「五島列島に行ってみるしかないか」
ついに『劇映画 孤独のグルメ』の聖地巡礼で長崎県は五島列島に遠征してきました。東京近郊の聖地は無人島のロケ地まで含め一通り行ったので、あとは遠方ばかり。しかもいずれも聖地巡礼の目的地としてはとびきり面倒な場所。その中では、少なくとも日本国内なぶん五島列島はマシな方なわけです。
目指すは五島列島のひとつ、奈留島。基本的には長崎からいったん福江島に渡り、そこからさらに船を乗り継いで行くルートになります。
長崎から福江島へは飛行機と二種類の船が出ています。3 時間以上かかるフェリーか、1.5 時間で着くけど料金は二倍のジェットフォイルか。私は滞在時間が限られていたためジェットフォイルを利用しました。船名は「ぺがさす」、ちょうど某新作ガンダムに脳を支配されている私としては白い船体を緑色に塗り替えて「そどん」と改名したくなります(ぉ
ちなみに五島への船は天候次第で欠航しやすく(特にフェリーよりもジェットフォイルの方が欠航しがち)、現地に行っても予定通り辿り着けるかは運次第だったりします。私は無事好天に恵まれてラッキーでした。ジェットフォイルは揺れも少なく快適、眠っている間に福江島に到着。
福江港のフェリーターミナル、中に入ってみて驚愕。壁一面に井之頭五郎の群れが発生しているじゃないか(汗。
離島が全国公開される映画で大々的に取り上げられるなんて地元にとってはすごいことだと思うけど、それにしたってここまでとは。映画といっても元はテレ東深夜の低予算ドラマですよ…となんか逆にこっちが申し訳ない気持ちに(笑
壁のポスターだけでなくあちこちに五郎が飾られています。
映画の方は多くの劇場でそろそろ終映を迎えていますが、このコラボ展示はいつまで続くんでしょうね。GW とか夏休みといった行楽シーズンくらいまでは置いてあるんでしょうか。
そして福江島から奈留島へは再びフェリーで。劇中で五郎が乗っていたのはクルマも運べるカーフェリー OCEAN でした。
私は行き(福江島→奈留島)は高速船ニューたいよう、帰り(奈留島→福江島)はカーフェリーを利用。私も生まれ故郷では電車よりもフェリーの方が圧倒的に乗る機会が多かったくらい馴染がある乗り物なので(もっと小さい船だったけど)、ちょっと懐かしい。
ジェットフォイルは航行中(というより仕組み的には「飛行」に近い)は船外に出ることができませんが、フェリーの方はデッキに出て潮風を感じることができるのが気持ちいい。
そういえば井之頭五郎も劇中でデッキに出てたよな、と思って予告編映像と照らし合わせてみたらどうもこの場所ではないっぽい。
ということで船上を歩き回ってみたら、見つけました。
五郎は三階デッキで佇んでいたようです。が、ここは通常は乗務員以外立入禁止。自分も同じところに立って五郎ごっこしようと思ってたけど、これは無理ですね…。
ちなみに離島間を結ぶ船は旅客だけでなく貨物の運搬にも使われるようで、私が行きに乗った高速船ではまさにこれから向かおうとしている「みかんや」さん宛の食材が運搬されていました(笑。確かに奈留島内だけで全ての材料が調達できるわけでもないだろうし、普段からこうやって仕入れているのかー。
そんな感じで、30 分ほどで奈留島に到着。
こっちのターミナルも全力で孤独のグルメ仕様。本当に島を挙げて聖地巡礼客を歓迎してくれているようで嬉しい。
そういえば、この鮮やかなオレンジ色の桟橋。ゴローが奈留島から福江島に戻るために乗るつもりだったフェリーが既に廃止されていたことを知る場所なのですが、実はこの桟橋はフェリー乗り場ではありません。どうも海上タクシーの発着場を劇中ではフェリー乗り場として撮影を行ったようですね。実際の奈留港ターミナルはここから徒歩 5 分ほどの場所にあります。
さて、奈留港からはタクシーでワンメーターほどで目的のお店に到着。
みかんや、かわいい名前。
名前だけじゃなく、白壁にちんまりと掛けられた暖簾の雰囲気がなんかいい。
孤独のグルメのドラマに登場するお店に行ったときにも「ここか~」という感慨があるけど、映画館のスクリーンに映し出されていたお店に実際に来てみるとより深い感動があります。
店内、映像には映っていなかったけど入って右側にもテーブル席と、さらに小上がりまであったんですね。思ってたよりも広い。
でも中に展示されている五郎の等身大パネルが大きすぎて、これのせいでお店が狭く感じる(笑
神棚のようなポジションの棚には松重さんのサインが飾られ、その隣には井之頭五郎の名刺と劇映画のパンフレットまで置かれていました。
映画の撮影は 2023 年の 10 月に行われていたんですね。沖縄を舞台にした 2023 年の大晦日スペシャルよりも前に来ていたわけです。当時ロケの目撃情報だけ把握していた私は、大晦日スペシャルに沖縄、五島、韓国に台湾まで行くの???と完全に混乱していました(笑。
そして映画には登場していないはずの久住さんのサインまで。
久住さんは映画に合わせたクラブツーリズムとのタイアップ番組で五島を訪れ、この店にも食べに来ていました。劇映画の Blu-ray/DVD が発売されるなら「ふらっと QUSUMI」として特典映像に入れてほしい。
メニュー、けっこうな品数。ここがちゃんぽん屋じゃなくて食堂であることがよく分かる。玉子サンドとかハムサンドなんてのがあるのもかわいらしい。
ここが離島でなければ、何度か通ってハムエッグとブタ汁、ヤキメシあたりを組み合わせてオリジナル定食にしたりするのも楽しいに違いない。
もう一つ気になってたのがこれ、唐揚げちゃんぽん。
松重さんがラジオで「みかんやは唐揚げちゃんぽんもおいしくて、劇映画で食べるのを普通のちゃんぽんとどちらにするか迷った」と仰ってたのが印象に残っていたんですよね。でも聖地巡礼に来たらできるだけ劇中のメニューを忠実に注文したい気持ちもある。
ということで頼んだのは普通のちゃんぽん。長崎といえばこれか。
ちなみにメニューには「特製ちゃんぽん」というのもあり、普通のちゃんぽんとの違いは具材の種類とのこと。
でも普通のちゃんぽんでも十分いろんな具材が入ってる。ちくわにかまぼこ、これも五島の海の幸か。鮮やかピンクのかまぼこがこの店のかわいらしさに似つかわしい。
「昆布と長崎県産のいりこと鶏ガラスープ、長年豚肉を炊き込んだタレ」が材料というスープは透き通っていて、俺の知ってるちゃんぽんスープとは違う。関東でも一般的に食べられるちゃんぽんはもっと豚骨っぽさがある白濁スープだからなあ。
野菜の甘味を優しく閉じ込めるあっさりスープ。昆布といりこがよく働いてるのか、海の幸っぽさもしっかりと感じられる。野菜のシャキシャキ感と、豚バラ・ちくわ・かまぼこの存在が、あっさりした見た目とは裏腹にボリューム感を出してくれている。
食べ応えのある太麺が独特のスープを受け止めて大層うまい。
いいぞいいぞ。豊富な具材と麺が口の中でまさにちゃんぽんになってゆく。うん、楽しい。
五島のちゃんぽんは長崎のとはひと味違うと言うだけあって、今までに食べたことのないタイプのちゃんぽん。
でも、一度食べると今度からはこっちが恋しくなってしまいそう。郷愁を誘う味。
こちらは特製皿うどん。太麺と細麺が選べてこれは細麺。細い揚げ麺が最初はパリパリ、徐々に餡を吸ってシナシナになっていく食感の変化が楽しいんだよなあ。
「特製」になると確かにエビやアサリといった具材が増えているのがわかる。エビが入ってくると一気に豪華さが増して、見た目にもおいしそうさが爆上がり。
ちゃんぽんを普通のにした代わりに唐揚げを単品で頼んでみました。
出てきたのは、想像の倍くらいの量がある唐揚げ!ちょっとビックリしたけど、唐揚げは大好物の一つだから嬉しい。
これ単品で 900 円、定食は 1,000 円ってことだけど単品でも定食でも唐揚げの量が変わらないとしたら、唐揚げ定食めちゃくちゃいいんじゃないの?
下味しっかりめ、かつサックサクに揚げられた唐揚げ。母が作ってくれた唐揚げもこんな感じだったからとても好きなタイプです。鶏肉自体もジューシーでとてもうまい。
味濃いめだからつい白飯が欲しくなる。唐揚げ単品で頼んじゃったけど、これは定食にした方がよかったか?
ちゃんぽんを半分くらい食べたところで唐揚げを数個ちゃんぽんに沈めて自作唐揚げちゃんぽん完成。
衣にちゃんぽんスープが染みこんでいくにつれて徐々に唐揚げの食感と味わいが変わっていき、確かにこれもこれでうまい!唐揚げちゃんぽんが名物になる理由がよく分かりました。
ちなみに劇映画 T シャツを着て行ったところ、お会計の際におかみさんに気づかれて「ブフッw」と吹き出されてしまいました(笑。ロゴじゃなくてフランス語で書いてあるから(しかも T シャツの上に長袖シャツを羽織ってた)そうそう気づかれないと思っていたのに目ざとい。でもおかげでおかみさんと話すきっかけができました。映画の公開以来島外からのお客さんが増えていて、この日も朝から東京と横浜のお客さんが来ていたとのこと。私の後に入店したお客さんたちも聖地巡礼っぽかったし、離島にもかかわらず劇映画の味を求めて訪れるお客さんは多そうです。
銀幕で見て憧れた味をようやく自分でも食べることができて大満足。一般的なちゃんぽんとは違う奈留島流ちゃんぽん、しかと心に刻みました。
地元の食材で作られ、愛されてきた料理。この島を巣立った人たちも、このスープの味を忘れることはあるまい。
ごちそうさまでした。

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