「水炊きに刺身、和食が沁みる」
『それぞれの孤独のグルメ』最終話に登場した関内に年末ぶりにやって来ました。前回は忘年会がてらの聖地巡礼でしたが、今回は新年会。一度ですっかり気に入ってしまった店に年をまたいで来れるのは喜ばしい。
関内の駅からは冬のイルミネーションが華やかな伊勢佐木町通りをまっすぐ行って右に折れていくとお店があります。商店街沿いはチェーン系のお店がひしめいているのに、一本逸れるだけで渋い個人店ばかりになるのが面白い界隈。
今回も食べログのネット予約を利用しました。私が行った日は予約のみでほぼ満席で、予約なしのお客さんが何組も断られていたから予約必須でしょうね。お店に電話せずとも空き状況が分かってそのまま予約できるのはお店にとってもお客にとってもありがたい。
前回はあえてドラマ準拠でカウンター席を予約しましたが、今回はテーブル席。
今年もよろしくお願いします!の乾杯。生ビールも瓶ビールもあります。お店の雰囲気的には生よりも瓶の方が似合う気がしますね。
突き出しが二点出てくるのが嬉しい。高野豆腐にほうれん草ともやしの和え物。
ちょっとしたものだけどこういう小鉢からも丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。
お刺身は生本マグロ三種盛りから。
前回は大トロ頭肉を単品でいただいたけど、盛り合わせならホホ肉とネギトロも楽しめます。同じマグロでも部位によって食感も味わいも全然違って、全部おいしい。
前回食べてブッ刺さった「里いもの揚げだし」。揚げだし豆腐も揚げだし茄子も好きだけど、それよりももったりとした食感にじんわりとした出汁味がいいんですよ。
料理がおいしすぎてお酒が追いつかない。
基本的にビールは一杯目までと決めているから、お次はハイボールに移行。濃すぎず薄すぎずでちょうど良く、料理のおいしさを引き立ててくれるバランス。
あい川風豚の角煮、これがまた食べたかった!
『それぞれの孤独のグルメ』全 12 話に登場した料理の中で、個人的に最も目から鱗が落ちる思いだったのがこれ。
じっくり煮込まれてしみしみの角煮や豆腐にメレンゲを合わせて食べる。ノーベルグルメ賞があったら授与したい気分だ。
ほわっほわのメレンゲに、卵黄と濃い味の煮汁がしみてうますぎる。
このメレンゲ角煮は何度食べても感動できる。
舌が喝采を揚げ、胃が快哉を叫んでいる。
旬のうちに何度でも食べておきたいカキバター。
カキの濃厚さをバターが増幅させて、まるでうまさの波動砲だ。さらにそこにたっぷりタルタルが波状攻撃を仕掛けてくる。
このお店の名物という穴子をいただいてみました。
店内にある水槽から出してきた活穴子をその場で捌き、刺身・天ぷら・白焼きのいずれかでいただけます。今回は刺身でお願いしました。
穴子の刺身なんてたぶん初めて食べたけど、透き通った身はコリコリした食感の中に旨味があっておいしい。
さらに一部は湯引きして出してもらえたのですが、こっちはまるで鱧のようにフワッフワ。同じものが刺身と湯引きでこんなに変わるものなのか?という驚きがある。たいへん気に入りました。
一尾まるごと捌いたので、ということで骨と皮も素揚げで提供されます。これを塩で。
骨も皮もカリカリで香ばしく、これもこれでつまみになる。活穴子、捨てるところがない勢いで全部うまい。
お酒はここでフグのひれ酒を注文。ひれ酒とか骨(こつ)酒に目がないんですよ。
飲む前にお酒に浮かんだヒレを軽く炙ると良い香りが立って、まるで海そのものを飲んでいるような感覚。久住さんならここで「これはお燗した横浜の海洋深層水かな?」とでも言うところでしょう(笑
特製かき揚(特大)。
もうね、見るからに海老たっぷり、しかも運ばれてきた瞬間に揚げたてのおいしそうな香り。食べる前からおいしいこと確定のやつ。
「つゆに浸しすぎると崩れるからサッとくぐらす程度で」という説明を受け、その通りにして食べると予想以上にうまい!
サクサクした表面の中はホワホワ。そして海老プリプリ。特大サイズだったはずなのに、あっという間に消えた。
これも大ヒット作、いもまんじゅうバター焼。
「洋食に媚びた俗っぽい料理なんて出さないよ」と言いそうな店構えをしてるのに、こういう和とも洋ともつかない絶品おつまみが出てくるのがこのお店の面白く好きなところ。
さっきのカキバターといい、食材をバター焼にするだけでうまいのにたっぷりタルタルを添えて出してくれるのがまたたまらない。タルタリストとしては全面降伏を禁じ得ない。
ひれ酒(おかわりして二杯飲んだ)が空いてしまったから三岳(芋焼酎)ロックでちょっとクールダウン。
冷たいものを飲んでいないと、どの料理もおいしすぎてヒートアップしてしまう。
そして鶏の水炊き。鶏の旨味が鍋全体に染み渡ったしみじみ骨身に沁みる味。
この季節になるとスーパーじゃ多種多様な鍋スープが売られていて手軽にいろんな味の鍋を楽しめるけど、巡り巡って結局はこういう素材の出汁を活かしたスープに帰ってくる。
そういえば劇映画はスープ探しの旅がテーマだったけど、もしかすると『それぞれの孤独のグルメ』最終話のこの鍋の時点でスープの物語は始まっていたのかもしれない。
で、鍋の旨味を全部受け止めたラーメンで締めるわけです。
究極的にうまいスープを使ってラーメン、ってこれもある意味劇映画的。
ああ、今回も本当に全部おいしかった。鳥・獣・菜・魚、何を頼んでも丁寧に作られた料理が出てくるし、そのどれもがおいしい。やっぱりこの店、何度でも通いたい。
そういえば前回は放送前だったため飾られていなかった松重さんと川原和久さん(中町洋介役)のサインが今回は掲示されていました…と思ったら、二人の間に久住さんのサインまで。それもつい一週間前に来たばかり!渋谷でのイベントの際に久住さんが「『それぞれ』の DVD には放送にはなかった『ふらっと QUSUMI』が特典映像として収録される予定で、ロケはこれから順次やる予定」と仰っていたからそれを撮りに来てたんですね。この色紙によるとアジのなめろうとカキ天を食べた模様。次回はこれ食べに来るしかないか。
ということで、きっとまた来ます。
ごちそうさまでした。
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