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愛媛県松山市の鯛どんぶり

「瀬戸内の魚たちが、俺にお疲れさまと言ってくれているようだ」

東京では明日から三度目の緊急事態宣言が発令されるところですが、私はというと緊急事態宣言の狭間を縫って久々の『孤独のグルメ』聖地巡礼に行ってきました。

目的地は 2017 年の大晦日スペシャルの舞台となった愛媛・香川。マスク・消毒などの感染対策を十分に行い、密を極力避けながら巡ってきました。
遠征を伴う聖地巡礼は京都名古屋編以来二年ぶり。本当はもう少し早く来るつもりだったのですが、この一年は緊急事態宣言その他でタイミングが難しく、計画を立てては取りやめを繰り返し、ようやく来ることができました。

ちなみに私は四国に降り立つのは今回が生まれて初めて。未踏の地を訪れるのは、どんなときでもドキドキします。

さかな工房 丸万

というわけで、今回の目的地その 1。松山の魚介居酒屋「さかな工房 丸万」です。
ここには本当にずっと来たいと思っていたんですよね…ようやく念願が叶いました。

さあ何を食おう。今食うべきは何だ?どうせなら、松山らしいもの…。

あらかじめ予約しておいたところ、通されたのはゴロー席…の隣。
気さくな大将が迎え入れてくれます。また、カウンターの端っこには劇中にもこの方がモデルになったと思われる常連さんがいらっしゃいました(笑。

大将、見た目は泉谷しげる激似。ドラマでは柄本明がかなりご本人に寄せた演技をしていましたが、泉谷しげるの大将役も見てみたかった。
ちなみに大将は昨年秋に脳出血で一度入院されたとのこと。実はそのときに来るつもりで一度予約を取っていたのですが、直前にお店から連絡をもらって延期していたのでした。今では退院して通常通り営業しているとのことですが後遺症が多少残っているのか、時々は厨房の裏で休憩しながらやっているそうです。冗談めかして「死ぬまでは続けますよ」と仰っていましたが、くれぐれもお身体を大事にしながら続けていってほしいところ。

で、このカウンターの魚の群れ。これを一度直で見たかったんですよ。

おお~、すごい。まるで魚屋。
港町生まれで魚介は見慣れているつもりの私でも、この眺めは実に壮観。

いろんな魚がキラキラ輝いていて見るからに新鮮であることが分かります。富山弁なら「キトキト」と表現するところだ。

魚市場や魚屋ならともかく、居酒屋のカウンターでこれはちょっとすごい。

こちらは「あまぎ」。一般的にはイボダイと呼ばれ、日本~東アジアの沿岸では広く獲れる魚のようですね。しかし地方によって全然違う名前で呼ばれているらしいのが興味深い。逆に言えば、それだけ各地域の食生活に密着した魚なのでしょう。
もしかしたら私もこれまでの人生で知らずに口にしたことがあるかもしれないけれど、意識して食べるのは今回が初めて。

魚だけじゃなくてカキもあるし、マグロの目玉みたいな変わり種まであったりする。何とも底知れぬカウンター。
しかもカキにも何種類かあって、大将が「これは生がいいけど、こっちは天ぷらかな」みたいにオススメの食べ方を教えてくれる。それぞれの食材のベストな食べ方を知り尽くした大将もまた底が知れない。

うーん、さあどうする。知ってる魚の安全策でいくか、見知らぬ地の魚で攻めるか。さらにそれを刺身、焼き、煮付け、どう食うか…。

とその前に、まずはお通しから。

この日のお通しは白魚とホタルイカ。個人的にはどちらも子どもの頃から身近にあった魚介で、これ以上のお通しはないと言っても過言ではありません。この見た目からして懐かしい。
どちらも新鮮さが物を言う食材だから、この二つをお通しに出してくる時点で私としては大当たり確定。

生ビールはアサヒ(スーパードライ)かサントリー(プレモル)の選択制。
お店で飲む生ビール、かなり久しぶり。夕方にお店に入って一杯目の生ビールの幸福は、やはり何物にも代えがたいものがあります。

料理はまず刺盛りから。予約時に「調理に時間がかかりがちだからあらかじめご注文があればどうぞ」と言われたので、とりあえずな感じで頼んでおいたものです。
中身は日替わりのようで、この日はサワラ・シマアジ・ヒラメ・マグロ赤身・中トロ・ホタテ・モンゴウイカの七種。おお、テーブルの上に見知らぬ瀬戸内海の島々が出現したぞ。

この刺身、どれ一つとってもおいしい。刺身自体が久しぶりというのもあるけど、新鮮な素材を丁寧に捌いた結果という感じがする。

続いてはカウンター上の食材から、マグロの白子。
白子って今までちょっと苦手だったんですが(子どもの頃食卓によく上っていたタラの白子の脳みそっぽい見た目がダメだった)、マグロの白子ってこんな感じなのか。

初マグロ白子、ツルツル・トロリ…という食感でうまし!いきなりやられた気分。
これはビールじゃなくて日本酒が欲しくなる。

そこでいただく日本酒は地元愛媛の名酒、一刀両断。
スッキリとキレの良い辛口で魚に合う。こういうのが飲みたかったんですよ。

そして先ほどのあまぎの唐揚げ。隣のお客さんが頼もうとしたところ大将が「あまぎの唐揚げ、他にも欲しい人!」と呼びかけたところ全ての席から手が上がりました(笑

頭から尻尾まで全部食べられるという唐揚げ。これは確かにガブッと行くべきだ。
固いところも骨張ったところも全くなく、本当に全部いただけてしまう唐揚げ。少ししっかり目に味付けされているのか、これは食が進む感じ。

あまぎ、すごい。俺のお頭観がたった今覆された。この魚、骨までうまい。

これはマグロの目玉。目玉の周りのトロットロの魚肉と、目玉のコラーゲン。とろける食感の相乗効果でそうとううまい。これまた日本酒が進む味。

さっきの刺盛りといい白子といい、この店ではマグロを余すことなく食べさせてくれるのか。
フフ…うますぎて笑いがこみ上げる。

さらにカキの、天ぷら。カキフライじゃなくて天ぷらというのが意外だけど、大将によるとこのカキはフライよりも天ぷらがいいらしい。
どんどん知らない魚料理が出てくる…この店がすごいのか、松山がこうなのか。

こういうのを出されちゃったら焼酎に切り替えたくなるということで、愛媛の焼酎・石鎚をロックで。
今まであまり四国の日本酒や焼酎ってあまり意識したことがなかったけど、いいじゃないか。

天つゆと大根おろしでヒタヒタになったカキ天。その中から顔を出すプリッとしたカキが絶品。うますぎて小躍りしたい気分。
大将が言うとおり、これは確かに天ぷらが正解かもしれない。

天ぷら繋がりでアナゴ天も。
こちらはしっかり味のついた天ぷらで、身のほわっほわな食感がまた良い。

こうなるか、アナゴさん。

アナゴにたまらず焼酎おかわり、次もまた愛媛産の天禄泉。

いやあ、何だろうこの店。全部初めてで、全部が驚くほどうまい。
こんな幸せがあっていいのだろうか…これはきっと、この一年頑張ったご褒美に違いない。

そしてとどめの「鯛どんぶり」。

この、見た目からして幸せな一杯。鯛が満開だ。
宇和島風鯛めし、好きなんですよね。東京で食べてさえうまいのに、それを本場で食べられるなんて。

ちなみにサイズは大・中・小あります。
写真は左が小/右が中サイズで、けっこう差があります。

これまでたくさん食べてそれなりにお腹いっぱいではあったけど、ここの鯛どんぶりなら普通に食べられてしまうに違いないと思って中をオーダー。

黄身を崩してよくかき混ぜて、いただきます。

おぁぁ、これはまた…!
鯛の食べ応えが、この出汁が、生卵が。

うますぎて心がついていけない。
と同時に、語彙力がどんどん失われていくのを感じる。

食べているのに、もっともっと食べたくなる。
我、ただこれをかっこむのみ。

久しぶりにたくさん食べて、飲んで、大満足。
どれもこれもおいしかったなあ。

松山に来て良かった。俺は今、猛烈に、激烈に感動している。素晴らしきかな、瀬戸内。

帰り際に大将が「ようけ食べてくれて、ありがとうございました」と声をかけてくれました。
こちらこそ本当においしかったです。お身体に気をつけて、これからもおいしい魚介をよろしくお願いします。

魚料理には、まだまだ俺の知らない水平線が広がっている。それをこの店は諭してくれた。

ああ、いい飯だった。明日のためのいい時間、ありがとうございました。

『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート Season1~10&原作
ドラマ&漫画『孤独のグルメ』の聖地を実際に巡礼してきた本人によるまとめです。(※2017 年大晦日スペシャルの広島編、2019 年大晦日スペシャルの釜山編、2023 年大晦日スペシャルの台湾編、および原作の病院、パリのみ未巡礼)。 ドラマ...

コメント

  1. 丁稚 より:

    のっけの刺し盛りからして気絶級の素晴らしさですね!たしかに全部美味いだろうなぁ。そしてようけ召し上がりましたね。その強靭な胃袋も羨ましい。

    • B より:

      ホント、刺盛りのネタ選びから盛り付けの美しさでまずはやられました。
      そこに食べたことない珍味の数々…目の前の鮮魚を選んだらあとは大将がよしなに仕上げてくれるわけですからね。この楽しさったらないですよ。

      聖地巡礼に行くといつも食べ過ぎがちですが、今回は楽しかったから気づいたらたくさん食べてたという感じでした。
      〆の鯛どんぶりも期待以上で最高でしたよ!

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