「俺の腹が、グッときている。店構えもいい」
『劇映画 孤独のグルメ』の聖地巡礼レポートを着々と消化していきます。今回は、五郎が食べた店ではありませんが劇中のターニングポイントとなった場所。
五郎が二回目に「さんせりて」に行った際に居合わせた常連客・中川(演:磯村勇斗)に声をかけ、一筋縄ではいかないさんせりての大将(演:オダギリジョー)にスープ作りに協力してもらうための相談をしに喫茶店に入っていました。それがこの渋~い喫茶店「珈琲タイムス」です。てっきり「さんせりて」の近くにあるものと思っていたら、この店の所在はなんと新宿。つい先日広告ジャックを実施していた新宿駅東南口を降りてすぐの場所にある喫茶店でした。まあ「さんせりて」自体が架空のラーメン屋だし、この喫茶店も立地のリアリティーよりもロケの都合で選ばれたのでしょう。調べてみたところ、他にも映画やドラマのロケ実績多数のお店のようです。
外観から受けた第一印象は、気難しいお爺ちゃんがやってて客もお年寄りやくたびれたサラリーマンが多そう。でも実際は意外にも店員さんたちは若い人ばかりで、お客さんも二十代と思われる若者が多い(おじさんやお年寄りもいます)。若い人たちの間でこういうレトロ喫茶が流行ってるのかは知りませんが、思ってた雰囲気とはずいぶん違って驚きました。しかも時間帯によってはお店の外に行列ができる人気店のようです。
ちなみに写真手前左側のテーブルが五郎が中川に相談を持ちかけていた席。
ゆったりとしたジャズが流れる店内、落ち着く。天板に銅をあしらったテーブルと赤いベルベットの椅子が激渋。
なお店内は全面喫煙可。客の八割は喫煙者、それも大半が加熱式じゃなく紙巻きを吸っていて、時間帯によっては店内の空気が白く曇るレベル。
席間が狭めだから、隣でモクモクされるとノンスモーカーとしては軽くむせる瞬間もあります。でも主に喫煙者のための店だから、ここではむしろ自分が少数派。現代では肩身が狭くなってしまった喫煙者にとってはオアシスのような場所に違いない。
古き良き喫茶店のメニュー。コーヒーはブレンド、アメリカン、アイス、ウィンナーの四種のみで豆の銘柄だの入れ方の蘊蓄だのはいいんだよ!というスタンスや潔し。
でもこういう店に来るとクリームソーダとかコーヒーフロートにも惹かれる。そして自家製バナナジュースが異様な存在感を放っている。
裏側はフードメニュー。ケーキとパン系の軽食が中心で、モーニングサービスもあるのが嬉しい。朝早い時間はコーヒーがサービス価格の ¥500 で飲めるのもいいですね。
なおスパゲッティー等のしっかりめのフードメニューは別途店員さんに言えば出してもらえます。
コーヒー、ちゃんと入れてくれたやつでおいしい。抽出して保温してあるだけのチェーン店のコーヒーと違って香りが良い。
そして軽食を頼んだらコーヒーと一緒にポテトサラダが出てきました。舌触りなめらか、だけど手作りっぽい素朴な味のポテサラ。個人的には軽ーく塩を振ってあげたほうがおいしくいただけました。
で、ホットドッグ。
劇中で中川た頼んでたホットドッグは切らずに一本のまま出されていましたが、実際はカットしたものが出てきます。一本のままかじるのがうまそうだったなあ…。
ホットドッグはバリッと焼かれたパンと、ソーセージにたっぷりケチャップが嬉しい。変に小細工せずにど真ん中を直球で攻めてくるホットドッグ、いいじゃないか。
それからこれも中川が食べていたチョコレートパフェ。多分、相談を持ちかけた手前この店の会計はゴローが奢ったんでしょうね。
中川はホットドッグとパフェを食べる前にスマホで写真撮ってたのが印象的でした。初見ではブロガーかインスタグラマーなのか?と思いましたが、このキャラクターはドラマ『孤独のグルメ』の元 AD で近年は監督を務める北畑龍一氏(通称:ヤジ君)がモデルとのこと。つまり某グルメドキュメンタリードラマの AD としてお店の取材を兼ねていた、という設定なんですね。
ポッキーが二本刺さってくるのがちょっと嬉しい。
さくらんぼの下にはたっぷりホイップクリーム、その後にはさらにソフトクリーム。フルーツもいろいろ入った王道チョコレートパフェ。若者も多い喫茶店で独りパフェを食べるのはちょっと気恥ずかしかったけど、ちょっと童心に帰れたような気分。
特別じゃないけど、こういう昔ながらのパフェ、懐かしい。
「映え」を狙ったパフェよりも、こういうのが孤独のグルメっぽいと思える。
煙草の煙はちょっと辛いけど喫茶店としては妙にしっくり来たから何度か通ってみました。
午前中の方が空いていて煙も比較的薄めで過ごしやすい模様。
この日はコーヒーとモーニングセットを注文。
モーニングには例によってポテサラがついてきます。そして食卓塩の瓶の素朴さがなんとも言わせない。
トースト、超厚切り。
表面パリッと中はもっちり、とても食べ応えある。ややたっぷりめに塗られたバターもちょうど良い。
これで ¥750 なら安いんじゃないの。
ゆで卵、中ウェルダン。
塩振って食べるゆで卵って、なんてことない食べ物のはずなのにどうしてこんなにうまいんだろう。この卵の後にあの分厚いトーストが控えていると思うとなお嬉しい。
さらにもう一訪。今度は喫茶店といえばこれ、ナポリタンは一回は食べておかないと。
こういう店に来るとカルボナーラだのペペロンチーノだのは置いといてナポリタンが食べたくなるのはどうしてなんだろう。このケチャップの幸せな赤がそう思わせるんだろうか。
こういう喫茶店のナポリタンって、よく茹での太めで緩い麺と相場が決まっているもの。だけどこの店のは緩すぎない中細麺で、つるつるしてておいしい。
味は王道のケチャップ味。ピーマンとタマネギをちゃんと感じつつ、ベーコンじゃなくてハムとソーセージが食感に抑揚を生んでいる。これはいいナポリタンだ。
せっかくだからウィンナーコーヒーを頼んでみました。カップに浮かぶ白い薔薇のようなホイップクリームがお見事。
そういえば、まだブラックコーヒーが飲めないお子様時代、親に喫茶店に連れて行かれたらウィンナーコーヒーを飲むのが楽しみだったなあ。そんな記憶を思い起こさせる、幸せなウィンナーコーヒー。
いやあ、いい店だった。老若男女に愛される理由がよく分かりました。
店員さんもこっちから呼びかけない限り注文を取りに来たり食器を下げに来たりしないから、急かされることなくゆっくりできる。五郎と中川のように相談事をするのにも向いてる場所だと感じました。
新宿でコーヒーが飲みたくなったらここに来よう。特に朝のうちにこのあたりに来る用事があれば、またモーニングセットを目指して訪れたいところです。
ごちそうさまでした。
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