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大森 とんかつ 丸一

以前から気になっていた大森のとんかつ屋さんに行ってきました。

丸一

以前、ドラマ『食の軍師』の聖地巡礼で横浜馬車道の「丸和」に行きましたが、あの店のマスターはこの大森丸一で修行をした後に独立したとのこと。他にも大田区に存在する有名とんかつ店の多くが丸一の流れを汲んでいる、ということで、それは元祖に一度行っとかないといけないでしょう、と。
ただ、ここはこの近辺でもかなりの人気店で、行列ができていることも少なくない。外観はかなり年季の入ったお店なので、こんなところで行列ができるというのはどんな店なんだろう、と以前からずっと気にはなっていました。

ちなみにこの周辺、大森駅を出てすぐのところにあるにも関わらず、建ち並んでいる店が軒並み昭和っぽい。曲がりなりにも品川から二つ隣の JR の駅なのに、駅そばにこんなマニアックエリアがあるのが大森という場所です(そういえば隣の大井町もそんな感じだな…)。

意を決して店内に入ると、外観の印象よりはずいぶん新しい、こぎれいな内装になっています。そして、夜営業が始まった直後に入店したにも関わらず、既に座席は八割方埋まっているという(!)。これは開店待ちの行列があった感じですね…。
この店、営業時間は昼の 11:30~13:00 と夜は 17:00~19:00 のみ、しかも水曜・日曜・祝日休業という、最初からここに来るつもりでスケジュール調整しないと入店すらままならないハードルの高さを誇ります。どおりで近くを通りかかったときは軒並み閉まってたわけだ…。

メニューは潔くロースかヒレのそれぞれサイズ違いのみ。あと一応エビフライもあるようだけど、ここに来たらもちろんとんかつでしょう。そして、とんかつのうまみは脂のうまみ。ロースとんかつ定食一択です。


とんかつは注文後に揚げ始めるので、10 分ほどの待ち時間の後にライス・豚汁・お新香とともに出てきました。

おお、この何のてらいもない、ザ・とんかつ定食。変に気取っていないのが、逆に嬉しいじゃないか。

ロースカツは並サイズでもお皿からはみ出さんばかりのボリューム。肉の厚みもけっこうあります。
衣は、やや粗めのパン粉を使って揚げられた、厚すぎず薄すぎない、ちょうどいい厚さ。馬車道の丸和は薄い衣だったので、暖簾分け的なお店といっても流儀は違うようです。

調味料はソースの甘口・辛口に醤油、そして「アンデスの紅塩」。紅塩は最近のとんかつ店ではポピュラーで、丸和にもありましたが、ここのは自分で挽いてかけられるのがちょっと楽しい。そもそも老舗なのでソースと醤油くらいしかないだろうと踏んでいただけに、嬉しい誤算です。

『食の軍師』の影響で、とんかつを食べるときにはまず端から二番目のカツ片から手をつけるようになってしまいました(笑。
そして、最初はまず塩で味わう。しかも、衣にではなく肉に直塩。こうすることで、肉そのもののうまみが引き立って、余計にうまい。

この店のロースは、肉そのものはやや淡泊だけど柔らかく、脂身からじゅわっとうまみがほとばしってくる、そんな感じ。変な小細工のない、とんかつの王道ど真ん中。初めて食べたのに、なんだか少し懐かしい。

豚汁は、濃いめの味がしっかりついていて、私の好みからするともう少し淡泊でもいいくらいだけど、ご飯が進む味わい。胡瓜と大根のお新香も、糠の香りが食欲を刺激する、いい仕事ぶり。本当においしいとんかつ屋って、こういう脇役もちゃあんと立っているんだよな。

そして…卓上の調味料の中で、ひときわ異彩を放っていたのがこのハバネロソース。正直、この店としては紅塩以上に異物感があるけど、だからこそ興味深い。
とんかつにハバネロって初めてだけど、試してみるとこれが刺激的で、案外アリかも。塩やソースから一気に地球の裏側にジャンプしたような、そんな新鮮さ。ハバネロの激辛の中にある微かな酸味が、とんかつの衣と意外なほど合う。

紅塩にレモン、甘口と辛口のソース、醤油、練り辛子、とどめのハバネロ。期せずして『食の軍師』と同様に、それぞれのカツ片を異なる味わいで制する結果に。でも、味にバリエーションが出ておいしかった。これはベースのとんかつが王道だからこそできる芸当なんだろうなあ。

大田式とんかつの源流、しかと味わいました。ここは機会があったらまた来たいけど、営業日の営業時間に合わせてここに来る、というのがなかなか難しいんですよね。でも、それを押して食べに来る価値はあるお店だと思います。

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