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『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

吉祥寺ギャラリーゼノンで開催中の漫画『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』のコラボ展示イベントを見てきました。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

孤独のグルメの原画はつい先日渋谷パルコでのイベントで見たところですが、せっかく劇映画の公開に絡めてイベントが立て続けに開催されているならこのお祭りに乗っからない手はありません。私は『ワカコ酒』は履修してないけど先日たまたま聖地巡礼したところでもあるし、何かの縁もあるかなと。このキービジュアルの背景に使われている「ブリの脂は冬のにおい」って、富山人的には実感なんだよなあ。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

このコラボのきっかけは先日発売されたトリビュートブックですかね。原作第 4 話の赤羽回で五郎が鰻丼を食べていたとき、もしかしたらワカコも隣の席に居合わせていたかもしれない…という話でした。このトリビュート漫画の完成画と線画を見比べられるような形で展示されていました。
さすがに現代の作家さんだから紙にペンで描いてるわけじゃないだろうし「原画」ならベタやトーンが入った状態の原稿になるはずなので、デジタル作画の線画部分だけをプリントしたものだと思われます。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』それぞれの 1 話冒頭。ワカコ酒のほうはツマミにもなるおかずの王様・鮭の塩焼きという王道から入っているのに対して孤独のグルメはドヤ街でぶた肉いためだもんなあ。でもこの 1 話から吉祥寺の廻転寿司→浅草の豆かん→赤羽の鰻丼→高崎の焼きまんじゅうという決して「グルメじゃない」テーマが続くことが作品の方向性を決定づけたと言って良い。毎度おいしくて大満足、ではなく勝敗で言えば「負け」の回が多くて何とも言えない読後感に襲われる作風が濃いファンを生み、連載から二十年近く経ってのドラマ化に繋がったのではないでしょうか。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

私が『ワカコ酒』の作画をまじまじと見たのはこれが初めて。以前はなんだか緩い画風というイメージだったのが、よく見ると登場人物の顔こそデフォルメされているものの、料理の描写は谷口ジロー先生に通じるものがある繊細さ。そしてそれ以上に印象的だったのが、飲み食いする際に箸を使ったりグラスを持ったりする手つきに妙なリアリティーがある。『孤独のグルメ』とはまた少し違った感じで自分がそこで食べているかのような感覚にさせてくれる絵です。一度ちゃんと読んでみたくなりました。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

『孤独のグルメ』の複製原画の展示。当然のようにここ吉祥寺の廻転寿司回がピックアップされているわけです。
初めてこの漫画を読んだときには何気なく読み流しちゃってたけど、こういう原画展に来て「どう描かれたか」を想像しながら複製原画に見入るとこの廻転寿司店の狭い中にゴチャッと人と物が密集している絵がいかにすごいかを感じて気が遠くなります。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

吉祥寺からそう遠くないという点では石神井公園のカレー丼とおでん回の複製原画もありました。
これもカレー丼の超絶作画がすごい。それ以外にも、他のお客さんの何気ない描写にやたらと実在感があるんですよね。ここが谷口ジロー先生の真骨頂の一つではないでしょうか。

ギャラリーは二階建てになっていて、上階には複製ではない原画も展示されていました。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

例えばこれは江ノ島回の生原稿。先日のパルコでのイベントでも展示されていたものですね。
刻み海苔の一本一本、米の一粒一粒がそこに存在するかのような描写。そして線画以上にスクリーントーンで立体感を表現するテクニックがすごすぎて理解の範疇を超えています。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

谷口ジロー先生が実際に作画に使用されていたペンや画材も展示されていました。
どれも全然特別なものでもないのに、これであの超絶作画を生み出していたというのだから本当に芸術は道具じゃないんだなあ…と思いますね。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

今回の展示で特に興味深かったのがこれ。久住先生と担当編集者が参考資料として提供した取材写真と、その結果生み出された漫画のコマを見比べることができます。
写真からほぼ模写レベル(写っている人物まで含めて!)で描き起こされているコマの再現度に驚きます。でも、例えば大阪のたこ焼き回のように写真では撮れないアングル(屋台の屋根を透視したような構図)も取材写真を元に起こされているから、単に模写の技量が高いというだけにとどまらないのがすごいところ。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

こちらはワカコ酒の線画。このめざしがまた、こんなにうまそうなのは写真でも実物でも見たことがないくらいにうまそう。そしてワカコの顔芸もいい。孤独のグルメとは方向性が違うけど、これはこれで匹敵する世界観を確立しているんじゃないだろうか。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

記帳コーナーもありました。さすがは漫画関連のイベント、ノートの大半が来場者のイラストで埋まっていて、しかもみなさん絵がうまい。このノート自体が展示物としての価値を持っていると言えます。必見。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

1F に併設されているカフェではコラボメニューが提供されています。孤独のグルメから二種、ワカコ酒から二種。おでんがダブってしまっているけど季節的にはおでんが嬉しいところ。ワカコ酒メニューが選べるアルコール付き、孤独のグルメメニューがノンアルというのも徹底してます。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

カフェの片隅におでん屋台が設営され、じっさいにおでんをここで温めて提供してくれるのが嬉しいところ。
五郎の等身大パネルが並べられると本当に劇中に登場してそうな気配が漂ってきます。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

喫食コーナーの壁は一面が孤独のグルメ、もう一面がワカコ酒のコマで埋め尽くされています。孤独のグルメのコマは全体的に残念な場面からチョイスされているのが面白い(笑

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

というわけで、私が注文した孤独のグルメメニュー二品。先ほど複製原画が展示されていた石神井公園回オマージュのおでんと、今はなき鳥取市役所回オマージュのスラーメン。欲を言えば吉祥寺なら廻転寿司を用意してほしかったところですがそこは場内のカフェで提供しやすいメニューを選んだというところでしょう。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

スラーメン。具はもやし、カマボコ、青ネギ、揚げ玉と見た目は見事に原作のスラーメンに寄せてあります。ここに来てる人で石神井公園までカレー丼やおでんを食べに行った人はそれなりにいるだろうけど、鳥取までスラーメンを食べに行った人はそう多くはあるまい(笑

うどんの出汁に浸された抑揚の少ない味のラーメン。よく再現されているけれど、本場鳥取のスラーメンのほうがもう少し出汁に甘味があったような。でも感じ感じ。
ちなみに実際のスラーメンは、鳥取市役所の移転で食堂はなくなってしまったけど代わりに自動車学校の食堂で同じものを食べることができます。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

おでん。メニューには石神井公園回に合わせて具はたまご・大根・白滝・牛すじ・かまぼこと書かれていましたが、実は原作コミックではおでんに関する具体的な描写はなく、イメージとして貼られているコマは静岡の汁おでん回のものというフェイクだったりします。でも具のチョイスはおでんの定番中の定番という感じで悪くない。
これはちょっと日本酒が欲しくなりますね…孤独のグルメおでんよりもワカコ酒おでんを頼むのが正解だったか。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

孤独のグルメおでんセットには石神井回には欠かせないチェリオがついてきます。「おでんとメロンソーダってのは色彩的に最悪の組み合わせだな」というコマを見せられながら食べていたときの私の気持ちを答えよ(10 点)。

それにしても「ワザとらしいメロン味」とか「色彩的に最悪の組み合わせ」とか言われてるのにいろいろとコラボしてくれるチェリオの懐の深さよ。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

スラーメンには五郎と一緒に写真が撮れる AR カードが付属。スマホで QR コードを読み込むと Web アプリ経由でゴローをフレームに収めた写真が撮影できるシンプルなものですが、これは展示会場内やコラボカフェ内でこうやって使うのが正しいでしょう。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

ちなみにこの展示会では入場特典として日替わりの缶バッジがもらえます。会場内でも ¥500 でこの缶バッジのランダムガチャを回すことができますが、缶バッジの値段を考えるとこの特典込みで入場料 ¥550 というのは実質タダに近い値段で展示を見れるという計算になりますね。

『孤独のグルメ』と『ワカコ酒』展

物販コーナーでは先日のパルコイベントや劇映画に関連するグッズが販売されていました。五郎の顔写真入り鍋スープがこれだけ大量に並べられると妙な圧を感じます(笑

展示会は 2/24(日)まで。パルコでのイベントとは少し趣向の異なる展示なので、渋谷に行った人でも楽しめるのではないでしょうか。

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