先日横須賀に行ってきた話の続き。
せっかく東京から二時間もかけて横須賀に行くんだから、感染を防ぎつつも全力で楽しんでしまえ!と思って島に渡ってきました。
上陸したのは猿島。東京湾に存在する唯一の無人島とのことです。
※今回の写真はすべて α7 III+Vario-Tessar FE 16-35/F4 にて撮影。
三笠公園内にある発着場からフェリー(往復 1,400 円+猿島入園料 200 円)に乗って 10 分ほどで猿島に到着。
個人的には故郷の港町で対岸に渡るのに無料のフェリーに乗るのが日常だったので、同じくらいの大きさの船でちょっとした航海をするというのはちょっと懐かしい感じ。まあ観光船であるこの猿島フェリーのほうが遥かにキレイですけどね。
猿島の船着き場からの眺め。
長辺でせいぜい 300m くらいの小島にも関わらず海岸線から急峻に標高が高くなっていて、そうとう起伏のある地形であることが分かります。火山活動で隆起した島の岸壁を風や波が削り取って崖になったというところでしょうか。
猿島はもともと幕末に外国船から江戸を守るための拠点として開発され、以後明治時代~第二次世界大戦頃まで東京湾要塞の一角として整備・運用された軍事施設だったとのこと。そのため、島の中央をくり抜くようにして通路とトンネルが走り、島の外からは山肌と森林によって各種施設が隠されているまさに「天然の要塞」となっています。こういう光景は日常生活ではなかなか見ることができないもので、ある種異様な空気感に圧倒されます。
通路にかけられた木製のデッキは現代に入ってから観光のために整備されたものでしょうが、左右の岩壁とレンガは明治~昭和初期にかけて建築されたままの姿。当時使われていた弾薬庫がそのまま残されていたりもして、生々しい歴史を感じることができます。
半ば朽ちた城塞跡に草木や苔が生い茂っている様子は『天空のラピュタ』のラピュタ城を彷彿とさせるものがあり、冒険心がくすぐられます。そこいらの茂みの中から生き残ったロボット兵がひょいと顔を出してきそうな感覚さえあります。
猿島を象徴するのが島内を縦横に走っているこのトンネル。かつては東京湾の監視や武器弾薬の運搬などにも利用されたであろう大小さまざまのトンネルは、主にレンガで造られていることもあって独特の光景を作っています。しかもその周囲を鬱蒼とした森林が覆っているわけですからね。
メインのトンネルはとても長く(数十 m はある)全てが赤レンガで覆われているため、内部は独特の空気感に包まれています。かつては映画やドラマの撮影にもよく利用され、近年ではコスプレ撮影なども行われているそうですが、確かにそういうののロケに使いたくなりますね。
トンネルの途中に突如横穴が表れて、その先に地上へと繋がる階段が伸びているのが、ここが監視や防衛の拠点であることを物語っています。立入禁止区域も多いことが余計に緊張感を生んでいます。
本当に、ここで無限に写真を撮っていられそう。これは予想以上に面白い場所でした。
私が行ったときには同じ船で島に上陸した人自体が十人足らずという状況で、私は一人でズンズン散策していたこともありこの時点でトンネルの中には他に誰もいませんでした。密を避けるべき時代としては理想的な観光地であると言えそうですが、この異様な場所の中で孤独を実感するというのは何とも言えない不思議な感覚。まるで何かの事故で独り漂流してきた先がかつての要塞島だった…みたいな、何かの物語の主人公になった気分です。
トンネルを抜けた先には、見晴らしのいい高台に砲台跡。
かつて戦争といえば海戦が中心だった時代に思いを馳せます。
島は起伏の多い地形ということで、トンネル以外の通路はほぼ坂か階段という感じ。森林の中ということもあってちょっとした冒険感が味わえます。心肺にもそれなりに負荷がかかりますが、アスレチック的で楽しい。
山頂部には観測所跡がありました。要は見張り台ですが、壁が白いせいかいい雰囲気があって軍事施設にはあまり見えません。
残念ながら老朽化のためか立入禁止だったのが惜しい。島内には他にも二年前の台風の影響で危険なため立入禁止となっている場所が複数あり、無人島ゆえの整備の難しさを感じさせます。
観測所のある高台からは横須賀港が一望できます。
軍艦や護衛艦と一般船舶が混在する長閑な海を眺めていると、平和な現代に生まれてきて良かったと思えます。これで感染に脅かされる生活でなければなお良かったのでしょうけど。
猿島、堪能しました。都心から二時間でこんなに非日常に触れることができる場所があるとは。
これはまた何度か来てみたくなりますね。
なお東京湾には猿島の他に人工島「第二海堡」に上陸できるツアーがあるようです。
こちらは人工島なので猿島以上に要塞感が強そう。ちょっと違った雰囲気が味わえそうなので、こちらにも行ってみたくあります。
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