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SIGMA vs ZEISS:α7 用中望遠単焦点レンズ対決

Batis 85/F1.8 を買って以来あまり写真を撮りにも出かけられていませんが、この夏休みを利用して以前から考えていた比較検証を行いました。三年前に 50mm/55mm で行ったシグマ vs ツァイス比較の 85mm 版です。

シグマの 85/F1.4 はおそらく私が持っているレンズの中で最も高性能なレンズ。しかしその大きさ重さ故に気力と体力がある日でなければ持ち出す気になれません(´д`)。Batis 85/F1.8 はそれを補って気軽にスナップ等を撮れるようにという狙いで買ったもので、それぞれ棲み分けはできています。でも最新世代の定番中望遠レンズ同士、ガチンコで比べたらどうかは気になるじゃないですか。

私が持っているシグマ 85/F1.4 は EF マウント用のため、E マウントで使うにはマウントアダプタ MC-11 と組み合わせることになります。マウントアダプタ込みのサイズで見ると、シグマ 85/F1.4 の幅広のフォーカスリング部に相当する長さがほぼそのままこの二つのレンズの差。重さは Batis の 452g に対してシグマは MC-11 込みで 1,255g(ネイティブ E マウント版は 1,245g)。約 2.75 倍の質量差があります。
特に被写体を決めていない写真散歩レベルの撮影は Batis が限度で、シグマを持ち出せるのは撮りたいもの決め打ちかつ長時間の徒歩移動を伴わない場合に限定されるという感じ。


■TEST 1:最短撮影距離付近での描写
以前行った 50mm/55mm の比較と同様の条件で検証していきます。まずは最短撮影距離付近での解像力の比較。最短撮影距離の長いシグマに合わせて 85cm 付近で印刷物を撮り比べてみました。ボディは他のテストも含め α7 III を使用しています。

Batis 85mm F1.8

SIGMA 85mm F1.4 DG HSM A016

まず全体像をみると、Batis のほうは目に見えて判る糸巻き歪みが発生しています。これはこういう直線を含む被写体を俯瞰で撮ると明確に気になるレベル。α7 III ではボディ内歪曲補正がデフォルトでは(一部ズームレンズを除き)オフになっているためで、ボディ内補正を有効化するか現像時にレンズプロファイルを当ててやると一発で補正されるため、無補正にこだわらなければ深刻な問題にはならないレベル。まあこのレンズの位置づけ的にはポートレート等の被写体が中心になるでしょうから、ここを重視してこのレンズを買う人も少ないでしょうが。
対するシグマはバチッと直線が直線として写っていて、素性の良さを感じます。

中央右部分をピクセル等倍に拡大比較(画像をクリックするとピクセル等倍に拡大表示します)

解像力をみるとどちらも絞り開放からシャープな描写。最短撮影距離付近にもかかわらずそれぞれ F1.8/F1.4 からここまで解像していることに驚くレベルですが、絞り込むことでさらにシャープネスが高まって F5.6 での描写は非常に精細。この解像力はいかにも現代のレンズらしいところで、これならどちらのレンズも積極的に絞り開放を使っていけます。

■TEST 2:中間距離での描写と背景ボケ具合の比較 1

Batis 85mm F1.8

SIGMA 85mm F1.4 DG HSM A016

まずは絞り開放での「画の印象」の比較。どちらも絞り開放で撮影したものです。
通常、開放 F1.4 と F1.8 ではほんの 1/3 絞りの違いながら F1.4 のほうに圧倒的な画力を感じることが多いもので、撮り比べるまでは主題の表現力はボケの大きなシグマ 85/F1.4 に分があるだろうと思っていたのですが、実際に撮ってみると Batis も負けてない。ボケの大きさではシグマが勝っているものの、Batis はコントラストの高さと周辺光量落ちが相まって主題が引き立ってくる印象。対するシグマは絞り開放にもかかわらず周辺光量落ちは皆無と言って良く、隅々まで隙のない描写をしています。これはおそらくこの大口径の前玉の賜物でしょうね。

これはポートレートを撮るならシグマは思い切り寄って明るめの露出で、Batis は引き気味にアンダー露出で撮りたい感じ。それくらいキャラクターが異なります。

■TEST 3:中間距離での描写と背景ボケ具合の比較 2

Batis 85mm F1.8

SIGMA 85mm F1.4 DG HSM A016

次は主にボケの大きさと柔らかさを見ていきます。開放 F 値が違うためシグマの方が開放でのボケ量は圧倒的ですが、絞り込んでいったときの描写の変化はどうか。

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同じ F 値で比較するとシグマよりも Batis のほうがボケの輪郭が柔らかく、ふんわりとした描写。シグマのほうは玉ボケの外周部にうっすら光輪が見えるような描写で、被写体や構図によってはボケが硬いと感じるかもしれません。シグマのほうが大口径なぶん描写にも余裕あるかと思ったら、意外にもコンパクトな Batis のほうが無理してない感じで好感が持てます。

■TEST 4:無限遠距離の描写と変化の比較

Batis 85mm F1.8

SIGMA 85mm F1.4 DG HSM A016

無限遠の比較。↑は F11 での全景ですが、この部分拡大を開放から絞り込んでいくとどう変化していくかのテストです。

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空気がさほど澄んでいなかったせいで少し比較しづらいですが、シャッタースピードが追いついておらず露出オーバー気味になった F1.4 は置いといて(笑)どちらのレンズも絞り込まなくても十分な解像力がありつつも、F5.6 あたりで解像度のピークを迎えている印象。これはむしろ α7 III の 2,400 万画素センサがボトルネックになっているのかもしれず、本当の実力は今度発売される α7R IV などの超高解像度センサでなければ測れないようにも思われます。
このテストでの問題はむしろレンズの重さのほうで、シグマ 85/F1.4 は雲台のセッティングを Batis 85/F1.8 と同じにしてもカメラから手を離した瞬間に自重でレンズが少し下を向いてしまい、同じ構図を取るのが難しかったこと(ぉ。このレンズの場合はボディ側ではなくレンズ側に三脚座が欲しいし、雲台もギア雲台が欲しくなりますね…。

■TEST 5:点光源撮影時のボケの形と純度の比較

Batis 85mm F1.8

SIGMA 85mm F1.4 DG HSM A016

最後は点光源のボケ比較。どちらもリサイズして見るぶんには特に破綻のない描写に見えますが、等倍で見るとけっこう差があります。この比較は手持ちで撮影したため玉ボケの位置が微妙にズレていますがご容赦を。

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Batis はピクセル等倍で見てもほとんど濁りのない玉ボケ。対してシグマは十分に明るい点光源では問題がないものの、少し輝度が低めの光源に対してはうっすらと年輪状の線が見えています。これは Batis が非球面レンズなしで設計されているのに対してシグマは後玉に非球面レンズを採用していることに起因するものと思われます。ただし以前テストした 50mm/55mm に比べれば濁りの程度は軽微といえ、あまり気にするレベルではなさそうです。
また口径食は超大口径なだけあってシグマのほうが少なく、玉ボケは画面内の大半の部分で綺麗な円形を保っています。ボケの形の美しさを取るかボケの純度を取るか、被写体やシチュエーションによって選択するのが良さそうです。

というわけで、どちらも最新世代のレンズらしく非常に高性能ですが、よく見ていくとキャラクターが明確に異なることが分かりました。シグマは重すぎるため人を選びますが、それだけの価値があるレンズだと言えます。さすがはツァイス Otus をベンチマークして作られたレンズだけのことはありますね。また Batis はサイズと性能のバランスが非常に高く、多くの人に勧められるレンズだと思うものの、ほぼ同スペックで半額以下のソニー純正 85/F1.8 という選択肢も存在するため、非常に悩ましいところではあります。また私は持っていないため今回比較対象としませんでしたが、ソニー純正では 85/F1.4 GM というフラッグシップレンズも存在し、これも含めると E マウントで使える 85mm レンズは本当に選択肢が多い。私はこれ以上 85mm を増やすつもりはありませんが(笑)、機会があればソニー純正の二本も試してみたいところです。

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