「こんなコバラベリーには、案外ちょうどいいかもしれぬ」
先日三軒茶屋の回転寿司「台所家」を再訪したときに、そういえば『孤独のグルメ』の原作コミックに登場した下北沢のピザのお店が三軒茶屋に移転していたんだった、ということを思い出しました。
下北の店舗に聖地巡礼したのももう十年前。その後、2018 年に三軒茶屋に移転していたようです。今の店舗がどうなっているか気になったので、改めて三軒茶屋に足を運んできました。
現在のお店は三軒茶屋の駅からそう遠くはないけれど、下北時代と変わらないような路地裏…というより住宅街の袋小路にありました。
お店のちょっと手前のところに傘立てに「ピザ屋のメニュー」として、印刷された紙がおもむろに置かれているのが面白い。
というか、この奥にピザ屋があるというのは知ってる人でなければ気づかなさそうなひっそり感。でもイタリア国旗がたなびいているし、確かにここで間違いない。
店舗というよりほぼ民家。イタリア国旗は掲げられているけど住人がイタリア人か単なるイタリア好きなのかな?という感じで、ここでピザを作っているようには見えないたたずまい。
でも、よーく見るとバルコニーのフェンスに「ロクサン」という看板が下がっていて、間違いなくここはあのお店。
チャイムを鳴らすと玄関ではなくバルコニー側の窓が開いて、確かに下北のときにもいたおかみさんが顔を出してくださいました。
メニュー、こんな感じ。
以前は自分でトッピングを組み合わせる仕組みだったけど(今もできるけど)、現在はどちらかというとオススメの 7 種から選ぶのがメインっぽい。そしてトッピングの種類は下北時代より微妙に減っていて「イカコンセロリ」の組み合わせはもうできないようですね。
このメニューの右上にも書いてあるとおり今は基本的にテイクアウト専門店として営業していて、店内には入らずこの小窓ごしにやりとりするスタイルのようです。
小さなバルコニーには一組だけテーブルとパイプ椅子のセットが用意されていました。おそらくピザが焼けるまでここで待つためのもののようですが、食べログ等のクチコミを読む限りではここで食べていくこともできる模様。
訊いてみたところ OK で、「飲み物はどこかでビールでも買ってきてもらうか、あるものなら緑茶かリンゴジュースくらいならお出ししますけど、どうしますか?」とのこと。
というわけで、緑茶をいただきました。
『孤独のグルメ』の作中では「メキシコのタバスコをビシビシかけて、アメリカのコカ・コーラで食べるのが日本流だい」というゴローの台詞が印象的でしたが、この状況だと「緑茶で食べるのが日本流だい」と言わざるを得ない。コーラ以上に日本流感が強まってしまった。
しばし待ったところでピザが焼き上がってきました。ピザ焼きは下北時代同様にマスターの仕事。
トッピングはメニューの一番上、エビ・オニオン・アンチョビという王道の組み合わせ。
クラスト自体は薄手なのに縁がしっかり土手を作ってあって、しかもそこがカリカリしている。昔ながらの、外連味のないピザだ。
アンチョビやエビのシーフードらしさが前面に出てくるかと思ったら、ちょっと飴色っぽくなるまでじっくりと炒められたタマネギの甘みが主役でアンチョビやエビは風味添えという感覚。だから全体的にやさしい、食べやすい味。
生地が薄いのに具がたっぷりめに載っていて、その重さで崩れないように縁の土手が働いているのか。
いいぞ、このピザ。実にこの店らしくオーソドックス。
緑茶と一緒なこともあって、なんかすごくほっこりする。デリバリーピザではまず味わえない感覚。
三茶の袋小路で、しかも空の下で食べるピザ。なかなかレアな体験でした。
でも下北時代と変わらぬ昔ながらの本格ピザ、おいしさは変わってなかった。
時の流れとともにお店のあり方が変わっていくのはちょっと寂しいけれど、仕方ない。少なくともお二人が今でもお元気でピザを作り続けていることが確認できて良かったです。
ピザと一緒に人柄のあたたかさもいただけたような気がしました。
ごちそうさまでした。
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