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CP+ 2025 (Sigma BF 編)

Sigma BF

パシフィコ横浜にて開催中の CP+ に行ってきました。なんか出展社も見るべきものも年々減ってる印象がありますが、個人的に注目したものについてレポートします。まずは今年はこれでしょう、という Sigma BF から。

シグマのコーポレート VI(Visual Identity)変更を伴う形で大々的に発表された BF。そのニュースの直後に一般ユーザーが初めて実機に触れられる場ということで大行列ができていました。初日でも一時間待ちだったようなので土日はもっとすごいことになるのではないでしょうか。私は開場直後に行ったためそれほど待たずに触れました。

Sigma BF

サイズ感は fp に近いながらも薄型化され、デザインもシャープになったことで fp よりもかなりスッキリしたように感じます。この角度からだとシャッターボタンと剥き出しの USB-C ポートがある以外はほぼ金属製の一枚板状態。動作する実機でありながら、やっぱりコンセプトモックにしか見えない。この感覚はなかなか衝撃的。

Sigma BF

天面はよくみると動画撮影用のマイク穴が二つ空いてました。また上から見た形状は長方形ではなく台形なんですね。

新しくシルバーカラーが用意されることになった I Series のレンズは表面にブラスト加工(塗装?)が施され、アクセント的にボディ側のマウント部と同様の光沢加工が施されています。
これまで CP+ 等のイベントで I Series の黒塗装前の鏡筒が何度か展示されたことがあり、「この状態で売ってほしい」という声も確かにありましたが、まあ腐食とか傷とかを考えると製品化にあたっては削りっぱなしでは出せなかったかと。でも BF のシルバーボディとはよく合っています。ただ AF/MF 切替スイッチだけは黒なのかー。そうかー。

Sigma BF

ボディ右側面にはストラップホールのみ。Peak Design のアンカーは通せるようです。
ただしストラップホールはこの一カ所しかなく、首掛けストラップで両吊りすることができません。基本的にはリストストラップで使ってほしいということでしょう。アダプター的なものを使って無理矢理ネックストラップをつけることはできるだろうけど斜めに吊り下げることになるから微妙。いくらなんでもちょっとミニマルにしすぎなのでは、という気がします。

Sigma BF

底面。アルミ総削り出しのユニボディなのでバッテリー蓋のヒンジを取り付けることができず、バッテリーそのものが蓋を兼ねる(しかも防塵防滴対応)という大胆な構造をとっています。

また三脚穴は普通についているため Peak Design のプレートなどを取り付ければストラップを二点吊りすることはできそうですが、バッテリーのリリースレバーと干渉しそうなのでこれもまた微妙。

Sigma BF

構えてみるとこんな感じ(クマデジさん撮影)。
fp よりも薄くなったことで手が小さい私でも握りやすくなったかと期待したのですが、薄いがゆえにシャッターボタンにかける人差し指が窮屈に感じました。ボディ前面に施された綾目っぽいローレット加工は滑りにくくて良いのですが、どうせマウントがボディよりも出っ張っているんだから同じくらいの厚みのグリップがついていても良かったと思います。まあそうするとこのミニマルなデザインにはなり得ないわけで、BF はカメラとしての使いやすさよりもスタイルを優先したということでしょう。

Sigma BF

アルミインゴットから削り出して作られる筐体。一つ作るのに 7 時間かかり、一日当たりの生産台数は 9 台とか。もはや量産品ではなく試作品レベルの台数です。生産は間違いなくこの削り出し工程がボトルネックでしょうが、基板をはじめとする部品はこの液晶の窓から入れて組み立てるようでアセンブリーの生産性も決して高く成さそうだし、修理も大変そう。そこまでしてでもこのシンプルで美しいものが作りたかったのでしょう。

Sigma BF

操作系はなんのとっかかりもないから最初は途方に暮れそうになりますが、一度理解してしまえばシンプル。まず電源は並んでいるボタンの最下段にある「・」がパワーボタン。
ダイヤルを兼ねた十字キーの中央ボタンを押し込むと画面の上下からクイックメニューが出てきて、SS や絞り、露出などの撮影設定を調節できます。上下左右キーで項目を選んでダイヤルを回すだけ。ちなみにこのクイックメニューを表示していなくても「どの項目が選択されているか」は右上のステータスモニターに表示され、同様に方向キー+ダイヤルで操作していくことが可能です。

Sigma BF

ダイヤル右下の「…」はメニューボタンで、これを押すと非常にシンプルな設定画面が表示されます。本当にこれだけしか項目なくて大丈夫なの?というくらいシンプルですが(私が詳細画面を探せなかっただけかも)、おそらくこういう部分まで含めごちゃごちゃさせないのがこのカメラの哲学なのでしょう。

なおこの背面ボタンは全てハプティックスイッチになっており、物理的に押し下げることはできないけど iPhone 7/8 のホームボタンのようにまるで物理ボタンを押したようなしっかりした感触あり。

BF のキモである独自の操作系は、私は慣れさえすれば十分快適に使えそうだから「無しではない」と感じました。が、それはこのカメラしか持たない、あるいはその日は他のカメラは持ち出さない前提。他のカメラと併用しようとすると途端に混乱してしまって使えないだろうな、というのが正直な感想です。L マウントだから望遠レンズも使えるし fp にはなかった像面位相差 AF にも対応したから例えばスポーツ撮影もできないことはないでしょうが、そういうカメラではないですよね。そう考えると、基本的には I Series がカバーする焦点域の中で撮れるもののためだけに存在するストイックなカメラだと思います。

SIGMA

メディアのインタビューに対応中の山木社長。

BF はサイズ感だけで言えば fp の後継っぽく見える製品です。が、fp は単体のミニマルなカメラとしても使えつつ、様々なアクセサリーでシステムアップして本格的な撮影にも堪える(性能的に動きモノは無理だけど)間口の広いカメラでした。一方で BF はあらゆるものを削ぎ落とした結果、この哲学に適合する人だけが使えるピンポイントなカメラになってしまったように思います。めちゃくちゃカッコいいし使ってみたいけど、私にとっては常用する道具にはなり得ないだろうなあ。もちろんシグマとしてもそれが解っているから大量生産できないものを製品化したのでしょうが。
個人的には、山木和人社長就任後のシグマは「大手メーカーにはないユーザーとの距離感の近さ」がファンを生み、支持されてきた源泉だったと思っています。新商品発表時に社長自らが YouTube やイベントに出てきて製品について語るメーカーなんて少なくともカメラ業界ではあり得ませんでしたから。そういうシグマを今まで支えてきた層とこの BF を選ぶ層はあまり交わらないと思うんですよね。シグマが意識高い層向けメーカーに脱皮するための BF なのか、それとも今後の可能性のあくまで一つを示しただけなのか。日産 9 台のカメラだけでは商売は成り立たはずだしセンサーや基板の調達の問題もあるだろうし、BF の設計をもとにした次の一手があると思いたい。

BF を実際に触ってみて、いろいろと複雑な気持ちになりました。

シグマ(Sigma) SIGMA フルサイズミラーレス一眼カメラ fp ボディ

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コメント

  1. […] バッテリーはダイレクトに差し込む蓋なし構造。bさんが書かれているようにアルミ総削り出しのユニボディなのでバッテリー蓋のヒンジを取り付けることができず、バッテリーそのもの […]

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