以前記事にした CONTAX G Biogon の周辺像流れ補正の件。遅ればせながら、私も澤村徹さんの手順に倣って補正レンズを作ってみました。そのものズバリのフィルタが売られていたりするわけではないので、必要な部材を集めて自分で組み立てる必要があります。
まず手に入れる必要があるのが平凸レンズ。COTAX G Biogon を α7 シリーズで使う際の周辺像流れを補正してくれるのは、シグマ光機の「SLB-50-1500PM」という型番のレンズになります。シグマ光機というのはあの変態メーカー(誉め言葉)ではなく、主に産業用レンズを製造販売しているメーカーです。基本的には法人向け販売が主のようですが、公式サイトでは個人向けの直販も扱っていて、銀行振込前払いにて注文が可能。
私が注文したときには在庫がなく、二週間ほど待って自宅に届きました。
中身は本当にレンズ一枚。カメラ用の交換レンズは見慣れていても、こういう素のレンズ一枚をまじまじと見る機会はあまりないのでちょっとドキドキします(笑。
レンズのコバ(側面)はもしかすると内部反射防止用に黒マーカー等で塗りつぶしても良いかもしれません。私はとりあえずそのまま使ってみました(はみ出すのが怖い)。
この平凸レンズを Biogon に装着するのに、ステップダウンリングとステップアップリングを組み合わせて使います。
マルミ / ステップダウンリング 55→52mm
ケンコー / ステップアップリング 52→58mm
澤村さんの記事をそのままなぞって、ステップダウンはマルミ、ステップアップはケンコーを選択。ステップダウンリングは「上から下まで全てネジ切りがしてある」ことが重要とのことですが、どのメーカーがそうなっているか判らなかったためマルミが無難でしょう。逆にその必要がなく、径が大きくて目立つステップアップリングはケンコーのほうが側面にローレットが切ってあって、見た目に高級感があります(実際に価格帯もちょっと違う)。
そして欠かせないのがこれ。
Amazon ベーシック / UV 保護レンズフィルター 52mm CF26-N-52
必要なのはこの UV フィルタではなく、このフィルタに含まれる φ52mm のカニ目リングです。カニ目リングを単体で手に入れるのがちょっと難しいため、ここから部品取りします。
ちなみにこのフィルタ自体は以前 K&F Concept の UV フィルタと比較したとおり反射防止コートらしきものがほとんどなく、光学的には悪影響のほうが大きいと思うので、正直言ってフィルタとして使うのはオススメできません。
このフィルタからカニ目リングを外すのには工具も必要になります。
自分でオールドレンズの分解修理をするような人でもなければまずもっていないだろう工具、カニ目レンチ。私も流石に持っていなかったので、Amazon で適当に中国メーカー製品を購入しました。ちゃんとしたのを買おうとすると高いですし。
使ってみて分かったんですが、この後の組み立て工程には使わないし、分解工程でも別に UV フィルタのレンズに傷がついてもフィルタとして使うわけじゃないし、わざわざカニ目レンチを買わなくてもコンパス等で代用できたかもしれません。
カニ目レンチを、UV フィルタ前面のカニ目リングの凹みに押し当てて回すとリングが外れます。
ちなみにフィルタはカニ目リングさえ取れれば Amazon ベーシックでなくても構いませんが、メーカーや製品によってはフィルタガラスの固定にカニ目リングを使っていないことも少なくないので注意が必要です。
で、このカニ目リングを 55→52mm ステップダウンリングの下側からねじ込みます。
ねじ込むといってもあまり深く入れてしまうとこの後のステップアップリングが締まらなくなってしまうので、カニ目レンチを使わず指で浅く(カニ目リングがステップダウンリングの下端から少しはみ出すくらい)入れてやるくらいでちょうど良いです。
カニ目リングを装着したら、ステップダウンリングを裏返して平凸レンズを入れます。レンズは凸面が上(レンズの対物側)に来るようにセットします。2018/5/7 訂正:レンズは凸面が下(イメージセンサ側)に来るようにセットします。
ステップダウンリングの内径が 52mm、平凸レンズの直径が 50mm なので 2mm ほど遊びが出ますが、この後上からステップアップリングで押さえつけるため、組み立て後はガタツキは特に出ません。ただ偏心すると補正具合が変わったり片ボケの原因になるかもしれないので、できるだけ中心を揃えるようにセットしたいところ。
そして、その上から 52→58mm のステップアップリングをねじ込んでやると完成です。レンズ自体の厚みが 3mm あるため、ステップアップリングも完全にねじ込むことはできず、ステップアップリングとステップダウンリングの間には少し隙間が空いている状態。そうそう外れることはないと思いますが、できればネジ止め剤を使って外れにくくしてやったほうが良いかもしれません。
完成した補正フィルタ(英語圏では平凸=Plano-Convex;PCX と略すことから、仮に PCX フィルタと呼びますか)は、フィルタ径 55mm の G Biogon 21mm F2.8 にそのまま装着可能。
実写画像での比較はまた後日掲載しますが、とりあえず EVF で覗いてみただけでもフィルタの有無によって周辺部の画質が明らかに変わるのが判ります。
なお G Biogon 28mm F2.8 にも同じ PCX フィルタが効果あるのですが、こちらはフィルタ径 46mm のため、Biogon と PCX フィルタの間に 46→55mm のステップアップリングを挟んでやる必要があります。あまり何段もステップアップ/ダウンリングを重ねるのは美しくないですが、基本は 21mm で使って時々 28mm でも使うなら(21mm のほうが補正効果が大きい)この方が使い勝手が良いでしょう。α7 で使っても特にケラレは発生しませんでした。
ちなみにこの PCX フィルタによってフィルタ径が 58mm になってしまうんですが、せっかくだからツァイスのロゴがついたレンズキャップを使いたい…と手持ちを探してみたところ、コシナツァイスの Planar 50mm F1.4 についていた 58mm 径のレンズキャップがピッタリ合いました。ヤシカ製 CONTAX には 58mm のキャップは存在しないようなので、これが最もそれらしくまとまると思います。
というわけで、実写編に続きます。
コメント
はじめまして
いちばん外側の52-58のステップアップリングですが52-55にすれば元のレンズキャップを使えるのではと思うのですがどうでしょうか。
レンズは発注したのですがステップアップリングの組み合わせが元ネタの海外サイトと違っていて悩んでいます。
はじめまして、コメントありがとうございます。
確かにおっしゃるとおりですね。私は何も考えずに澤村徹さんの手順に従いましたが、海外サイトの方では 52-55 のほうを使っていますね。
手元にたまたま 52-55 のステップアップリングがあったので試してみたところ、当然ですがケラレ等は発生しませんでした。
澤村さんは見た目も重視される方なので、あえて 52-58 にしたのは見た目の格好良さを考慮してのことだろうと推測します。52-55 だとレンズ(B21)のフィルタ枠のほうがステップアップリングよりも大きくて微妙に美しくないので、フィルタ枠よりも径の大きな 52-58 にしているのだと思います。
今日52-58で試してみました。確かにこの方がかっこいいですね。
あとレンズの向きなんですが海外サイトの掲示板には
G21+PCX1.5m Reversed(curved surface faces to primary lens)
と書いてあるので逆向きな気がします。
URL貼っておきます。
http://www.fredmiranda.com/forum/topic/1453834/4#13765744
レンズ押さえの外側リングについて、試してみました。
B21mmは、52-55で蹴られました。ただ、レンズを引き込んだ状態で発生するので、実写では影響小さいかもしれません。
また、B28mmは52-55で大丈夫でした。
B21mmとB28mmを共用するなら、52-58の方が無難かもしれません。
ごめんなさい、コメント見落としていました!
>とうふさん
ご指摘ありがとうございます!完全に間違えていたので訂正エントリー書きました。
http://www.mono-log.jp/archives/2018/05/g_biogon_pcx_3.php
ただ裏返しでもそれなりに補正効果があるようで、これは気づかないわけだと思いました(苦笑
でもおかげさまでよりよく補正されました。
>ety_o さん
貴重なレポートありがとうございます。
やはり Biogon 21・28 には実用性と見た目の両面から 52-58 リングの方が良さそうですね。
始めまして。
現在私はBiogon28mmを使っており、この記事を参考に補正レンズを作っている最中です。ですが、52mmのカニ目リングが外せず困っています。
記事中のアマゾンベーシックの52mmが現在販売されていないので、マルミの52mmから外そうと試みていますが硬くて外れません。
アマゾンのカニ目リングは簡単に外れるのでしょうか。
はじめまして、ご参考にしていただきありがとうございます!
確かに今 Amazon を見ると在庫切れてますね。
Amazon basics のフィルタはカニ目レンチさえ使えば特に苦労することなく外せましたよ。
もしかすると他社のものは簡単に外れないようにネジ止め剤等が塗布されているのかもしれません。
メーカーによってはカニ目リングではなくはめ殺しになっているものもありますし。
ネジ止め剤が使われている場合は(薬剤の種類にもよりますが)加熱することで緩めることができます。とはいえ 200℃ くらいまで加熱する必要があるので簡単ではありませんが…。
あとダメモトで確認ですが、カニ目リングが逆ネジ(逆回転)だったりしないですかね??
何かご参考になれば幸いです。
返信ありがとうございます!
やはりそうでしたか…どんなにやっても回らないのでおかしいと思いコメントしました。
油まで付けたのですが回らないところを見るとネジ止め剤か、一度ハメたら脱落しない様にきつくしてあるのではと推察します。
逆ネジも考えたのですが、ネジの山を観察すると通常通り右なのでそれは無いと思います(一応回してみましたが回りませんでした)
ただ、Amazon basicsはPLフィルターが52mmであるのでそれを購入し再挑戦してみたいと思います。
コメント失礼します。
まだ補正レンズは出来てないのですが、Biogon28mmで伝えたい事があり、コメントします。
私はα6500を使っているのですが、Biogon28mmでKIPONのマウンドアダプターを使った場合、レンズガードでカメラ内部に傷が付かないか分からなかったのですが、自分でやってみて擦れ傷が付く事を確認しました。
そこでZO-41という超振動カッターを使いレンズガードを切断して使用しております。超振動カッターはプラスチック切断時に粉がほとんど出ないという特性があり、レンズには大変有効でありました。それでも多少粉が出たのでそれはShark EVOPOWERというハンディ掃除機で吸いました。
レンズガードですが、傷が付かないだけなら先端から5mm程のカットで良いのですが、それで撮影すると不可思議な影やボケがたまに出ていました。レンズガードを切断した影響かどうかは分かりませんでしたが、更に5mm程深く切断するとそれもなくなりました。
もしBiogon28mmのレンズガードを切断する場合はレンズガード端から10mm程のところを超振動カッターで切断すると良い結果が出ると思います。
ありがとうございます。ボディは α6500 だったのですね。
私は初代 NEX-5 で Biogon を使ってボディ内部に少し擦り傷をつけてしまい、以来 APS-C のボディで Biogon を使用する際は先にマウントアダプタをボディに装着してからレンズを装着するようにしています(そうすると傷つきません)。
フルサイズのボディであればそもそも開口が広いから傷つけることはないんですけどね。
レンズガードを切断すると着脱時のレンズの扱いがデリケートになるので、お気をつけてお使いください。