ここのところ音楽を聴くときは利便性に負けてワイヤレスイヤホン/ヘッドホンばかり使っていたのですが、最近ライヴに行ったら改めて音に浸りたくなって、有線に回帰中。そこで新たな音の刺激が欲しくなって、新しいイヤホンを購入しました。
Acoustune / RS THREE (Translucido)
店頭でいろいろ比較試聴して最もしっくり来たのがこれでした。
Acoustune は以前 HS1551 をしばらく試したときの印象が今でも残っていて、ダイナミックドライバーでも BA 以上に伸びのある高域に特徴があるイメージ。でもリスニング用の HS シリーズとは違いこの RS シリーズはモニターイヤホン(IEM)という位置づけになっています。HS シリーズの金属製でメカメカしい外観に対して RS シリーズはシンプルなデザインのポリカ製シェル、というのも大きな違い。
素材感やデザインは IEM の定番である Shure SE シリーズや SENNHEISER IE シリーズを強く意識したように見えます。でもヘアライン入りのアルミプレートがあることで安っぽくは感じません。ノズル先端に耳垢防止用のネットが張られているのも好感度高し。
ちなみに同じ IEM シリーズには下位機種の RS ONE もあり、そっちの方がカラバリも豊富で少し迷いました。RS ONE は高域と低域が強めで元気のいい音を出すのが面白いと思ったけど、高音の強調度合いがちょっと疲れそうだなとも感じました。それに対して RS THREE は良い意味で大人しく、高域も低域もそれなりに出るけど RS ONE よりはフラット。自分の好み的には RS THREE でした。どうやら同じ IEM でも RS ONE はステージモニター、RS THREE はスタジオモニターとして開発されたらしいですね。であればこの音作りの違いも納得です。
付属のケーブルは撚り線タイプでシュアー掛け前提。タッチノイズは少なめで扱いやすい種類だと思います。
3.5mm のステレオミニプラグはコネクターの手前部分が一段細くなっていて、ケースを装着したスマホでも干渉せず使えるよう工夫されています。
ただしケーブル長は 1.8m あり、ポータブル機で使うには長め。まあ本来スタジオモニターですからね。
このイヤホンの唯一の難点(?)は、リケーブル用のコネクターが一般的な MMCX ではなく新しめの規格である Pentaconn ear を採用しているところ。一見 MMCX に似ていますが、物理的に互換性がありません。
MMCX は接触不良などの不具合が出やすいのが規格上の欠点で、それを解決したのが Pentaconn ear とのこと。実際に挿抜してみると MMCX は挿入時に「パチッ」という感触なのに対して Pentaconn ear は AC コンセントのような「ブスッ」という感触で、確実にコネクターが面接触している安心感があります。ただしまだ一般的とは言い難い規格でリケーブルの選択肢が少なく、今後の普及に期待という感じ。MMCX-Pentaconn の変換プラグなんかも出ているようですが、それはそれで本末転倒(MMCX 側の接触不良リスクを抱えたままになる)だしなあ。
イヤーピースは一般的なシリコンタイプの「AET07」がサイズ違いで 3 種類と、フリーサイズでフォームタイプの「AET02」が 1 ペア付属します。フォームタイプは見た目も感触も Crystal Tips の OEM かと思うほどソックリですが真偽は不明。
聴き比べてみたところシリコンタイプは開口部が大きい見た目どおりにイヤホンの音をスポイルせずに耳に届けてくれる印象。フォームタイプは全体が若干低域寄りにシフトしてドラムやベースのアタックが明確になってくるけど、高域も極端に減衰しないという特性も含めて Crystal Tips によく似ています。外で使うならフォームタイプ、自宅で使うならシリコンタイプという感じで使い分けたい。せっかくだから他社製のイヤーピースも別途試してみようと思います。
その他の付属品はキャリングケースと、標準サイズの変換プラグがついてくるのがモニターイヤホンらしいところ。
イヤピが 4 種類くらいついてくる HS シリーズと比べてあっさりしていますが、そういうのも含めてモニター用ということなのでしょう。
音楽制作用の IEM ではありますが、高域の抜けの良さが気持ち良くてリスニング用としても全然イケます。私が使ったことのあるモニターイヤホンだとソニーの EX800ST や SHURE SE215SPE も良い音で好きでしたが、音源がハイレゾを意識するようになってイヤホンも高域に強い BA の音が一般化した今聴くと少し物足りないんですよね。それに比べると RS THREE は現代的な音という印象。業務として使う IEM ならもっと抑制の効いた音であるべきかもしれないけど、少なくとも私のツボにはハマりました。解像力があって細かい音まで聴き分けられるけど、同時に楽しくも聴ける。そんなイヤホンだと思います。
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