「食は広州にあり、味は西関にある」
『孤独のグルメ Season10』の聖地巡礼、今回は第 10 話の舞台である川崎市中原区を巡ってきました。劇中のスタート地点は元住吉となっていましたが、実際の最寄り駅は武蔵小杉。Season8 に登場した「ジンギスカン どぅー」からさらに徒歩十分ほど、駅周辺とは雰囲気の違う閑静な住宅街の中に存在するのがこちらのお店「粥菜坊」。
私が行ったのはまだドラマの放送前にも関わらず予約だけで満席。巡礼で来たお客さんはほぼいないように見えたので、もともと大人気店ということなのでしょう。さらに今後も当分は予約でいっぱいらしく、放送後しばらくは予約が取れないかもしれません。
狭いながらも活気ある店内、こういう雰囲気いいじゃないの。
メニュー、表紙からしてなんだか圧しが強い。「はずせない 5 品」に「はずせないしめ」、さらには中国茶もはずせないという。もうこの表紙に書いてあるやつだけでコース料理が完成しそうな勢いですが、メニューの中にはさらに数え切れないくらいの品が掲載されていました。
多すぎて脳が混線してきた、これはちょっと選べない。とりあえず店の看板メニューを押さえておいて、あとは臨機応変に行けるところまで行こう。
圧しが強いだけじゃなくて蘊蓄も濃い。なんか全体的にグイグイ来る店だな(笑
でも中国粥も中国茶も普段あまり口にする機会もないし、こうやって解説してもらえるのはありがたし。
まあそんなことよりもまずはビールですよ。
すっかり寒くなったけど、やっぱり一杯目のビールは変わらずうまい。
そしてビールのつまみとして何気なく頼んでみた搾菜がやたらウマいんですけど!
うまく説明できないけどなんか妙にウマい。手作り感?生っぽさ?味の濃さ?よく分からないけどこれ単品でご飯のおかずになり得るパンチ力。ジャブのつもりがストレートを喰らった気分だ。
それに続くのは「豚肉腸粉」。おお…これが。
腸粉って初めて食べたけど、米粉で作った皮で具材を包んで蒸した点心の一種だとか。ちょっとビックリする字面は見た目が腸みたいなことに由来するらしい。
モッチモチ、ブリンブリンの皮に包まれた粗挽きの豚肉がめちゃくちゃうまい。こんな食感初めて。
腸粉、こういうものでしたか。すっかりその味と食感の虜、今後中国料理屋に行くたびに求めてしまいそう。
皮付き豚バラ肉のにんにく炒め。
名前からしてパンチのある肉炒めを想像していたけど、とろみのあるタレに和えられた分厚いバラ肉が出てきて驚きました。
でもこれがおいしい。イメージしていた方向性とは違ってうまみとコク強め。ちょっとさっきから先入観を覆す料理が続いていて、目から鱗が、口から涎が落ちまくる。
気になってたコイツ、牡蠣の中華お好み焼き。お好み焼きっていうけどむしろ見た目はチヂミっぽい。
外見には牡蠣感がないけれど、口に入れると牡蠣の味と香りが前面に!牡蠣が生地に練り込まれているとは、やられた…。
周りのちょっと焦げてカリカリになったところがまた、牡蠣の香りとうまみが凝縮されているようでうまい。
おかわりしたくなるレベルで気に入りました。
これは餃子も一つ食べてみておかないと、ということで「セロリと鶏肉の餃子」。
手包みで皮モチモチ、具材たっぷりのご褒美みたいな餃子。これもまたうまし。
そして「焼売の真実」。
真実とはどういうことだ。それも「真実の焼売」ではなく「焼売の真実」…並々ならぬこだわりを感じる。
一件普通の焼売だけど、食べてみると海老の良い香り。そして肉の食感が強い!
確かにこれはそんじょそこらの焼売とは全然違う。焼売の真実、俺はそれをついに知ってしまったらしい。
これはちょっとビール飲んでる場合じゃないですよ。
紹興酒をもらって全身で広東料理を体感しにいかなくては。
そして紹興酒からのきくらげチキンソースうま煮。
きくらげって今までは中華料理にあくまで食感を添えるためのものという認識だったけど、この料理は確かにきくらげが主役。シャキシャキのきくらげにうまみが載っかって後引くうまさ。きくらげがこんなにおいしいと思ったのって人生で初かもしれません。
さらにはずせない 5 品から、豚げた肉の豆鼓蒸し。
これは文字列を見ただけで絶対うまいやつだと分かる一品。そして実際の味もその期待を裏切らない。うまみの権化、おいしさの化身。
ちなみにこの店の料理、全体的に一皿の量は少なめでいろんな料理を楽しむのにちょうど良いのですが、その量が絶妙で他の料理も試したいけどこの料理もおかわりしたい!となりがち。これは罪な店を知ってしまった。
海老の湯引き。シンプルに海老を湯引きしただけのものなのに超うまい。
しかも、頭も殻も丸ごと全部食べられる。そんな海老、今までは富山の白海老くらいしか知らなかったんですけど。
海老単体でもうまいけど、専用のタレをつけるとさらに倍くらいおいしくなる。
この海老は恐れ入った。思わず海老反るうまさ。
そして〆その 1、本気の雲呑麺。
これの極細麺は竹昇麺というらしい。でも見た目に反してすごい弾力!なんとも噛み応えある。麺自体に味がついてるのもイイ。
スープは「こういうのでいいんだよ」的なシンプルで優しい味付け。麺類ってラーメンとかいろいろ冒険しても、最終的にはこういう味に帰ってくる気がする。
そして麺の下に隠れている雲呑、固めのみっちり。
そのままスープ味で食べてもおいしいけど、赤酢をちょっと垂らして食べるとさらにうまい!この酸っぱさ、ナイスアシスト。
この店、本当にどの料理もハズレがない。全体のレベルが高い。
点心や雲呑麺がおいしすぎて店名に冠しているはずの中華粥の存在を忘れるところだった。
マスターに聞いてみたところ「おすすめは絶対に朝鮮人参粥」ということで、「はずせない」を連発するマスターが言うなら間違いないだろうと思ってそれにしました。
朝鮮人参というから味や香りにクセがあるのかと思ったら、どこがどう朝鮮人参なのか分からないくらいに深くコクのある味。これが広東粥か…中華、深いな~。
これまでけっこうたくさん食べてきたはずなのに、スルリと胃に収まってしまった。
ここまで来たからにはデザートまで完食していかないといけないでしょう。
というわけで薬膳あんまん。この店のデザートの中でもげき推しと言われたら食べざるを得ない。
もう見た目だけでふっくら、もちもちしていることが分かってしまうあんまん。
これを割るとこんな感じ↓になります。
なんか具材がいろいろ入ってる!
あんこ以外の具は黒豆、ナツメ、落花生、クコの実らしい。
甘すぎない味付けと、豆や実の食感が楽しめるのもいい。これまた想像を超える中華まん、いただきました。
続いて「焼き茄子味のアイスクリーム」。何故焼き茄子をアイスクリームにしようと思った(笑
口にしてみると、ちょっと不思議な風味…第一印象は黒ごまアイスっぽいけど、よく味わってみると確かに焼き茄子を感じる!
アリかナシかで言ったらこれはアリ寄りのアリ。これまた面食らう感じのデザートだ。
そして最後に「杏仁豆腐の衝撃」。さっきの「焼売の真実」といい「杏仁豆腐の衝撃」といい…これはあれか、「逆襲のシャア」みたいな倒置表現か(違
ただの寒天みたいな杏仁豆腐を出す中華料理店も少なくない中で、この杏仁豆腐はねっとりとした手作り感のあるタイプ。今まで食べたことがあるどの杏仁豆腐とも違う食感で、「衝撃」と名付けたくなるのも頷ける。
いやはや、最初から最後まで全部おいしかった。いろんな種類の料理をちょっとずつ楽しめたのも良かった。
しかもこれらの料理を全て厨房の中にいた西関出身のおかみさんが一人で作っているというから驚きます。
これだけ食べておきながら、全体のメニューの中ではまだ氷山の一角というから奥深すぎる店だ。
これは再訪して、他の料理も試してみないわけにはいかないでしょう。
落ち着いた頃にきっとまた来ますよ。
ごちそうさまでした。
コメント
広州料理か、私の得意です、ぜひお本場で試してください。きっと一本満足です
コメントありがとうございます。
中華料理だと四川系は好きでよく食べに行くのですが、広州はあまり馴染みがなかったからいろいろ目新しくて感動してしまいました。一度本場にも行ってみたいですね。最近は東京で腸粉を出す店は他にもあるようなので、とりあえず探してみようと思います。