが出る。現行レンズ以上に機材を選ぶ行為自体が娯楽でありコミュニケーションのネタなわけで、どういうポイントに注目すればそんなレンズと出会えるかが分かる。今までありそうでなかった特集です。
私もオールドレンズ好きを自認しながらも比較的クセが少なくよく写るレンズばかり選んできたけど、ちょっとビーンボール気味の玉を選んでみたくなりました。

カメラホリック レトロ Vol.1

個人的に心を鷲掴みにされたのがこの企画。古いメーカーロゴストラップをリメイクし、ファッションアイテムとして現代のカメラで使えるようにしようというものです。澤村さんはかつてデジカメ Watch で「デジカメドレスアップ主義」を長年連載し、オールドレンズだけでなくカメラ自体をカッコ良く使うことを提案してきた第一人者。私も真似したくなったドレスアップは多々ありましたが、このプラクチカのストラップはめちゃカッコイイ!ロゴの擦れ感なんかもちょうどいいじゃないですか。これまた真似したくなりますね…。

久しぶりにオールドレンズ欲が刺激されました。やはりオタクとしては趣味の近い人が性癖全開で語ってるのを見聞きするのはとても愉しい。
私はここのところ無難な写真ばかり撮ってる気がしますが、せっかくオールドレンズの母艦にちょうどいい α7C を買ったことだし、CONTAX G 以外にもいろいろ試してみますかね。

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