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東京都中央区銀座の干し鱈のスープ

「スープは偉大な命の水だ」

たらちゃん

いよいよ上映が開始された『劇映画 孤独のグルメ』の聖地巡礼を順次始めていきます。とはいえフランス・韓国・五島列島と行きづらい場所ばかりでどこまで追いかけられるか分かりませんが、とりあえず行きやすいところから。

映画後半のカギを握ったのが「さんせりて」というラーメン店でした。フランス語で「誠実さ(sincerite)」、そういえば英語の同じ言葉(sincerity)を冠した「しんせらてぃ」というお店が Season9 にも登場しましたね。
さておきこの「さんせりて」は映画用に仕立てられた架空のラーメン店です。が、店舗そのものは実在しラーメンでもチャーハンでもない飲食店として営業しています。それがこちら。

たらちゃん

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劇中では浅草かっぱ橋道具街の近くにあるという設定になっていましたが、実際の店舗は東銀座・歌舞伎座の裏手にあります。そしてその取り扱いメニューはプゴク=干し鱈のスープ。映画の中では五郎が韓国・巨済島(コジェド)の店で干したスケソウダラのスープ「ファンテヘジャンク」を飲むシーンがありました。調べてみたところこの「プゴク」はヘジャンク(二日酔い覚ましのスープ)の一種で、干し鱈を使ったヘジャンクということならばプゴク≒ファンテヘジャンクと理解して良さそうです。

この店で出している料理は本当にこのプゴクのみで、それ以外のメニューもサイドメニュー的なものも一切なし。ラーメン屋として復活する前の「さんせりて」では店主(演:オダギリジョー)が「チャーハンしかないよ」と客に投げやりに告げるシーンが印象的でしたが、実際の店舗もある意味「プゴクしかないよ」という感じ(あんなに冷たくはありませんが)。

券売機で食券を購入したらカウンター席に通されました。

たらちゃん

五郎が最初にチャーハンを食べたあたりの席からの眺めはこんな感じ。映画での初登場時の店内はひどい有様でしたが、実際はきれいに整っています。丼もちゃんとあるし。

お店は品の良い感じの日本人(だと思われる)女性が時間帯によって 1~2 人で営業しているようです。お客さんも大半がこぎれいな雰囲気の女性というのがさすが東銀座。孤独のグルメに出てくる韓国系の店、チャキチャキしたオモニがやってる庶民的な店が多かったから、こういう雰囲気は珍しい。

たらちゃん

オダギリジョーが座って新聞を読んでいたあたり。実店舗ではお店の奥には小さなテーブル席がいくつかあります。撮影のためとはいえ、汚すのも元に戻すのも大変だったろうなあ。撮影自体も数日間かけての大がかりなものだったようです。

たらちゃん

劇中でスープの試行錯誤を繰り返していた大きな寸胴鍋ではプゴクが煮込まれています。
手前の丼には干し鱈の骨の部分が水に浸かっていますね。ここから良い出汁が出るに違いない。

たらちゃん

着席するとまずお茶とカトラリーセット、それに食前の水キムチが目の前に並べられます。
お茶の種類はよく分からないけど冷たいハーブティーのような感じで、華やかな香りが鼻に抜けていくのが心地良い。

たらちゃん

そしてプゴクとライス、キムチ類がササッと揃えられます。プゴク自体は寸胴鍋で煮込まれているから調理の時間がほぼなく、すぐに食べられるのがありがたい。
メイン料理の周りをステンレス茶碗とキムチ類の小皿が取り囲むこの感じ、本場韓国のおかずの群れほどではないけどアレを彷彿とさせてちょっと楽しい。

たらちゃん

これがプゴク。干し鱈の身と豆腐が入った卵スープといったところだろうか。
干物を使ったスープだけあって、湯気と一緒においしそうな香りが立ち上る。すんごいいい匂い…胃袋がせり上がってくる。

たらちゃん

プゴク、こういう感じか。じんわりと優しい味、しみる~…。
あっさりしてるんだけど、その中に干し鱈の濃いうまみがしっかり滲み出ている。これは確かに二日酔いの朝にでも胃が受け付けそうだ。

鱈って日本でもごく一般的な食材だと思うけど、干し鱈をこうやって使うスープには初めて出合った。でも、このうまみはすごくしっくり来る。
同じ海に面したお隣の国。日本と韓国の食文化、近いようで遠い、遠いようで近い。

たらちゃん

この薬味っぽいのはエゴマの葉っぱの粉末。
プゴクに軽く振りかけると味に一本芯が通り、深みが増す感じ。ちょっと大人の味になって、自分としてはかけた方が好み。

たらちゃん

副菜は白菜キムチとネギキムチ。

白菜キムチは日本で一般的に売られているキムチよりも酸っぱめ、こういうのの方が本場韓国の味なんだろうか。
見かけによらずネギキムチの方が辛口で、白菜キムチとのコンビネーションが活きる。プゴクの合間にご飯と一緒に食べて良し、プゴクそのものに投入して味変効果を狙って良し。

たらちゃん

こっちの小皿はしらすネギ。これは辛い系ではなくしょっぱい担当。
分量的にはおかずとして食べるよりもスープの味変のための調味料と捉えるべきやつかも。

たらちゃん

エゴマ、二種類のキムチにしらすネギをちょっとずつバランスを変えながら試していくのが楽しい。
優しい味のどんぶり一杯のスープから、無限の可能性が広がっていく。それでいて味の核には干し鱈の存在感が最後まである。

たらちゃん

おじや、やるよね。
いろんなものを少しずつ混ぜて味変しながら、最後はご飯も投入して大団円。きっとこれがプゴクの正しい楽しみ方なんだろう。

東京のど真ん中で、五郎が韓国の端っこで飲んだスープを味わう。実際にコジェドに聖地巡礼できるのがいつになるか分からないけど、ちょっとだけ行った気になれました。

たらちゃん

ちなみにこの店、なんと朝 7 時から営業しています。実は映画の公開までに何度か行ってみたのですが、お昼時は混んでたから午前中のうちに行くのがゆっくりできて良さそう。
実はこの日は映画の公開初日の朝に行っていたのでした。ここでプゴクを飲んで、そのまま TOHO シネマズでとんこつポップコーンを食べれば胃の中で「いっちゃん汁」完成というわけです(笑。

なお松重さんの著書『たべるノヲト。』によると、松重さんはこの店の近くに編集部がある「クロワッサン」誌の編集者に連れられてこの店を知り、ここでプゴクを飲んだことが映画のシナリオのモチーフを決めるきっかけになったとのこと。ぐるっと回ってその店が物語終盤の重要な舞台として映画に登場する、というのもまた味わい深いではありませんか。

「さんせりて」のラーメンはぜひ一度実食してみたかっただけに存在しないのはちょっと寂しいけれど、その実店舗で物語の核となるスープを味わえて良かった。
ごちそうさまでした。

『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート
ドラマ&漫画『孤独のグルメ』の聖地を実際に巡礼してきた本人によるまとめです。(※2017 年大晦日スペシャルの広島編、2019 年大晦日スペシャルの釜山編、2023 年大晦日スペシャルの台湾編、2024 年大晦日スペシャルの飯田・穴水編、劇...

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