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富山県富山市のかに面おでんと海鮮とろろ丼

「刺身、おでん、ごはん、富山、俺。この関係が永遠に続いてほしい」

ドラマ『孤独のグルメ Season10』の聖地巡礼も遂に最後の目的地となりました。残るは第 8 話に登場した富山県富山市の居酒屋です。本シリーズで北陸地方が舞台になるのは初めてのことですが、そこで金沢ではなくあえて富山を選ぶあたりが『孤独のグルメ』らしいところ。

七年前の北陸新幹線開通に伴い整備された富山駅。二年前には富山港線と市電が直通運転となり、劇中でもゴローが岩瀬から市街地まで路面電車(しかも懐かしの旧車両)で移動するシーンがありました。

今回のお店は富山市中心部のメインストリートである国道 41 号線沿いにあります。下呂の大安食堂も同じ 41 号線沿線にあるのは偶然にしても面白い。

劇中で五郎がお店に辿り着くために渡った歩道橋(市内にも数えるほどしかない)は融雪装置故障のため冬季通行止めになっていました。

駅から歩くにしてはちょっと遠いし、今やシャッター街となった総曲輪商店街・中央通り商店街からもちょっと外れている場所。ゴローが店を探してさまよい歩くにしてもちょっと無理がある立地ではあります(笑。
ちなみに私は富山市内の高校に通っていたし、社会人になってから一年ほどの間このすぐ近くで働いていたからこの前は何度となく通りかかっています。が、周辺に他の店はほとんどないし、この店も歩道橋の陰になって発見しづらいからこんなところに居酒屋があるという認識がありませんでした…。

居酒屋舞子

言われてみれば、この白い看板、庇、暖簾、提灯、昔見たことがあった。
外からでは様子が窺い知れない個人経営の居酒屋…普段だったら私はこういうところに突撃する勇気はないから、酒も飲めないのにこの暖簾をくぐろうとする五郎は改めてすごい。

今回はずっと前から予約してあり開店直後に入店しました。
でも他の席も予約でほぼ埋まっていて、富山ではまだ放送されていないはずなのに(TVer 等の配信で観れるけど)その影響力に改めて驚きます。

店内、一階はカウンターのみ。二階に座敷席もあるっぽい。
ホールとドリンク担当の店員さんは二人ほどいるけど、調理は基本的に女将さんが一人でやっている模様。ゆえに混雑すると料理の提供に時間がかかるそうです。

本日の魚介リスト。まずは魚介を選んで、食べ方は注文次第というやつでしょう。そして赤丸がついているのが刺身にできるものという扱い。

あるじゃない、あるじゃない。地魚、冬の富山湾オールスターズという感じ。
北陸は冬場の魚介が一番おいしいから、あえて放送直後じゃなくて年末まで巡礼を待っていたのでした。

黒板メニューにも富山の味満載。
劇中で他のお客さんが食べていたカキの昆布焼、めちゃくちゃおいしそうだったんだよなあ。あとはぶりの角煮とかいかバターとかがんどカマ塩焼とかにも惹かれる。基本的に富山らしい食材を活かしたメニューが多くて、それでこそ正しい富山の居酒屋だと思う。

まあまずは生ビールで乾杯。2022 年の外飲みもこれが最後になるかな。

この日の突き出しはたらこの煮付け。シンプルでしみじみとうまいやつ。

おでんはすすたけ、大根、がんも、ちくわを選んでみました。
すすたけ(イントネーションは「すす↓たけ↑」じゃなくて「す↑すたけ↓」が正しい)は富山の煮物の定番で、おでんだけじゃなく煮染めなんかにもよく入ってきます。

どれもよく煮込まれて染みてるけど、やさしい薄味なのが富山流。味付けよりも出汁が主役というべきか。
あぁ…ホッとする、おでんの王道。

こいつがかに面。おでんらしからぬ不敵な面構え。
というか、見た目的にはすり身の割合が大きいから、写真にするとイマイチ映えない(笑

これも富山おでんの具の定番だけど、言われてみれば富山と石川以外でこれがおでんに入ってるのを見たことがありませんでした。
昔から好きなんだよなあ、これ。

すり身の蓋を崩すと、中にはほぐしたカニ身とカニ味噌、内子・外子が渾然一体となっている。
カニのおいしいところがギュッと詰まって、それにおでんの出汁が染みて御馳走と化している。こいつはカニ好きにはたまらんな…。

汁のほうにもカニのうまみが出て、出汁まで残さず飲み干したくなる。
口の中がカニ祭り、カーニバルだ。

これはもうビールじゃなくて日本酒で迎え撃つべきものだ。
というわけで、久住さんも飲んでいた千代鶴。これ滑川(なめりかわ)の地酒らしいですが、私は初めて飲みました。

優しく滑らかな口当たり、これは料理のお供にちょうど良い。
おでんや刺身のためにあるような酒だ。

ここからはお刺身タイム。
まずはバイ貝…おお、でかっ。ここまで大きいバイ貝もなかなか見ないような。

私は貝刺しってあまり得意じゃないんだけど、これはコリコリした食感と想像以上の甘みが感じられておいしい。磯臭くない磯の味、ストロング。

続いてふくらぎ(福来魚)。劇中にもあったとおり「富山の人間が一番好きな、安くておいしい刺身」です。
ブリの幼魚で、ツバイソ(コズクラ)→フクラギ→ガンド→ブリ の順番で名前が変わっていく出世魚。富山人はもちろんブリも食べるけど、日常的にはフクラギを食べることの方が多い。こっちではマグロよりもブリやフクラギなんです。

この刺身、脂の乗ったすごく良いフクラギだ。
ああ…自分が富山人だったことを思い出す味。懐かしくて涙が出てきそうになる。

このフクラギを食べたら立山を飲まずにはいられない。

そういえば、父親もかつて仕事から遅く帰ってきたら、フクラギの刺身と立山の熱燗が食卓に出ていたなあ。子どもには毎日は刺身が出なくても、父親だけは特別扱いだった。

昆布締めだって外せません。

普通の刺身とは違って昆布のうまみ成分が魚にギューッと凝縮されて、何とも言えない味わいに変化している。
富山人って割となんでもかんでも昆布を使う県民性だけど、その中でもこの昆布締めは大発明なんじゃないだろうか。

ああ、うまい。昆布締めとお猪口の往復が止まらない。

そして白海老の唐揚げ。

白海老って「富山湾の宝石」とか言われるけど、地元ではありふれた食材として味噌汁に殻ごとぶち込まれていたりするんですよね。そして殻ごと食べられるけど髭や脚が口の中に刺さるから子どもの頃は嫌いだったなあ(笑。
でもこの白海老はもともと殻が柔らかいのか揚げ具合がちょうど良いのか、全然硬くない。サクサクとした食感に白海老の香ばしさが相まって、やめられない止まらないやつだ。

〆は海鮮とろろ丼、ハーフサイズ。

ハーフサイズっていうけど上に載っかってる刺身は普通のお店の刺盛り二人前くらいあるよね、これ。
またしても富山海鮮オールスターズが勢揃いした、この上なく贅沢な海鮮丼。

甘海老と丁寧に剥かれた白海老の甘さ。イカもうまい。そして手前の〆鯖、これの締まり具合が絶妙にうまい。
それぞれの刺身を改めてじっくり味わいたいけど、とろろが魚介の背中を押すように口の中にスルスル入っていく。

富山の郷土料理の夜に、最高の〆の一杯だった。

期待通りどれもおいしかった。個人的には昔から馴染みのある料理ばかりで、『孤独のグルメ』の他の回のような新鮮な驚きというよりは実家でのお祭りの日の料理みたいな感覚だったけど、それはそれで良かった。

新鮮な地のもので腹が満たされるって、なんて幸せなことなんだろう。
心から言いたい、「きのどくな」。

ドラマ『孤独のグルメ』十周年、つまり私が聖地巡礼を始めて十周年にあたる年の大トリを地元の味で飾れたこともある意味幸せでした。
本当はもっといろいろ食べたかったけど、それはお店がもう少し落ち着いた頃に改めての楽しみとして取っておくことにしよう。

ごちそうさまでした。

■ドラマ『孤独のグルメ Season10』聖地巡礼エントリーまとめ
第 1 話 神奈川県相模原市橋本の牛肉のスタミナ炒めとネギ玉
第 2 話 東京都港区白金台のルンダンとナシゴレン / 再訪 / その 3
第 3 話 神奈川県横浜市桜木町の真鯛のソテー オーロラソースとまぐろのユッケどんぶり / 再訪 / その 3
第 4 話 東京都練馬区大泉学園のサザエとキノコのプロヴァンス風と牛タンシチューのオムライス
第 5 話 千葉県柏市鷲野谷のネギレバ炒と鶏皮餃子
第 6 話 岐阜県下呂市のとんちゃんとけいちゃん
第 7 話 東京都渋谷区笹塚のふうちゃんぷるととまとカレーつけそば
第 8 話 富山県富山市のかに面おでんと海鮮とろろ丼 / 喫茶パート
第 9 話 東京都荒川区日暮里の酢豚とチャムチャ麺
第 10 話 神奈川県川崎市中原区の豚肉腸粉と雲呑麺
第 11 話 千葉県旭市の塩わさびの豚ロースソテー
第 12 話 東京都千代田区麹町のイタリア食堂のミートローフ / 築地パート
→その他の聖地巡礼エントリーはこちら

『孤独のグルメ』聖地巡礼 全店レポート Season1~10&原作
ドラマ&漫画『孤独のグルメ』の聖地を実際に巡礼してきた本人によるまとめです。(※2017 年大晦日スペシャルの広島編、2019 年大晦日スペシャルの釜山編、2023 年大晦日スペシャルの台湾編、および原作の病院、パリのみ未巡礼)。 ドラマ...

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